都会の夕暮れを映す“紫色のG-SHOCK” 珍しい配色はあえて困難に挑戦した証だった矢野渉の「金属魂」特別編

東京の黄昏時(たそがれどき)をイメージした「G-SHOCK」が僕のスタジオにやってくることになった。到着した「GMW-B5000PB」はすべてが常識破りだった。

» 2021年08月30日 10時00分 公開
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 さて大変なことになった。東京の黄昏時(たそがれどき)をイメージした「G-SHOCK」が僕のスタジオにやってくることになった。色は紫だという。どういう意図で開発されたのか、実物がないと全くイメージができない。だいたい紫色の時計など見たこともない。

 黄昏時の空の色は、日没後の太陽の赤い色と、薄い雲に残った青色が混じってピンクから紫色になるそうだ。あの怪しい紫色の雲の感じだけは分かる。

 しかし僕はどんなインダストリアルデザイン(工業意匠)にも生まれる必然があると考えているので、この「紫」の意味がどうしても理解できない。たぶん本体が到着してスタジオで撮影しながら開発者の声を聞けば解決することだ。「物は全てを語る」いずれにしろ、撮影は「色」で苦しむことが予想された。

 到着したGMW-B5000PBはすべてが常識破りだった。

「GMW-B5000PB」。価格は8万2500円(税込)で9月に発売する

カメラマン泣かせの被写体

 まずボックスを開けてみると、「あれれ、黒?」と思わせるボディの色。これは全身の大部分がつや消しの仕上げなので、スタジオのペンダントライトの下ではそう見えただけだった。

 箱から出してみると確かに紫、ベルトには渋いブルー(ブルーグレー)が配置されている。どちらも初めて見る色だ。撮影してもその度に色が微妙に違って来るだろうことが予想される、カメラマン泣かせの被写体だ。

 そして持ち上げると普段使っているチタン製の時計より少し重い。素材はステンレスのようだ。

 でも僕のような金属好きにはむしろ好もしい選択だ。金属はやはりある程度の重量がなくては、と思っている。そういう部分まで予測して開発したとすると、この時計の向こうのその人は、あなどれない。

イオンプレーティング処理の紫とは

 以前に、IP(イオンプレーティング)処理について調べたことがある。NASAが開発したこと、などの知識をザッピングしているうちにあるブログに辿り着いた。IP処理をメインとした会社を経営している人のもので、その中の一言が目を引いた。

 「IPは金、銀、そしてブラック。これがメイン。ブルーや紫は最も難しい」

 なんと、カシオ計算機の開発者はIP処理で最も難しい選択をしたことになる。

 開発者がこのページを見たかどうかは定かではないが、たぶんこのことは業界の常識なのだろう。難しいからやってみようという意気込みが、この紫の腕時計には感じられる。

 おそらく紫とブルーグレーという色が先にあって、それを肯定する理由付けとして“東京の黄昏時”(トワイライト・トーキョー)を後から探したのだと思う。いずれにしろ、ここまでは僕の妄想でしかない。でも撮影すればするほど、このB5000PBからパワーを感じるのは気のせいだろうか。

B5000PBのフェイス。ここに小さなワールドがある

 撮影台のB5000PBの、ベゼルあたりをアップにして撮影した。ベゼルの中には目立つオレンジやライトブルーのアクセントが際立って写った。かなり目立つように配置されている。また液晶画面はベースが黒だ。

 暗い液晶はトワイライト、周りのアクセントは都会のイルミネーションなのだと後から聞いた。開発者はたぶん、小さな世界を作り上げるのが得意の人なのだろう。クリエイターといってもいい。

 頭にクリエイターという言葉が浮かんだところで紫のボディがなんだか普通に見えてきた。そりゃあクリエイターなら常識を裏切るような表現をするし、そのことが存在意義なのである。

 ベゼル部分には縦じまの大き目のヘアライン処理がなされている。これが光の当たり方によってはダークな紫を演出して、「トワイライト」感を増している。細かい部分それぞれに意味を持たせている。

バンドのヘアラインはうっかりすると見過ごす

 バンド部分にも独特の存在感がある。ヘアライン仕上げがこれ以上ないぐらいに細かいのだ。肉眼で遠目で見るとそれと分からないぐらいの加工だ。

 僕が箱を開けた時、黒と感じたほどのつや消し感は、この計算された加工によるものだろう。こういう表に主張しない加工は、このB5000PBという製品の中の、バイプレーヤー(脇役)として立派に存在している。

 主役はベゼル回りのトワイライト・ワールドなのだから。

 撮影しているうちにB5000PBが気に入ってきたので、イメージカットを撮ってみた。

 眺めていると自然にライティングが降りてくる。元々デザインは完成されたものだから、1〜2灯で充分だろう。そしてバックは黒。物を一番キレイに見せる色だと僕は思っている。

 ベゼル部をメインに据えて、バンド部分はあえて黒くつぶし(ミラー加工のビスだけは見えるようにして)、フレーミングに意味を持たせてシャッターを切った。

僕流のトワイライト・ワールドを写真にしてみた

 間もなく迫りくる暗闇に、まだ明るく残る紫の雲。その向こうには東京のイルミネーションが見える。

 これをサイドのミラー加工→ベゼルの縦の大きなヘアライン加工→カラフルな文字盤へのつなぎで表現しているようだ。

 うん、カッコいい。大人はこんなトワイライトタイムから動き出すのさ。   

 B5000PBの個体としての面白さや、高い技術が盛り込まれた良い時計だということは理解できた。

 しかしB5000PBはれっきとした時計である。腕につけてナンボというところがある。問題はこの紫色のIP処理である。目立つようだと大人の普段使いには難しいだろう。

 そこで、実際に左腕に装着して写真を撮ってみた。

 全体のつや消しヘアラインのせいか、それほどの「紫感」はない。特にベルトはグレーにさえ見える。これなら普段使いでいけそうだ。

 でもこの時計が輝きを増すのはもっと後の時間、黄昏時なのだろうが。

違和感はない

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2021年9月29日

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