消費者の「買いたい」を最短距離で実現――カルビーの“ファンづくり”最前線「販売店検索」を深堀りする

» 2022年01月27日 10時00分 公開
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 今の時代、どの業界でもファンを大切にすることが大事だ。特定のブランドや企業を支持してくれる消費者を増やすことで、企業の売り上げを安定的に維持するファンベースのマーケティング手法を実践する企業は多い。

 人口減少が進む日本市場において、中長期的な視点で企業価値の向上を目指すにはファンの存在は欠かせない。いかにファンを増やすか――企業規模にかかわらず多くの人が頭を抱えている。

 こうした悩みは、「ポテトチップス」などを販売する食品大手のカルビーも例外ではない。これまでカルビーと消費者の接点は商品の売り場がメインだったため、消費者に直接呼びかけるなどのアプローチをすることが難しかった。

 そこでカルビーは、2020年9月に新たなファンづくりの取り組みとしてスマートフォン向けアプリ「カルビー ルビープログラム」(以下、ルビープログラム)を開発。22年1月には新機能「販売店検索システム」を追加した。狙いはコアなファンを生み出す“カルビー体験”の拡大だ。今回は、カルビー体験を生み出す裏側を取材した。

photo 左からカルビーの谷澤渓介氏(マーケティング本部 商品2部1課)、関口洋一氏(マーケティング本部 デジタルマーケティング担当マネジャー)

ファンを増やすのに必要なものは、接点と体験

 ファンの存在が企業にとっていかに重要なのかを示す「パレートの法則」がある。購入者の2割に当たる優良顧客が売り上げの8割を占めているというものだ。カルビーが自社調査をしたところ、一年に1回以上カルビー商品を買う人は6000万人以上いるが、売り上げの大半を支えている人の人数は約1000万人と判明した。熱心なファンを増やすことが売り上げの増加につながると明らかになった。

 カルビーではファンづくりの一環として、じゃがいもの収穫体験や工場見学といった体験を通して自社のことを詳しく知ってもらう取り組みを推進中だ。社内では「カルビー体験」と呼んでいる。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで消費者がカルビーの商品を買って食べるだけで完結せず、身近に感じてもらうことでファンを増やしてきた。

食品メーカーにとっての難関は、消費者との接点

 ファンを増やすには、消費者との接点がカギになる。飲食店やアパレルメーカーなど自社で店舗を運営している企業であれば、消費者との接点を各店舗で生み出すことができる。ところがカルビーのような食品メーカーの場合は、消費者との間に流通業者や小売業者などを挟んだビジネス形態のため、消費者との接点を生むことが難しい。

photo カルビーの谷澤渓介氏(マーケティング本部 商品2部1課)

 カルビーの谷澤渓介氏(マーケティング本部 商品2部1課)によると、これまで同社が行っていたテレビCMなどは相手が誰か分からないままマーケティングを行い、CMを見たどこかの誰かが商品を買っている状況だった。調査をすることで性別や年代などの傾向は把握できるが、どういった人が購入しているか個人レベルでは捉えられていなかった。

 こうした課題を解決するためにルビープログラムを開発。このアプリでは、購入した商品パッケージを指定の方法で折りたたみ、撮影した写真を送信してポイントをためることで、ファンミーティングへの参加といった体験を重視した特典と交換できる。(ルビープログラムの詳しい開発背景はこちら

 アプリユーザーに商品の写真を送信してもらい、アンケートで好みを聞くことで、その人が買った商品や好みに関する情報を得られる。商品情報などのプッシュ通知を配信することもでき、従来とは違う直接的なアプローチが可能になった。「私たちのような食品業界のメーカーにとっては、お客さま個人に直接アプローチできるのはマーケティング手法として革新的だと思います」(谷澤氏)

消費者の「買いたい」気持ちを最短距離で実現する

 カルビー体験の価値を向上させる次の一手として、22年1月にルビープログラムに追加した機能が販売店検索システムだ。カルビーの商品がどこの店舗で売っているか検索できる。将来的にはユーザーの好みに合わせて「お勧めの商品は近所だとこの店舗で売っている」とレコメンド機能の導入を目指す。

photo 販売店検索システムの画面イメージ(クリックで拡大)

 カルビーは、ポテトチップスだけでも年間100種類以上の新商品を発売しており、数量限定や販売期間が3カ月未満の限定商品も多い。そのため、近所のコンビニエンスストアでは売り切れていた、普段使っているスーパーマーケットでは取り扱いがなかったなど「買いたい」という気持ちに対してのミスマッチが起きてしまう。

 この「買いたい」という気持ちを最短距離で実現できるのが販売店検索システムだ。消費者の利便性を向上するだけでなく、検索システムを通じて売り場より一つ前の段階から接点を作れるメリットがある。

 「商品数の多さや限定販売などを要因として、お客さまとの出会いが作れないことで、販売に結び付かなかったと感じる商品もあります。そうした機会損失をなくす意味でも、販売店検索の仕組みをアプリに導入する必要性を感じていました」(谷澤氏)

「商品がない」――ネガティブな体験をポジティブな体験に転換

 カルビーのお客様相談室に寄せられる相談の多くが「この商品はどこで売っているのか」といった問い合わせだ。こうした相談があるということは、期待していた商品を食べられないというネガティブな体験が発生していることを意味する。販売店検索システムを導入することで「食べたい商品を入手できる」というポジティブな体験に切り替える狙いだ。

 食べたい商品がない状況からポジティブな体験に変えた例として、カルビーの関口洋一氏(マーケティング本部 デジタルマーケティング担当マネジャー)が面白いエピソードを紹介してくれた。

 期間限定の商品「堅あげポテト 匠の香ばしにんにく味」の販売終了後に、お客様相談室に買いたいと連絡をした人がいた。残念ながら、販売を終了したことを伝えて諦めてもらうしかない。その後、再販売が決定したのでカルビーから連絡をしたところ、とても喜んでくれたことがあった。

photo カルビーの関口洋一氏(マーケティング本部 デジタルマーケティング担当マネジャー)

 「こうした事例もあり、お客さまにとって必要な情報は何かを考えたとき、商品を指定して取り扱い店舗を探す機能は絶対に必要で、できるだけ早くリリースしたいという思いがありました」(関口氏)

メインターゲットの一つは若い世代

 販売店検索システムは、若い世代をメインターゲットの一つに設定している。お客様相談室に電話で問い合わせをする人は、年齢が高い世代が多い。若い世代は電話で問い合わせるよりも、インターネット検索やSNSで情報を入手する傾向にある。

 問い合わせがあれば何かしら対応できるが、そもそも問い合わせがないと手の打ちようがない。アプリ上で簡単に商品がある店舗を検索できれば、カルビーが捉えきれなかった潜在的なニーズを満たせる。若い世代に向けて、ネットの口コミで話題になった商品をすぐ検索できるような使い方を想定している。

社内にあった配荷データを活用

 実は、商品を売っている店舗を調べる仕組み自体はすでに社内に存在しており、主にお客様相談室で活用してきた。今回の販売店検索システムは、それを一般消費者向けに整えてリリースしたものだ。

 カルビーには「どの商品を何ケースどこの店舗に納品したか」という配荷データがあり、これを販売店検索システムに活用。全商品を検索することも技術的には可能だが、大量の商品を検索できるようにするとUI/UXが分かりづらくなってしまう。まずは新商品など特定の商品の検索に特化して、利用者の反応を確認しながら展開していく考えだ。機能の使いやすさを考えるところに、体験を重視するカルビーの姿勢が垣間見える。

 一回の配荷データは数千万件に上る。大量のデータを管理するためにカルビーは「Microsoft Azure」を使っている。ルビープログラムもMicrosoft Azure上に構築しており、利用する中で一度も障害がなかったことから販売店検索システムでも「Azure Databricks」「Azure Cosmos DB」などAzureのデータ基盤を採用した。

販促ツールではなく、ファンを生み出すツールに進化させていく

 販売店検索システムのプロジェクトを社内で横展開する検討も始めている。これまで生かしきれていなかった配荷データを活用した成功例になれば、データの新しい活用方法の道筋が見えてくる。例えば、どの商品をどこの地域にどれだけ配荷しているか可視化することで、その商圏に対する営業活動につなげていくといったアイデアもある。

 リリース時点では検索できる商品を限定している販売店検索システムのアップデートも計画中だ。今後は検索可能な商品を増やすと同時に、商品の再販売や新商品が登場した際にプッシュ通知で知らせて近所の販売店を素早く検索可能にすることを目指す。

 「プッシュ通知などでお客さまとの新しい接点を獲得できると考えています。とはいえ、商品情報を見境なくガツガツと送るのではなく、お客さまが心地よいと感じるタイミングで必要な情報をお渡ししていきたいです」(関口氏)

 カルビーでは、ルビープログラムや販売店検索システムを単なる販促ツールではなく、ファンを生み出すためのツールとして今後も進化を続けようと意気込んでいる。

【後編はこちら】

未利用だった数千万件の配荷データが“ファンづくり”の主役に カルビーが実現したデータ活用の舞台裏

 販売店検索システムは、カルビーが持つ数千万件に上る配荷データを基にしている。これまで、この配荷データを十分に生かしきれていなかった。一体、どのようにしてデータ活用を進めて販売店検索システムの開発に至ったのだろうか。

 カルビーの取り組みを探っていくと、データ活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるヒントが見えてきた。ルビープログラムの基盤になっているMicrosoftのクラウド基盤「Microsoft Azure」を使った開発背景と合わせて紹介する。


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