ソフトバンクグループの原点といえるIT流通事業を引き継ぐSB C&Sは、世間的には、販売パートナーを通じて、さまざまな“法人向け”ソリューションを提供する企業としてのイメージが強い。
しかし、彼らの強みである「最先端テクノロジーをいち早く発掘し、ヒット商品に育て上げる力」は、“コンシューマ向け”のプロダクトにも生かされている。似て非なる領域で、どのようなシナジーを生み出しているのか。SB C&Sでコンシューマ事業を担当する竹下悟氏と石川純二氏に話を聞いた。
ITソリューションの流通から自社製品の開発、販売まで、多岐にわたる事業を展開するSB C&Sでは、国内外のメーカー企業や最前線にいる販売パートナーとともに、次に社会を変えるかもしれないテクノロジーやアイデアを常に追い求めている。本企画では、そんな同社の事業背景や担当者の思いを連載で紹介する。
SB C&Sは、スマートフォンやPC、周辺機器などのハードウェア、個人向けパッケージソフトウェア、クラウドサービスのライセンスに加え、最近ではスマート家電やヘルスケア機器、家庭用ロボットといった個人のデジタルライフを快適にすることを目指したコンシューマ向け製品も数多く取り扱っている。
さらにディストリビューター(販売代理店)としての役割だけでなく、自社製品の開発にも注力しており、独自ブランド製品のビジネスも積極的に展開。これらコンシューマ向け製品の取り扱い総数は、6万5000点以上に及ぶ。
「近年はコンシューマ向け製品が先行して法人向けビジネス市場が後追いするコンシューマライゼーションの時代が到来したこともあり、コンシューマ向け製品の品ぞろえにはとくに力を入れています」──そう説明するのは、SB C&Sでコンシューマ向け事業を担当する竹下悟氏(コンシューマ事業本部 商品本部 副本部長)だ。
コンシューマ向けのテクノロジーの進化とともに、PCに始まり、モバイル、インターネット、最近はAIやIoTのようなメガトレンドに合わせ、取り扱う製品の幅を広げてきた。
例えばIoT関連製品では海外のスタートアップ企業が開発したスマート家電を数多く取り扱っている。このうちの一つ、ロボット掃除機「Roborock」(ロボロック)は、大手家電量販店とのコラボレーションモデルが国内で大きなシェアを獲得するまでに成長している。
そんなSB C&Sのコンシューマ向け製品ビジネスは、メーカーとディストリビューターという二つの側面から事業に取り組んでいるところに強みがある。
同社の石川純二氏(コンシューマ事業本部 商品本部 副本部長)は次のように説明する。
「当社は、メーカー各社の先進的な製品を仕入れて販売パートナーに提供するだけでなく、メーカーと一緒になってお客さまのニーズに応える製品を共同開発したり、自社オリジナルブランドの製品を企画・開発したりといったように、メーカーとディストリビューターの両面からコンシューマ向けビジネスを展開しています」(石川氏)
スマートフォンケースやフィルム、充電器・ケーブルなどのモバイルアクセサリーの「SoftBank SELECTION」、完全ワイヤレスイヤホンを中心にオーディオ製品を展開する「GLIDiC」などは、SB C&Sがメーカーとして力を発揮している代表的なオリジナルブランドだ。
社内にメーカー機能を備えているということ──これは技術やカスタマーサポート、流通といった各分野に精通した人材が備わっているとも言い換えられる。
実際にSB C&Sでは、日本国内に展開したいと考える海外メーカーの流通を担うにあたり、日本の法規制に対応させるための技術的サポートや、日本のユーザーを満足させるカスタマーサービス体制の立案、そして販売において重要なマーケティング支援(販売経路の確保や販売促進)といったローカライズを積極的に行っている。
例えば、SB C&Sは米Tileが展開するスマートトラッカー(忘れ物防止タグ)「Tile」の日本輸入総代理店を担っているが、2021年12月にはTile機能を備えたクレジットカード「三井住友カード Tile」というユニークな商品を世に送り出した。
クレジットカード自体にTile機能を内蔵させるというチャレンジングな企画だったが、関係各所を巻き込んで製品化にこぎ着け、リテラシーの高い層を中心に話題を呼んだ。
他にも公共交通機関やタクシーにTileのアクセスポイントを設置して、落とし物防止タグとしての使い勝手を高めるなど、海外メーカーの製品とは思えない規模とスピード感でローカライズを進めてきた。
さらに、他にはない個性的な製品を提供するのもSB C&Sの特徴だ。例えば、人気アプリ「Yahoo!カーナビ」(iOS、Android)と連携するというユニークな車載アクセサリーもそのうちの一つだ(2016年発売、現在は生産終了)。
特定のアプリ専用のハードウェアを企画・製品化する例はかなり珍しい。走行中のスマートフォン操作が禁止されている中、スマートフォンに触れずにカーナビアプリを操作できる製品として大きな反響があった。
「この製品は世の中に役立つ製品の企画・開発を進めた結果として誕生しました。当時、スマートフォンのカーナビはまだ一般的ではありませんでしたが、スマホをカーナビ利用するユーザーの法令順守と安全に役立てるため、スマホを触らずにカーナビのように利用できるハードウェアを世に送りだそうと考えました。様々なパートナーにアプリ開発を提案していく中で、Yahoo!カーナビアプリをリリースに向けて準備を進めていたヤフーと協業が実現し、製品化したものになります」(石川氏)
SB C&Sは単に既製品を日本国内で流通させるだけでなく、今ある技術を使ってさらなる価値を提供できないかと考えて実行する土壌がある。これはディストリビューターにとどまらない大きな強みといえるだろう。
ここまでに挙げた製品を見ると、SB C&Sは“尖った”製品を世に送り出しているように見える。しかし、実際はそうした製品を重点的に取り扱おうとしているわけではないという。特にこだわりの強いユーザーも多いと思われる領域の製品を取り扱う上で、同社はどのような工夫をしているのだろうか。
「実際のところは、こだわりの強いお客さまに選ばれるような、尖った製品だけに力を入れているわけではありません。できる限り幅広いお客さまに必要とされる製品を取り扱うことを第一に考えています。ソフトバンクグループには『情報革命で人々を幸せに』という経営理念がありますが、この『人々』は特定のコアなユーザーだけでなく、全ての人たちを指しています。このことからも、当社の製品に対する思想がお分かりいただけると思います」(石川氏)
「モバイルアクセサリーが中心の自社ブランド製品には、カーナビリモコンのような尖った製品が含まれることもあります。しかしそれは、全ての取り扱い製品のうち、ほんの一部に過ぎません。重要なのは、新しい製品が登場したときに、その製品をどんなお客さまが欲しがっているのか、欲しいお客さまにお届けするにはどの販売チャネルで製品を展開するのが良いのかといった売り方、マーケティング施策については入念に検討し、長年のビジネスのなかで培ってきた経験・知見に基づいたさまざまな工夫もしています」(竹下氏)
その中でSB C&Sの先進的な部分を挙げるとすれば、コンシューマ向け製品ビジネスを担当する部門にマーケティング機能を持たせていることだ。
「より製品に近い目線で効果的なマーケティング活動が行えるとの判断によるものです。同様に、製品の企画・開発、品質保証、デザインチームなども、私たちの部門のなかにあります」(竹下氏)
ここまでコンシューマ向け製品ビジネスを成長させてきたSB C&Sだが、その過程は決して平たんな道のりではなかった。
「コンシューマ向け製品ビジネスのなかにメーカー機能を持たせることにした約10年前は、本当に“手探り状態”でした。先進的な海外製品を日本市場に紹介するのにも、何をすればよいのか分からず、体制も整っていないなど、未熟な状態でした」(石川氏)
同社はそうしたところから試行錯誤と改善を繰り返し、徐々に組織体制を確立していった。まさにコンシューマ向け製品ビジネスを通じて、メーカーと販売店、そして多様化するユーザーのニーズを捉えるビジネスの力を磨いてきたSB C&Sだが、今後も特にIoTの領域は磨きがいがある領域だと考えているようだ。竹下氏は今後のビジョンを次のように話す。
「これからはスマート家電に代表されるように、あらゆる製品がインターネットを通じて外部とつながり、そこにさまざまなサービスが付与される時代へと進んでいくことは間違いありません。それに対し、商品カテゴリーを跨いだ組織横断的なサービス企画部門を創設するなどして、今後はコンシューマ向け製品ビジネスをさらに発展させていきたいと考えています」(竹下氏)
さらにモノ売りだけでなく、サービスによって継続的な収益が見込めて、売る側も使う側もが満足できる仕組みを整えようとしている。
「SB C&Sはこれまで、いわば『物売りのディストリビューター』としてのビジネスが主流でした。しかしこれからは、販売パートナー各社に当社がもつプラットフォームを使ったクラウドサービスを展開してもらい、継続的に価値を提供して長期的に収益を獲得するリカーリングビジネス、定期的な課金によりサービスを提供するサブスクリプションビジネスを立ち上げ、コンシューマ向け製品ビジネスを支える柱の一つにしていきたいと考えています」(石川氏)
石川氏はSB C&Sの過去を“手探り状態”と表現したが、この10年で積み上げたものは確かな礎となっている。これから新しいテクノロジーが世に出てきても、彼らは確実に対応していくだろう。また、その評判は業界で着実に広まっている。「日本で展開するなら、SB C&Sに声を掛けたほうがいいぞ」──そんな口コミをきっかけに、新たなビジネスが始まったこともあったという。
どんなに驚きやインパクトがある製品であっても、より多くの人が便利だと感じ、世の中に浸透させていくためには“潤滑油”が必要だ。モノやサービスで世の中を変えたいと考えているならば、その一歩を後押ししてくれるSB C&Sに相談してみてはいかがだろうか。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2022年9月9日