おせち30万食を“約束の日”に届けろ! AWS活用で配送費12%減 食品会社「初心者向けハンズオンを受けまくった」AWSの活用で結果を残した“センパイ”に聞く

» 2023年06月22日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
PR

 「アマゾン ウェブ サービス(AWS)を導入しようにも社内に詳しい人がおらず、初心者向けハンズオンを片っ端から受けまくったのは懐かしい思い出です」――こう話すのは、関西の食品会社ナカノモードエンタープライズ(大阪府大阪市)でAWSの導入を主導した上田真人さん(システム物流部門 部門長)だ。

photo ナカノモードエンタープライズの上田真人さん(システム物流部門 部門長)

 同社は「おせち」専門ECサイトを運営しており、毎年30万食のおせちを正月に配送している。夏ごろから大量の受注に対応し、年末の3日間だけで全注文の配送を完了する特殊なオペレーションを効率化すべく、AWSの活用にチャレンジした。

 今では、クラウド型コンタクトセンターサービス「Amazon Connect」を使ってたくさんの電話注文に対応し、時系列予測サービス「Amazon Forecast」で受注量を予測して配送コストを抑え、BIツール「Amazon QuickSight」を使って業務改善を進めている。

 社内にAWSの経験者がいない中、こうした活用が進んだポイントはどこにあるのか。上田さんに導入の経緯や運用状況、活用のアドバイスを聞いた。

photo ナカノモードエンタープライズのAWS活用内容

注文増加でコールセンターに課題 刷新にAmazon Connectを選んだ訳

 ナカノモードエンタープライズのおせち事業は2002年にECサイト「板前魂」から始まった。今やネット通販の代名詞になった「Amazon.com」ですら成長途上だった当時、おせちのネット販売としては草分け的な存在だ。

 おせちを食べるのは新年の1月だが、注文は前年8月ごろから受け付ける。ECサイトやECモールだけでなく、テレビやラジオ、新聞広告、カタログ販売など販売チャネルは多岐にわたる。その多くは社内のコールセンターで対応しているが、年々注文数が増加するにつれ、通話録音などの機能面や電話フローの柔軟性といった課題が顕在化しはじめた。

photo ナカノモードエンタープライズの板前魂

 「既存システムでは業務に支障が出てきたので、コールセンターのシステムを刷新しようと各種製品の検討を進めていました。しかし従来型のシステムでは満足のいく効果を見込めず悩んでいたところ、米国でスタートしたAWSのクラウド型コールセンターシステム(Amazon Connect)が日本でも利用可能になると聞いて、情報収集の末20年にAmazon Connectの導入を決めました」(上田さん)

 コールセンター業務を外部委託する選択肢もあったが、ナカノモードエンタープライズでは社内組織にこだわった。同社のシステム的に外部からの接続が難しいという技術的な理由もあったが、「お客さまの声に接する機会や仕組みを失いたくない」というのが会社のポリシーだったと上田さんは振り返る。

ITに詳しくないからこそクラウド版を選択 現場も大歓迎

 コールセンター業務を改善し、さらにその仕組みを内製化する目的を果たすにはクラウド型のシステムを導入することが得策だと判断した上田さん。従来型システムの場合は刷新の際に機器の導入など一定の初期費用が発生するが、クラウド型のAmazon Connectならこれらを解決できると踏んだわけだ。

 「社内にITシステムに特段詳しい担当者がいるわけではなく、過去のコールセンター構築も大変でした。その点、Amazon Connectはサーバの管理などをAWS側に任せられるのが良かったです」(上田さん)

 こうしたクラウドサービスを使う際、現場が導入したくても経営層の理解を得られないケースが多々ある。ナカノモードエンタープライズでは、上田さんが経営層や関係者を集めてAmazon Connectの挙動や効果をデモンストレーションしたことでメリットを伝えることができ、すんなりと経営層からの承認を得られたという。

 「Amazon Connectのダッシュボードからドラッグ&ドロップで各種設定を変更できる点や、サーバやネットワーク周りの専門的な知識がなくても運用できる点が高く評価され、『クラウド型サービスが当社に向いている』という意識を社内で共有できました。特に現場の担当者は『大歓迎!』という空気感でした」(上田さん)

「従来システムで数十万件の電話注文に対応していたのが信じられない」

 20年からAmazon Connectの本格運用を開始。AWSのアカウント作成から運用開始までを2カ月という短期間で実現した。担当エンジニアたちと共に情報収集と事前準備をしていたため大きな壁に直面することなくスムーズに進んだ。

 ただし、当時はAmazon Connectの日本上陸直後ということもあって事例が少なく、コールバックの仕組みなど細かい要望を実現しようにも前例を参考にできず戸惑うことがあったという。そこで海外の事例を探して設定などを参照するなどして工夫したと上田さんは振り返る。

 「Amazon Connectの本格運用を始めて約3年ですが、今思うとAWS導入以前の仕組みで数十万件にも及ぶ数の電話注文に対応していたのが信じられません。随所に潜んでいたであろうリスクや非効率的な業務を考えると恐ろしさすら感じます」(上田さん)

Amazon Forecastで注文数を予測 配送コストを約12%削減

 Amazon Connectの導入でAWSの効果に手応えを得た同社が次に掲げたのは、Amazon Forecastを使った社内データの活用による物流管理の課題解決だった。

 板前魂のメイン工場は大阪府にある。しかし年末のたった3日間で大阪府から全国に30万食を届けるのは無理があるため、各地に出荷拠点を設けて注文数を基に商品をあらかじめ搬入しておき、年末に一斉配送する体制を整えている。

 「商品は50種類近くあります。以前は前年の販売数を基に、商品種ごとの数量予測を立てて各拠点に搬入していました。ただ、予測といっても自前の物流管理システムが出力する表計算データに、決まったパラメーターを掛け合わせる程度のものだったので正確性に欠けていました。そこで機械学習をベースにしたAmazon Forecastを使用することで、ブレの少ない予測を立てられると考えました」(上田さん)

 Amazon Forecastの導入後、地域別の受注データをAWSのストレージサービス「Amazon Simple Storage Service(S3)」に格納して機械学習を行う仕組みを整備。受注開始から毎月1カ月単位で、12月末の配送ギリギリの受注データまで学習させることで出荷拠点に的確な数量を事前搬入できた。Amazon Forecastを含む全社でのさまざまな取り組みの結果、約12%の配送コスト削減に成功へとつながった。

photo ナカノモードエンタープライズが実施したAmazon Forecastの導入手順

たった6日でAmazon QuickSightを導入 データ分析を効率化

 もう1つ、ナカノモードエンタープライズが活用したのがBIツールのAmazon QuickSightだ。おせちを正月の食卓に届けるには、物流管理の精度向上と同時に生産スケジュールの管理も重要になる。販売期間の終了間際まで生産を続けているため、精度の高い受注管理やスケジュール管理が食品ロスなど無駄の削減につながる。

 「以前は表計算ソフトで管理していたので現況の把握に時間がかかり、さらにスケジュールや工場の状況などファイルがバラバラだったので全体を俯瞰(ふかん)できず課題感を抱いていました」(上田さん)

 そこでデータを正確かつ直感的に把握し、生産スケジュールに生かせるようにAmazon QuickSightの導入に踏み切った。検証から導入までの4ステップ「現状分析→データ準備→検証→導入」をわずか6日間で実施。グラフ作成は難なくでき、データの更新も自動化して運用している。分かりやすさなどに満足していると上田さんはいう。

photo ナカノモードエンタープライズが実施したAmazon QuickSightの導入手順

手軽にデータ活用 自動化でミス減少 「もう表計算ソフトには戻れない」

 Amazon ForecastやAmazon QuickSightは管理精度の向上以外に、作業負担やミスの減少にも役立っている。表計算ソフトを使っていたころは、繁忙期になるとデータ量や作業工数が増えてミスが発生し、社内の雰囲気も悪化して別のミスを誘発する悪循環に陥ることがあったという。

 Amazon ForecastやAmazon QuickSight導入後は、最新の生産データを毎日現場の端末から直接S3に自動アップロードしている。予測やデータの視覚化なども含め、作業を自動化したことで作業効率があがるだけでなく人的ミスも減った。社内からは「もう表計算ソフトには戻れない」という声もあがっていると上田さんは笑う。

 さらにデータ活用についても、Amazon QuickSighを使ったデータの視覚化なら「この商品の受注状況を見たい」といった使い方をすぐに実践できたと話す。またAmazon QuickSightやAmazon Forecastのダッシュボードを使いやすく改善し続けている。

課題解決は「まずやってみる」 基礎を学んで、AWSで手軽にチャレンジ

 ナカノモードエンタープライズでは、“AWSのプロ”が社内にいなくても3種類のAWSサービスを活用して成果を挙げている。外部ベンダーやSIerに、”全てお任せ”するのではなく、自力で進めているのがポイントだ。

 「AWSの解説本を買ったり、複数のオンラインセミナーに参加したりして必要な知識を身に付けました。AWSの公式ドキュメントも参考になりますが、たまに専門用語が多くて難しいこともあります。しかしハンズオン教材は日本語対応しており画像付きのものが多いので、1時間程度で学べるものを片っ端から受けまくりました」(上田さん)

 これからAWSを導入しようというユーザーに、“センパイ”としてのアドバイスを聞くと、AWSアカウントの管理など基礎を理解することが大切だと上田さんは話した。

 「検討段階で情報収集をしていると、情報漏えいの被害や予期せぬ請求額に驚くなどネガティブな話題も目に入ります。管理画面でさまざまな設定を手軽に試せるだけに、思いがけない事態に遭遇するかもしれません。最初にアカウント管理やセキュリティについて気を付けていれば防げることなので、しっかりと理解しておきたいですね」(上田さん)

 上田さんとしてもAWS活用のチャレンジは今後も進めたい考えだ。そして上田さんが率いたナカノモードエンタープライズのAWS活用では、「最初は学んでみる」「まずはやってみる」の精神で、一歩ずつ段階的にシステムのクラウド化や自動化に取り組んでいた。解決したい課題や効率化したい業務があるなら、放置せずに「どのような方法があるか」を考えるのがいいだろう。そしてAWSなら多様なサービスを自分で使って課題解決を実現できる。

 もちろん初心者でも大丈夫だ。アカウント作成から丁寧に解説したWebページがある他、初心者向けハンズオンも多数用意されている。多くのサービスは無料利用できる期間があるため、まずは使ってみて効果を確かめてみるといいかもしれない。

登場したAWSサービスをチェック!

Amazon Connect

photo

 コンタクトセンターの仕組みをクラウド形式で導入できるサービス。回線などの用意は不要で、録音や自動応答、電話交換機(PBX)、オペレーターへの電話振り分けなどの機能を利用できる。チャットbotの作成も可能。(詳細はこちら

Amazon Forecast

photo

 時系列予測サービス。機械学習や統計アルゴリズムなどを使うことで、商品の需要予測や財務計画の作成などに活用できる。データの用意や予測モデルの選択などを通して、エンジニアでなくとも過去のデータから未来の予測が可能になる。(詳細はこちら

Amazon QuickSight

photo

 クラウド型のBIツール。さまざまなデータの視覚化や分析が可能。表計算ソフトのファイルを入力する他、営業支援ツール(CRM)などと連携したデータの自動インポートにも対応し、ダッシュボード作成やレポート共有などを手軽に行える。(詳細はこちら

Amazon Simple Storage Service(S3)

photo

 クラウドストレージサービス。各種ファイルから動画データまで大量のデータを低コストかつセキュアに保管できる。データのバックアップやコンテンツ配信などに活用可能。(詳細はこちら


連載:「AWSを使ってみたい!」 始めの第一歩:

 AWSを使ってみたいけど何をすればいいか分からない――そんな読者に向けてAWSの使い方を基礎から解説。“AWS初心者”の編集記者と営業担当が、アカウント作成から順に一歩ずつ進んでいく様子をレポートする。


第1回:アカウント作成編

photo

最初は「AWS 始め方」で検索するところから――IT初心者がAWS活用に挑戦 果たしてどうなった?

第2回:AWSでWebサイト制作編(Amazon Lightsailを活用)

photo

「AWSでWebサイトを作ろう!」 IT初心者が仮想サーバに向き合う 知識ゼロからやってみた

第3回:AWSで営業データを分析編(Amazon QuickSightを活用)

photo

AWSで営業データ分析に挑戦!――IT初心者が陥りがちな”失敗あるある”に遭遇 解決策はシンプルだった!?

第4回:AWSにデータ保存&BIサービス連携編(Amazon S3を活用)

photo

AWS初心者がデータ保存〜分析に挑戦 「Amazon S3」の活用法 BIサービス連携までやってみた

第5回:AWSの“AI検索”で社内文書を検索編(Amazon Kendraを活用)

photo

AWSの“AI検索”で、社内の「あの資料どこ?」解消 生成AIと連携も 初心者が「Amazon Kendra」を使ってみた




Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2023年6月28日