「深夜の緊急サーバ対応から解放」 AWS活用で取り組んだ“本気の課題解決” 知見ゼロから始めた関西企業の挑戦AWSの活用で結果を残した“センパイ”に聞く

» 2023年07月10日 10時00分 公開
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 「長くオンプレミスのIT環境を運用していたので、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の知見はありませんでした。しかし、いざAWSを導入してみると、オンプレ時代には3カ月に一度あった深夜の緊急サーバ対応から解放されました」――こう語るのは、ある関西企業のIT担当者だ。

 “知見ゼロからのAWS活用事例”として取材したのは、携帯ショップを運営するフジテレコムズ(大阪市)の田中剛さん。もともとIT企業ではなかったが、ショップ利用者への情報提供と満足度アップを狙ったスマートフォンアプリ「COMPASS」の開発・運用を田中さん主導で進めるようになり、AWSを活用した。

photo フジテレコムズの田中剛さん(Webソリューション部技術課課長)

 現在は2018年から進めるクラウドシフトの一環で導入したAWSの各種サービスを駆使して、約1200店舗が使うCOMPASSで、月間100万人を超えるユーザーからのアクセスを処理している。COMPASSは約15年前にスタートしており知見がたまっていたが、田中さんをはじめ同社IT部門のメンバーはクラウドサービスのシステム運用は未経験。そんな状況でもAWS活用を成功させたポイントはどこにあるのか。

“ガラケー”全盛期から開発スタート スマホ対応に試行錯誤

 AWSを導入するまでの経緯を追うため、“ガラケー”が主流だった08年に時計の針を巻き戻そう。ガラケー時代に誕生したCOMPASSはWebサービスとしてリリースされ、当時としては先進的な取り組みだった。COMPASSでセール情報の配信や期間限定イベントの開催などを行い、顧客の満足度を高めることに成功。さらにスマホにもいち早く対応し、Android/iOS版アプリを展開したほか、メッセージアプリ「LINE」の公式アカウント連携機能も提供している。

 スマホ向けアプリ開発の知見が乏しい中、社内エンジニア3〜4人と試行錯誤しながら開発し、アプリストアに公開したときは感激したと田中さんは当時を振り返って笑顔を見せる。ショップ運営からスタートしたフジテレコムズが、顧客ファーストを考えた結果COMPASSアプリにたどり着いた。店舗側にとっても顧客管理をできるメリットがある。

photo COMPASSのイメージ

「3カ月に一度はアラート」 夜間対応も――オンプレ時代の課題

 使い勝手と店舗メリットを追求した結果、数百店舗だった導入店舗が約1200店舗に拡大。累計300万ユーザーを突破し、COMPASSへのアクセス数や取り扱うデータ量が増えてきた。それに伴いオンプレでの運用にさまざまな課題が顕在化しはじめた。

 具体的にはデータ量の増加によるストレージ容量の枯渇、サーバへの負荷増大、想定量を超えるトラフィックによる回線逼迫(ひっぱく)などの問題が噴出した。特に定期開催している景品付きのミニゲームやビンゴ大会といったオンラインイベントでは、開催通知を見たユーザー約40万人が一斉にアクセスするほか、新機種の販売告知にも大量のアクセスがあるためシステムへの負荷が一気に高まった。

 負荷が高まってCOMPASSのページが表示されないと、ユーザーが不満に思うだけでなく、店舗の機会損失になってしまう。こうした負荷に対応するためサーバなどを追加すると導入コストがかかるうえ、運用すべき対象が増えるなどの負担増加につながっていた。

 「サーバの故障などはデータセンター側で対応してくれますが、それ以外は自分たちで対処します。当時は3カ月に一度くらいの頻度で障害アラートが飛んできて、夜中でも対応することがしばしばありました」(田中さん)

 システム規模の拡大に合わせて、セキュリティ対策も強化しなければならない。オンプレ時代は、少数のエンジニアと一緒に調べながらセキュリティ対策をしていたため重荷だったと田中さんは話す。

クラウド移行を決断 「オンプレへの安心感」に勝るメリット

 COMPASS運用の課題が見過ごせないレベルになっていた18年、システムをリプレースするタイミングがやってきた。オンプレを継続するか、クラウドに移行するか選ぶ状況で、すぐにオンプレをやめる決断を下せなかったと田中さんは説明する。

 「クラウドのメリットは理解しており、今後のことを考えると移行は必須だと考えていました。しかし私たちにはクラウドの知見がありません。約10年間使ってきたオンプレへの安心感がありました」(田中さん)

 そこで長年システムのサポートを依頼しているSIerの神戸デジタル・ラボ(神戸市)にAWSへの移行を相談。AWSの導入事例や特性について情報共有を受けたことが決断を後押しした。田中さんは「AWSの特徴や特性を吟味すると私たちでも使えそう」と思ったという。

 クラウド活用については、経営層にメリットや導入効果を詳しく説明して理解してもらうことで、反対の声が上がることなく移行に取り掛かれた。

AWS導入 「インフラ側はAWSが管理」で負担軽減に

 AWSの導入にあたっては、約3カ月間で要件定義を終え、6カ月かけてSIerとともに開発して本番運用に備えた。システムの構築中は大きなトラブルもなく、運用開始までスケジュール通り進められた。COMPASSの運用を止めることなくAWSに移行でき、全て問題なく終えられた。AWSを使い始めて約5年になるが、効果は上々だという。

 「夜間のアラートがなくなりました。インフラ部分はAWS側で管理してくれますし、膨大なアクセスにも自動で対応できる設定にしたおかげです」(田中さん)

 AWSで構築した環境は次の通りだ。仮想ネットワークサービス「Amazon Virtual Private Cloud」上に仮想サーバ「Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)」を構築し、そこにCOMPASSのシステムを移行。アクセス数を複数のサーバに振り分けて負荷を分散するロードバランサー「Elastic Load Balancing」や、データベースサービス「Amazon Aurora」を活用することで、急な負荷の増加にも耐えられるシステムにできた。

 AWSのサービスを活用することで細かい要件に対応している。専門的な話になるが、アクセス数の状況に応じてサーバなどのリソースを自動で増減できる「AWS Auto Scaling」を使って急激なアクセス増加に対応し、Amazon Auroraでキャッシュサービス「Amazon ElastiCache」を使いシステムのパフォーマンスを向上させる工夫をした。

 AWSの機能やサービスを活用することで、運用面での信頼性を確保しながら、さまざまな要件に柔軟な対応ができていると田中さんは声を弾ませる。

photo フジテレコムズが構築したAWSのシステム構成

“視覚的な操作”でトラブルの時系列をチェック 原因究明に役立つ

 AWS導入によって生まれたメリットはほかにもあると田中さんは明かす。まず従量課金制なので、初期費用だけでなく運用コストも抑えられる。例えば、長期間のリソース利用分を事前に予約して使うAmazon リザーブドインスタンスを有効活用して、年間100万円以上のコスト削減を実現した。オンプレ時代に苦労したセキュリティ対策も「AWS WAF」によって、高い安全性を全てAWS内で賄えているという。

 さらに、保守・運用面における業務を効率化できたことで、数字には表れないメリットも大きい。

 「以前はサーバの保守も自分たちで行っていました。開発と保守に費やす時間の割合は50対50くらいのイメージです。それがAWS移行後は保守作業がほぼなくなったので、システム開発に専念でき、新しいサービスにチャレンジできるようになりました」(田中さん)

 トラブル対応の質も大きく変化した。オンプレ時代は、アラートが出た時点では問題点を探るので手いっぱいで、時系列をさかのぼってトラブルの原因を突き止める体制が組めていなかったという。しかしAWSの管理コンソールはGUI(Graphical User Interface)なので、複雑な操作をせずに情報を時系列順に可視化でき、どこでエラーが発生しているか、何分前から兆候が現れていたかなど根源的な原因究明に役立っている。

AWS初心者はコレを学ぶといい! “センパイ”からのアドバイス

 オンプレからAWSに見事移行できたフジテレコムズ。その取り組みの中で、システムに対する概念や考え方を変える必要があったと田中さんは打ち明ける。「オンプレならサーバの実機が物理的にあるので理解しやすいです。しかしクラウドや仮想リソースなど目には見えないインフラを管理するという概念に戸惑うこともありました。勉強を進めながら理解を深め、いまでは使いこなせています」(田中さん)


 勉強に使ったのは、AWSの公式ドキュメントや関連書籍などだ。さらにAWSはインターネット上にたくさんの有益な情報があるため「勉強を進める上での苦労はほとんど感じませんでした」と田中さんは話す。壁に当たったときはSIerのサポートを受けながら、AWSの知見をためていった。

 これからAWSを使い始める人に向けて、自身の経験を踏まえた“センパイ”としての勉強ポイントを聞くと、次の内容を意識すれば効率よく学べるとアドバイスしてくれた。

  • クラウドサービスの基本的な概念や種類
  • AWSの特徴やメリット/デメリット
  • AWSの主要サービスや機能
  • クラウドの責任共有モデルやセキュリティ対策
  • AWSの料金体系やコスト管理方法

 AWSは常に新しいサービスや機能を開発・提供しているので、導入時だけでなく運用フェーズに移った後も新機能で何ができるか、各種設定は適切かなど最新情報をキャッチアップすることが必要だ。

「こんなことしたい」にAWSで対応 チャレンジしやすい環境

 AWSのメリットを存分に生かしているフジテレコムズだが、田中さんは現状に満足することなく今後もAWSを使ったチャレンジを目指すと目を輝かせる。

 「COMPASSは導入店舗やユーザー数が増えて規模が大きくなったことで、『こんなことできませんか?』という要望が増えました。以前はイチから考えていましたが、いまはAWSのサービスをベースにした組み合わせの可能性を考えて、要望に応えています。今後はAIやIoT関連のサービスも提供していきたいですし、すでにAWS活用の経験を生かした受託開発にも手を広げ始めています」(田中さん)

 田中さんが切り開いたフジテレコムズのAWS活用は、オンプレミス環境で苦労した課題をどう解決するかに着目することでスムーズに実現できた。これからは、蓄積したデータを活用するなどビジネス拡大にも役立てられるだろう。

 読者の中で、現在のシステムに解決したい課題や効率化したい業務があるなら、場当たり的な対応ではなく、根本的な改革を進めてはいかがだろうか。その際、AWSならさまざまなサービスで課題解決を後押ししてくれるはずだ。もちろん深い知識がなくても、初心者向けハンズオンなどを試せば何ができるか理解できる。まずは使ってみるのがいいかもしれない。

登場したAWSサービスをチェック!

Amazon Virtual Private Cloud(VPC)

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 AWS上にユーザー専用のプライベートな仮想ネットワーク環境を構築できるクラウドサービス。オンプレミスでサーバや回線を準備せずに、素早くネットワーク環境を用意できる。(詳細はこちら

Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)

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 仮想サーバサービス。OSをインストールした仮想サーバ(インスタンス)を手軽に構築できる。Webサイトの構築から検証用環境まで幅広く使える。(詳細はこちら

Elastic Load Balancing(ELB)

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 サーバへのアクセスを適切に振り分けて負荷を分散するロードバランサーで、システムの安定稼働を支える。負荷の状況に応じて自動的にELBを増減するスケーリング機能もある。(詳細はこちら

Amazon Aurora

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 データベースサービス。大量のデータを高速に処理する、多数のユーザーからのアクセスに対応できるなどの特長がある。ストレージとインスタンスを分離しているため、高い可用性や耐久性を保てる。(詳細はこちら

Amazon Auto Scaling

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 アクセス数の状況に応じてサーバなどのリソースを自動で増減できる機能。アクセスが多い場合にはインスタンスを増設して負荷を分散し、閑散時にはインスタンスを減らしてコストを抑えられる。(詳細はこちら

Amazon ElastiCache

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 キャッシュサービス。頻繁に使うデータを一時的にキャッシュとして保存することで、データの呼び出しやアクセス時間を短縮し、システムの応答速度を速められる。(詳細はこちら

AWS WAF

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 サイバー攻撃などからWebアプリケーションを守るWAF(Web Application Firewall)。あらかじめセキュリティルールが用意されている他、導入の手間やスケーラビリティの点などにメリットがある。(詳細はこちら


連載:「AWSを使ってみたい!」 始めの第一歩:

 AWSを使ってみたいけど何をすればいいか分からない――そんな読者に向けてAWSの使い方を基礎から解説。“AWS初心者”の編集記者と営業担当が、アカウント作成から順に一歩ずつ進んでいく様子をレポートする。


第1回:アカウント作成編

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最初は「AWS 始め方」で検索するところから――IT初心者がAWS活用に挑戦 果たしてどうなった?

第2回:AWSでWebサイト制作編(Amazon Lightsailを活用)

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「AWSでWebサイトを作ろう!」 IT初心者が仮想サーバに向き合う 知識ゼロからやってみた

第3回:AWSで営業データを分析編(Amazon QuickSightを活用)

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AWSで営業データ分析に挑戦!――IT初心者が陥りがちな”失敗あるある”に遭遇 解決策はシンプルだった!?

第4回:AWSにデータ保存&BIサービス連携編(Amazon S3を活用)

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AWS初心者がデータ保存〜分析に挑戦 「Amazon S3」の活用法 BIサービス連携までやってみた

第5回:AWSの“AI検索”で社内文書を検索編(Amazon Kendraを活用)

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AWSの“AI検索”で、社内の「あの資料どこ?」解消 生成AIと連携も 初心者が「Amazon Kendra」を使ってみた




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提供:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2023年7月29日