ライブ配信で起きている「革命」 映像関連機材の輸入企業がコンテンツの内製化に挑む! AV over IPの革新的な活用とは?

» 2023年10月18日 10時00分 公開
[小寺信良PR/ITmedia]
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 米AJA Video Systemsのコンバーターやインタフェース類の輸入商社として、映像のプロには古くからおなじみの会社であるアスク(東京都千代田区)。ベースバンド製品の取り扱いを中心に展開してきたが、2014年には米NewTek(ニューテック)の国内代理店であるディストームとパートナーシップを締結し、AV over IPの先駆者的製品である「TriCaster」(トライキャスター)の販売を開始。以降、AV over IP製品の取り扱いを増やしている。

 そんなアスクの業務用映像機器専門部署「アスク・エムイー」が運営するYouTubeチャンネル「ASK M&E VIDEO CHANNEL」が話題だ。配信の拠点としているのが、自社内に立ち上げたショールーム兼配信スタジオ「エースタ」。ここでは、米NETGEAR(ネットギア)のスイッチを活用して内部配線のほとんどをAV over IPでつなぎ、社員自らが番組の企画、演出、出演、機材操作、配信を担当している。

 今回は多くの映像システムの立ち上げや機材納入の実績を持つアスク・エムイーに、エースタ誕生のいきさつや、より現場に近いところから日本のAV over IP事情を伺ってみる。話を聞いたのは、アスク M&E事業部(アスク・エムイー)テクニカルチームの細谷 勇太さんと、PRマネージャーの南 茉佑子さん。

アスク・エムイー細谷 勇太さん (テクニカルチーム)と南 茉佑子さん(PRマネージャー)

検証スペースを本格的な配信スタジオに変更できたワケ

――まず社内に配信スタジオを作られた経緯をお伺いします。

南氏(以下、敬称略): 現在スタジオがある場所は、かつてスタッフが機材を検証する部屋でした。「お客さまが取り扱い製品に直接触れて、使い勝手を試せる場所があった方が良い」という話が社内から出て、ショールームという形で設備を整えていきました。

 最初は電源とかネットワークとか本当に基礎の部分から変えていって、徐々に照明を入れたりカメラを置いたりしていったのですが、その間にコロナ禍に入りまして……。

 そこから全然外に出ていけない状況になったので、社内のメンバーで番組の制作をやってみないかという話になりました。そこで撮影機材などを拡充して、現在のミニスタジオというか、配信設備を備えたショールームになった形です。

――ミニ、とおっしゃる割には大きいグリーンバックも備えて、かなり本格的なスタジオになっていますね。

南: 当社の取り扱い製品にNewTekのTriCasterというIP対応のライブスイッチャーがあったことと、18年からバーチャル背景と、人物や小道具などの実写をリアルタイムに合成するバーチャルプロダクションシステム Zero Density Reality の取り扱いを開始したこともあり、そのような製品の検証ができる環境を整える必要がありました。そのため、「グリーンバックは必要だよね」と導入を決めました。

撮影セットにはデジタルグリーンの背景を設置している

細谷氏(以下、敬称略): 結線は、AV over IP未対応の一部機材以外の全てがIP接続可能で、グリーンバック側とオペレーション卓側にそれぞれNETGEARのスイッチを置いて、どちらか近い方に機材をつなげば動くようにしています。

グリーンバック側とオペレーション卓側それぞれにNETGEARのスイッチを配置

――どのような方が機材を見にエースタを訪れるのですか。

南: 放送局にお勤めの方や映画、CM制作会社の方など、プロフェッショナルとして映像制作に携わっている方が多いです。ただAV over IP対応の製品を増やしたおかげもあって、最近では映像が使えるところであれば、どこからでもお問い合わせを頂くようになりました。

 特にコロナ禍では、びっくりするほど異なる業界からお問い合わせが入っていました。医療機関や学校、塾に配信用の機材を入れたいといった要望もありました。空き部屋が多くなってしまったホテルから「1部屋を配信スタジオにしたい」という声もありましたね。新たな需要として、ウエディング業界でもオンライン配信が増えたようで、取り扱いのソフトウェアライブスイッチャーが導入されたケースもありました。

――訪れる方の多くは、AV over IPが入り口になっているのでしょうか。

細谷: 今まで外部に映像配信を依頼していた方々が、コロナ禍で会社に人を呼べなくなったことで、内製する必要が出てきたことも大きいです。最初は安価なスイッチャーを導入して始めるのですが、自分たちのブランディングのためにもっと進んだことがやりたいと考え始め、「TriCasterってどんなことができるのですか?」と扉をたたくお客さまが増えました。

エースタのメインスイッチャー「TriCaster TC2 Elite」

 その他は、AV over IPに興味があるものの実際に使うためにはどうすればよいのか、使ったらどんなことができるのかといった悩みを抱えるお客さまも結構多く来られますね。

――そのような方は、なぜこれまでの映像信号引き回しではダメだと思われたのでしょうか。

細谷: eスポーツの現場で、「HDMIからSDIに変換して長く引き回すのなら、もうIPでいいじゃん」と考える方が結構いらっしゃるようです。大阪の専門学校さんが TriCaster を導入された事例でも同じ理由を話されていましたが、eスポーツ学科のPC×10台の映像をNDI(ネットワークデバイスインタフェース:NewTekが開発したIP利用におけるライブビデオ制作ワークフロー支援プロトコル)経由で、ちょっと離れた場所に置いたTriCasterへと送っています。

――それは、AV over IPの距離的なメリットに注目されたのでしょうか。

細谷: それもありますが、BNCケーブルのトータルコストを考えると、費用的にも若干お安くなります。

――一般企業からの需要はどうでしょうか。リモート会議が増えたことで、会議システムを見直したいといった声はありますか。

細谷: 今までWeb会議システムを活用してウェビナーを開催していた企業から、もう少し見栄えを良くしたいといったお話を頂くこともあります。「その規模であればTriCasterじゃなくてOBS Studio(オープンソースのソフトウェアライブスイッチャー)でも、グリーンバックを使えば資料を背景に取り込めますよ」といった提案をすることもあります。

AV over IPのハードルを大幅に下げたNETGEARのスイッチ

――ビジネスユースで配信システムを組む際に、使う方の知識やバックグラウンドによってHDMIを使うのかIPを使うのかなどの提案も変えているのでしょうか。

細谷: それもありますが、設置場所の床を開けて配線を通せるか通せないかといった部分でも提案内容が大きく変わります。機材をどこに置いて、カメラはどこに、これじゃHDMIが届かない……みたいな話はたくさんあるので。そうするとAV over IPを使わないとそもそもシステムが組めないといったことがあります。

 NDIのメリットは、映像信号の中に制御信号も含まれているので、PCであろうがTriCasterであろうが、映像を見ながらの制御を1台のデバイスで完結できる点です。

――映像のプロではない方が新しくシステムを組むとなると、AV over IPもそれなりに難しいと思うのですが……。

細谷: そう感じる方も多いと思います。NETGEARさんが展開しているスイッチ「M4250シリーズ」が発表される前までは、「ネットワークを正しく理解している方がスイッチの設定をしてから使ってください」とお願いしていました。ただ、そのような方が一般企業に在籍していることはまれですよね。そのため「カメラはベースバンドでやりましょう」「データの軽いPCだけNDIにしませんか」といった“ハイブリッド”を提案することが多かったです。

 それが、22年ごろNETGEARさんに「実はNETGEARとNewTekで開発したスイッチがあるのです!」とのお話を頂いてからは、当社も安心して「NDIをやりたいのならNETGEARのM4250シリーズで!」と提案しています。

――細谷さんは、NETGEARのスイッチのどこに魅力を感じていますか。

細谷: まず驚いたのは、設定が非常に簡単なところです。これまではハブに特別な設定を入れなければ通信できなかったテストを、NDIの設定を入れただけで問題なく通信ができたことに驚きました。そこから個人的に大好きになってしまい「これで行けるなら超楽じゃん!」って。それからは、お客さまにも積極的にお薦めしています。

NDIのテンプレートを備えた「M4250」の設定画面

――普通のスイッチの場合、そのような設定はどう進めるのですか。

細谷: 以前は、ポートを1つ選び、設定のオン/オフを一つずつ全てやっていくか、より複雑なものだとPCでコマンドを入力してそれぞれのポートに割り振る必要がありました。正直、そこまでできる方はなかなかいないと思います。

一般的なスイッチの設定は大変……

南: 22年のInter BEEに出展したときも「ネットワーク周りの設定でつまずいて聞きに来ました」というお客さまが何人かいらっしゃいました。

細谷: 「であればNETGEARのスイッチを使ってみてください」と提案しました(笑)。

 一般企業に勤めるお客さまも、LANケーブルで映像が送れるようになった段階で、映像制作を身近に感じ始めるようになったと思います。まずはできるところからスタートして、慣れてくると「次はこうしたい、もっとこうできないか」と要望が増えていくと思います。AV over IP自体もできることがこれからますます増えていくはずです。今のうちからAV over IPを導入して、お客さまのなじみ深いものになっていけばよいなと考えています。

――ありがとうございました。

 NewTekが開発したNDIはAV over IPの先駆者的プロトコルだ。筆者も以前NDIを使ってみたが、その際はセットアップしたリモートカメラのコントロールはできるが映像が来ないという現象に見舞われた。仕方なく映像だけHDMIでつないだが、今にして思えばスイッチの設定で何かが足りなかったのだろう。あのときNETGEARのスイッチがあればうまくいったはずだ。

 コロナ禍は多くの時間とチャンスを奪っていったが、その間にも立ち止まらず動き続けた人たちが、アフターコロナの今に結果を出しつつある。アスク・エムイーの話からは、AV over IPの世界は「これからの話」ではなく「もう結果を出しつつある」という印象を受けた。

 「今もできているけどもうちょっと……」という案件ほど、AV over IPが頼りになる。ネット配信も次のステップに進むのであれば、AV over IPの導入は避けて通れないだろう。

エースタのご紹介(アスク・エムイーYouTubeチャンネル)

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提供:ネットギアジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2023年11月12日