瀬尾CTOが語る、ZOZOの「今」 プロダクト、ユーザー、仲間を“愛”する開発組織のつくり方

» 2024年03月29日 10時00分 公開
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 技術力によってファッション業界のインフラになることを目指すZOZO。現在は、経営戦略である「MORE FASHION × FASHION TECH 〜 ワクワクできる『似合う』を届ける 〜」の具現化やファッションEC「ZOZOTOWN」のリプレイスなどに注力している。

 具体的にどのような取り組みをしているのか。2023年6月、ZOZO 執行役員 兼 CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)に就任した瀬尾直利氏への取材を通し、“MORE FASHION × FASHION TECH”の現在地を探った。

photo 瀬尾直利氏(ZOZO 執行役員 兼 CTO):ディー・エヌ・エーなどを経て、19年1月ZOZOテクノロジーズに入社。ZOZOに再編後、22年4月に技術部門トップのVPoEに就任。23年6月から現職。技術本部やブランドソリューション開発本部、情報セキュリティ・IT統括本部、計測プラットフォーム開発本部を管掌する

エンジニアは「頼られる存在」 ZOZOにとって開発組織とは

――VPoE※1からCTOへと職務が変わり、役割はどのように変化しましたか。
※1:Vice President of Engineer:技術部門のマネジメント責任者。

瀬尾氏(以下、敬称略): 一番大きな変化は、以前から出席していた経営会議に加え、取締役会にも出席するようになって“経営”に触れる機会が増えたことです。VPoEのときは「直近1年、何をするか」を考えることが多かったのですが、現在は「3〜5年後を見据えて、何をするか」――長いスパンで経営戦略を踏まえて、開発状況を検討することが増えました。

 執行役員として複数の組織をまとめて見る中で、組織同士のシナジーを生み出しやすくなったことも変化の一つです。部門間で重なり合っている業務があればどちらかに移管してエンジニアの業務効率化や生産性向上を図る。またはプロダクトやサービスに関わる開発組織とAIを開発している技術本部、両方のリソースを適切にコントロールする――など、全体を俯瞰(ふかん)することで組織全体の開発体制を最適化しやすくなりました。

――エンジニアであるご自身が執行役員を務めることに、どのような意味を感じていますか。

瀬尾: ZOZOで何か新しいことに取り組む際には、おのずとITが絡みます。そのため、まずはエンジニアに相談が来て案件が進行するという流れが社内では定着しています。CTOになってからは、新規事業など重要な案件の相談が、どんどん私のところに届くようになりました。

 以前からZOZOの中でエンジニアは「頼られる存在」でした。その中で、私が新たにCTOとして経営会議や取締役会で発言できるようになったことは、開発組織やエンジニアのプレゼンスの高さにつながると考えています。忙しい日々ではありますが、重要な職責を担っているという実感があります。

新プロジェクトと既存プロダクトの進化 「ワクワクできる『似合う』を届ける」ために 

――経営戦略を実現するため、どのようなプロジェクトを先導されていますか。

瀬尾: 22年5月、経営戦略に新たに追加した「ワクワクできる『似合う』を届ける」を実現するための開発に、多くのエンジニアが携わっています。

 例を挙げると、実店舗として「niaulab by ZOZO(似合うラボ)」を表参道に展開しています。ここでは、コーディネートに関する悩みを持つユーザーが、ZOZOのAIとプロのスタイリストによる“超パーソナルなスタイリング”を無料で体験することができます。今は人手をかけているこのような“似合う”を届けるサービスを、当社が保有するデータを活用してZOZOのサービス上で実現することを目指しています。

――保有するデータとは、具体的にどのようなものでしょうか。

瀬尾: 例えばZOZOTOWNで使っている服のサイズデータなどですね。服のサイズはブランドによって計測の方法が違う場合があります。そこで、ZOZOは計測の統一基準を作って商品一点一点を手作業で計り直してZOZOTOWNなどのプロダクトに反映しています。サービスは終了しましたが、採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」(17年発表)のデータも活用しています。当社が持つこうした独自のデータを生かすことで、ユーザーの体型に合ったコーディネート――“似合う”を届けたいと考えています。

 AIは日進月歩ですが、学習データがなければ何にも生かせません。ZOZOならではのデータの蓄積が本プロジェクトの価値を上げ、結果としてユーザー体験を向上させるという企業の強みになるはずです。

――瀬尾さんはCTOとしてZOZOTOWNのリプレイスにも取り組まれていますね。

瀬尾: ZOZOTOWNは、04年にサービスを開始してから技術スタックやアーキテクチャを大きく変えずに運営してきました。しかし、利用してきたプログラミング言語は現在、開発元が利用を非推奨としています。そのため、将来的には稼働できる環境がなくなり「ZOZOTOWNが停止してしまう」経営リスクがあると考えています。そのリスクを回避するため、17年にリプレイスプロジェクトがスタートしました。

 ZOZOTOWNは巨大プロダクトです。リプレイスに着手し始めた当初は、計画を練ろうにもシステムの全容が見えず苦労しました。年数を重ねて少しずつ開発を進めてきて、ようやく完了までの計画が立つところにたどり着きました。ユーザーに見えるフロントの部分は、25年をめどにリプレイスを完了させる予定です。

――リプレイスにおける開発体制と、主な取り組みをお聞かせください。

瀬尾: まず体制についてですが、以前は一つの大きなシステムを40人ほどで開発していました。しかし作業が衝突することもあって、効率的ではありませんでした。そこで現在は大きなシステムをサブシステム(マイクロサービス)に小分けして、複数のチームに分かれて並行開発できる体制を整えました。

 取り組みについては、クラウドへの移行が挙げられます。今までZOZOTOWNはオンプレミスで動かしてきました。セール時期にはアクセスが集中して大きな負荷がかかりますが、柔軟にサーバを増強することができず、エラーが発生してしまうことがありました。それをクラウドでの運用に変えて、柔軟に負荷対策できるシステムにする作業を進めています。

 リプレイスに際しては新しい技術スタックで開発しているので、勉強会や研修会も開催しています。個の作業に閉じず、皆が一丸となって取り組める環境づくりを意識しています。

柔軟な「素人発想」と、技術力を生かした「玄人実行」

――瀬尾さんは以前から、ビジネス、開発、運用の3部門がスピーディーに連携できる機動力の高い組織を目指して「BizDevOps」推進を掲げていました。現在の状況をお聞かせください。

瀬尾: 最近では、BizDevOpsは当たり前という感覚になったと考えています。開発部門と事業部門はすぐ隣といったイメージで、近い距離を保てています。エンジニアと事業部門担当者が、お互いを理解し合うようになったと言えば分かりやすいでしょうか。

 その結果、開発案件が事業部門から出てきた際により良い優先順位付けができるようになりました。今思えば、以前は開発側が効率を重視して優先順位を決めていたところがありました。それが現在は、事業部門だけではなくエンジニアも「この順番で着手した方が売り上げが立つ」といった経営面を考慮するようになりました。事業と開発両方の目線で、良いバランスが取れていると思います。

――CTOとして、今後ZOZOの開発組織をどう進化させたいと考えていますか。

瀬尾: 技術力をもっと高めて、より難しいことも実行できる組織にしていきたいですね。カーネギーメロン大学でロボティクス研究所を率いた金出武雄教授の著書に「素人発想、玄人実行」という言葉が使われています。独創的なことをやろうと思ったときは、遊び心のある柔軟な発想(素人発想)を持って、玄人の力で実現(玄人実行)することが必要だという意味です。

 玄人と言えるまで技術力を磨くことは簡単ではありません。私自身、どんなオーダーに対しても「できます」と言えるまでには10年ほどかかりました。

 例えば使用するライブラリにバグがあった場合、知識や技術力がなければ利用を諦めたり、ライブラリ作者にバグ修正を頼ったりする選択しか取れません。ライブラリのソースコードを読みバグの原因を探って、自ら修正できるエンジニアは選択の幅が広がり高い実行能力を持てます。玄人実行には、このような「困難を乗り越え実現してみせる」ことが必要です。

 社内ではOSS活動※2を推進しています。今後はパフォーマンスチューニングコンテスト「ISUCON(イスコン)」※3のような、中級者以上のエンジニア向けの研修を社内で用意することも検討しています。こういった取り組みを通して、胸を張って「自分は玄人だ」と言えるエンジニアをZOZOの開発組織に増やしたいですね。

※2:オープンソースソフトウェア(Open Source Software)の開発や保守に貢献するための活動。
※3:「Iikanjini Speed Up Contest(いい感じに・スピードアップ・コンテスト)」の略。Webシステムの高速化を競うコンテスト。

「愛によって」自然と育まれる、プロダクト思考とユーザー視点

――技術を存分に磨ける環境は、エンジニアにとって大きな魅力と言えそうです。

瀬尾: 技術面もそうですが、ZOZOは「チームで一緒にものを作りたい」と考えるエンジニアにとっては非常に魅力的な環境だと思います。メンバーにも協調性があって共感能力の高いエンジニアが目立ちます。

――この先、どのような人と働きたいと考えますか。

瀬尾: やはり当社が掲げているZOZOらしさ――「ソウゾウのナナメウエ」「日々進歩」「愛」を持てるかどうかは重視していますね。ソウゾウのナナメウエは、他社がやっていない創造的なものや革新的なものをどんどん作っていくこと。日々進歩は、現状に満足せずに常に前へと進めること。愛は、プロダクトやユーザー、仲間を愛することを指します。私個人としては「愛」が最もZOZOらしさを表現していると思います。

photo 同時取材をした橋本祐樹氏(左、ZOZO 執行役員 兼 ZOZOTOWN CPO)と瀬尾氏(右)。橋本氏の取材記事はこちらを参照

 エンジニアとして自分の成長を目指すことは、もちろん大切です。しかしそれ以上に、ユーザーに価値を届けて喜んでもらえることに楽しみを見いだせる。また愛によってプロダクト思考とユーザー視点を自然と持てるエンジニアは貴重な存在です。ZOZOらしさに共感できる人、そして玄人の実行力をもって新しいことにチャレンジしたい人にとってZOZOはこれ以上ない活躍フィールドになるのではないでしょうか。

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