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脳卒中後、なぜ後遺症が残るのか? 脳が修復する仕組み解明 科学大などがNatureで発表 新薬をマウスに投与で改善
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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
東京科学大学などに所属する研究者らがNatureで発表した論文「Sustaining microglial reparative function enhances stroke recovery」は、 脳卒中などによって損傷した脳組織が自らを修復するメカニズムを解明し、その回復力を持続させる新たな薬の開発に成功した研究報告だ。
壊れた脳は元には戻らないというこれまでの常識を覆し、深刻な後遺症をなくす治療法の確立につながる可能性があるという。
脳卒中を発症すると、脳の血管が詰まったり破れたりすることで神経細胞が死滅し、運動麻痺や言語障害などが生じる。リハビリによって失われた脳機能をある程度は取り戻すことができるが、発症からおよそ2カ月が経過すると脳に本来備わっている自然な回復力が失われ、症状が後遺症として残ってしまうのが課題であった。
研究チームは、脳内で環境維持や免疫を担う「ミクログリア」に着目し、マウスを使った実験を通して脳が回復力を失う原因を調べた。脳がダメージを受けると、ミクログリアは転写因子YY1の働きで神経の修復を促す栄養因子(IGF1など)を分泌し、壊れた脳のネットワークを治そうとする。
ところが、発症から1カ月程度経つと、ミクログリアの内部に「ZFP384」というタンパク質が作られるようになる。このZFP384が、修復に必要な栄養因子の産生を止めてしまうため、まだ回復の途中であるにもかかわらず、脳の修復作業が強制終了させられていたことが判明した。
さらに研究チームは、このマウスで見つかった現象が人間にも当てはまるのかを検証。脳梗塞で亡くなった患者の脳組織を解析したところ、人間でも発症から時間が経つにつれて修復のための栄養因子が減少し、代わりに「ZNF384」(マウスのZFP384に相当)というタンパク質が増えていることが分かった。マウスと同様の変化が観察されたと考えられる。
このメカニズムに基づき、研究チームは回復を止めてしまうZFP384の働きだけをピンポイントで抑え込む薬「アンチセンス核酸」(ASO-Zfp384)を開発。脳梗塞を発症したマウスにこの薬を投与したところ、ミクログリアが長期間にわたって神経を修復するための栄養因子を作り続けるようになり、脳梗塞後の神経症状が改善することが確認された。
また、発症から1週間から1カ月後という、実際の患者が集中治療を終えてリハビリテーションを本格化させる時期に薬を投与しても十分な効果が得られた。
Source and Image Credits: Tsuyama, J., Sakai, S., Kurabayashi, K. et al. Sustaining microglial reparative function enhances stroke recovery. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10480-0
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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
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