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「無駄な事務作業」はなぜ増え続けるのか? “善意”からタスクが生まれるメカニズム、米MITが論文発表
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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
米MITに所属する研究者らがPNASで発表した論文「What leads to administrative bloat? A dynamic model of administrative cost and waste」は、組織の無駄を増幅させるメカニズムを解明した研究報告だ。
企業や大学などの組織において、ルールの増加に伴う管理業務のコストや無駄が膨れ上がる管理業務の肥大化が深刻な問題となっている。
従来、こうした無駄の増加は、管理職の権力拡大欲や外部からの規制強化が原因だとされてきた。しかし本研究は、悪意のない“善意による問題解決”こそが、結果的に非効率を生み出していることを明らかにした。
組織で何らかの問題が発生すると、再発を防ぐために新しいプロセス(規則や手順)を作成する。導入された当初、そのプロセスは確かに役立つ。しかし、時代や環境の変化とともに問題の性質が変わると、かつてのプロセスは陳腐化し、時代遅れになる。
厄介なことに、不要になったルールは自動的に消滅することはない。誰かが時間と労力をかけて削除しない限り、確認作業や手続きの手間として、組織のエネルギーを無駄に消費し続ける。
研究チームは、このプロセスの作成→陳腐化→削除というサイクルを分析し、組織の長期的な状態が2つに分かれることを発見した。1つはプロセスの数が適度なところで落ち着く持続可能な状態と、もう1つはリソースの限界まで無駄が膨れ上がる制御不能な肥大化である。
重要なのは、ルールを作る傾向が一定のラインを超えて増やしすぎると、いくら後から削除に努めても肥大化を食い止められなくなること。特に現代のように環境変化が激しい時代は、ルールが陳腐化するスピードも速いため、肥大化の限界を突破するリスクが高まってしまう。だからこそ削除を頑張る以上に、そもそもルールを作りすぎない方が根本的解決につながる。
では、すでに管理業務が肥大化しつつある組織はどう対応すべきか。シミュレーションの結果、やってはいけない失敗する対策がいくつか示されている。
例えば、ルールの新設を一時的に強く絞り込み、同時に削除を一気に推し進めるといった短期集中型の引き締め策。あるいは、中身を確認せずにとにかくプロセスを半分に減らすといった無差別な削減。こうした対策はいずれも一時的な効果しか持たず、施策をやめればやがて元のルールだらけの状態にリバウンドしてしまう。
さらに、管理業務を後回しにして本来の仕事(生産活動)に集中するという方針も、直感に反して危険だ。目の前の仕事を優先するあまり、古いルールを見直して掃除する人がいなくなり、結果として無駄なプロセスがより蓄積してしまうからだ。
真の解決策は、組織の優先順位を根本から、そして一時的にではなく恒久的に変えることにある。具体的には、2つの取り組みが車の両輪となる。1つは、ルールを作る傾向そのものを抑えること。あらゆる小さな問題に逐一ルールを設けるのをやめ、ある程度のトラブルはその都度の対応で許容する柔軟さを持つことだ。
もう1つは、どのルールが今も有用で、どれがすでに役目を終えたのかを見極める力に投資し、陳腐化したものを定期的に削除する地道な努力を続けること。一時的な締め付けや、中身を問わない思いつきの削減ではなく、この2つを恒久的に組織へ組み込むことこそが、肥大化から抜け出す道だと示している。
この理屈は会社組織だけでなく、古い法律が積み重なる法体系、増え続ける規制、誰も消さない古いコードが溜まるソフトウェアなど、役目を終えた要素が溜まっていくあらゆるシステムに当てはまる可能性があるとしている。
Source and Image Credits: V.C. Yang, & L. Grenier, What leads to administrative bloat? A dynamic model of administrative cost and waste, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 123 (22) e2527106123, https://doi.org/10.1073/pnas.2527106123 (2026).
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