警察官を装って電話をかけ、逮捕状や家宅捜索などをちらつかせて現金をだまし取る「偽警察官詐欺」の被害が増えている。特殊詐欺は高齢者が被害に遭うイメージが強いが、この手口は主な被害者層が現役世代という特徴がある。だまし方も巧妙化しており、警察は国際電話ブロックなどの対策を呼び掛けている。
「郵便局です。あなた宛ての小包があります」
実際に警視庁管内で発生した偽警察官詐欺事件はこんな文言で始まった。警察のけの字もないが、これが犯人側の狙いだ。郵便局員役が「小包に違法な物が入っている」と続け、「警察官」に電話を代わった。「あなたを容疑者とする逮捕状が出ている」。たたみかける「警察官」に被害者は動転した。
こうした手口は2003年ごろ、振り込め詐欺が台頭した当初からあったといわれる。捜査幹部によると、24年夏ごろから被害が急増。警察庁によると、25年は全国で1万1014件が発生し、被害額は約1005億円に達した。
今年に入って増えているのが、民間企業や公的機関を名乗る犯人と警察官役の犯人による「2段階」の手口だ。郵便配達など身近な用件で被害者の気を引き、「あなたの口座が犯罪に使われている可能性がある。捜査のため、口座のお金を警察の口座に振り込んでほしい」などの言葉で詐欺に結び付けるという巧妙さから被害が拡大している、と警視庁の捜査幹部はみる。
被害者像を分析すると、目を引くのは、若年層の多さだ。今年1〜5月の警視庁管内の被害者を年齢層別に見ると、20代以下が約21%、30代が約22%を占める。40代も約22%に上り、捜査幹部は「無実である以上は潔白を証明したい、という気持ちに乗じた犯行が多いのではないか」と分析している。
詐欺グループは「警察」という偽の立場を最大限に利用している。被害者に金を振り込ませる際に「紙幣番号を照合することで、事件との関わりを調べる」と欺く手口も過去にあった。「オンラインだから紙幣番号など関係ないのに、被害者も動揺して信じてしまう」(捜査幹部)。「周りの人に話せば、捜査の守秘義務に反する」と口止めし、犯行発覚を防ぐのも詐欺グループの常套(じょうとう)手段だ。
では対策はどうすればよいのか。着目すべきは詐欺グループによる国際電話の悪用だ。摘発の目を逃れるために海外に犯行拠点を設けることが多く、海外で末尾が「0110」の電話番号を入手し、警察を装うグループも存在する。
警視庁は国際電話番号や、詐欺での使用を把握した電話番号の着信をブロックする機能を搭載した防犯アプリ「デジポリス」を公開している。
固定電話に関しては国際電話不取扱受付センター(0120.210.364)でブロックの手続きが可能だ。警察庁はやり方が分からない場合には最寄りの警察署へ問い合わせるよう呼び掛けている。
ほかにも捜査幹部は「覚えていれば被害を防げる」というポイントを3点挙げる。
一つは「SNSやビデオ通話で警察官が連絡を取ることはない」という点だ。加えて「画面越しに警察手帳や逮捕状を見せることもありえない」とも強調する。そして何よりも大事なのはお金を振り込んでしまわないこと。捜査幹部は「警察が口座のお金を振り込ませることなどありえない」と強く訴えている。(内田優作)
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