ユビキタス化に立ちはだかる壁とは――富士通・黒川社長
ユビキタス社会になれば、ネットワークは拡大し、“見える”範囲も広がる。しかし、現状ではユビキタス技術に投資する価値が経営者に“見えて”いない――。富士通の黒川博昭社長は7月7日、「富士通ソリューションフォーラム2004」の基調講演でそう語った。
「ネットワークは、車や家電などにも広がる。(RFIDを導入することで)工場の稼働状況、生鮮食品の生産地など、目で見える範囲も広がる」と黒川社長。基調講演の参加者は年配のビジネスマンが大半。幹部クラスと思われる900人ほどの聴衆に向け、企業経営の改善にはユビキタス技術を導入し、問題点を把握する必要があると呼びかけた。
ただし、ユビキタス社会へ移行するには、解決すべき課題もある。経営者は社内LANといった既存ネットワークの有効性を認め、効率化を進めるために投資が必要だと感じている。しかし、ユビキタス技術に対する投資効果、ユビキタス技術の先行きなどが「明確に見えていない」という点だ。
黒川社長は、まず投資効率を分かりやすく説明するため、「コンサルティング型の販売戦略」を採る考えだ。IT技術の導入が経営効率に与える因果関係を顧客に伝えていくという。さらに、最新のユビキタス技術に強い富士通研究所などとの連携も強化し、担当部署の人員も増やす計画だ。
ユビキタス社会では従来型の人と人の関係中心でつくるネットワークに、モノが加わる。携帯電話、PDAだけではなく、デジタル家電、車載マシンなども対象になるわけだ。各機器ごとに個別の状況に対応していては「間尺に合わない。シンプルでスピーディーなアプローチが重要だ」。
例えば、どんな機器からでも自在にアクセスできるよう、コンテンツを統合する必要があるという。
富士通は同日、国立遺伝学研究所の次世代DNAデータベースを共同開発すると発表している。黒川社長は、基盤にXMLというオープン標準を使うことで、ユーザーの環境を問わずアクセスしやすくなるとアピールした。XMLは従来使われてきたRDB(リレーショナル・データベース)に比べ、構造がシンプルでキーワードを探しやすい。データベースエンジンとの相性のよさもあり、12分かかっていた検索時間を、5秒にまで縮められたという。
ただしネットワークが拡大すれば、企業が処理するデータ量も上昇し、データ処理コストは増加する。またデータ処理量が増えれば、システムダウンによる損失額も増えるだろうと警告する。「現時点で証券会社のシステムがダウンすると、1時間で7億7400万円の損失」。安定運用もますます欠かせない。
データ処理費用を抑えるためには、「インフラの徹底的な効率化が必要」。分散したサーバ、ストレージなどを統合し、集中管理体制を築く必要がある。安定運用には堅牢なシステムが必要。同社の「TRIOLE」などでこうしたニーズに応えていくとした。
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