Googleの言う「オープン性」の真の意味とは?
GoogleはAndroidやChromeなど、多数のソフトウェアをオープンソースにしている。だが同社の収益の源泉である検索・広告プラットフォームがクローズドなのはなぜだろうか。
米Googleで製品管理を担当するジョナサン・ローゼンバーグ上級副社長の「The Meaning of Open」(オープンの意味)という記事を読んでいただきたい。これは素晴らしい論文だ。しかし読むに当たっては、多少の予備知識も必要だ。
まず、Googleは多数のソフトウェアをオープンソースにしている。ローゼンバーグ氏によると、Googleは世界最大のオープンソースコントリビューターであり、800以上のプロジェクトを通じて全部で2000万行以上のコードをオープンソースとして提供しているという。
Googleは、Android(モバイルOS)、Chrome(Webブラウザ)、Chrome OS、Google Wave、Google Gearsなど数多くの技術に関連したコードをApacheに寄贈した(ただしAndroidついては、Googleはもう少しオープンであるべきだという指摘もある)。
また同社は12月4日にAppJetを買収し、その2週間後にはAppJetのスタッフがEtherPadのコードをオープンソース化するのを支援した。
つまりGoogleはコードをオープンソース化する方法については、誰にも劣らずよく知っているというわけだ。だが同社はシステムをクローズドにする方法も、誰にも劣らずよく知っている。同社の検索・広告プラットフォームがクローズドであるのもそのためだ。これらのプラットフォームがGoogleの収益の源泉であるというのは偶然だろうか。ローゼンバーグ氏は次のように記している。
われわれは開発ツール用のコードはオープンにする方針だが、Googleのすべての製品がオープンソースになるわけではない。われわれの目標は、インターネットをオープンなものにすることだ。それは選択肢の拡大と競争の促進につながり、ユーザーと開発者が縛られるのを防ぐことができる。コードをオープンにすることがこういった目標に貢献せず、ユーザーに迷惑を与えるケースも多い(特に当社の検索製品と広告製品の場合)。検索・広告市場では、乗り換えコストが非常に低いこともあって、既に激しい競争になっている。このためユーザーと広告主には既に多くの選択肢があり、彼らは縛られていない。言うまでもなく、これらのシステムをオープンにすれば、人々がわれわれのアルゴリズムを悪用して検索や広告品質のランキングを操作することが可能になり、当社製品の品質低下を招く恐れがある。
Googleが検索・広告プラットフォームをクローズドにしている理由はほかにもある。Googleがこれらのプラットフォームをオープンソースにするというリスクを決して冒さないのは、同社の最大のドル箱を壊すことになるからだ。
資本主義という視点で見れば、Googleが年間200億ドルを超える巨額の収入を稼ぐことを可能にしているのは、クローズドでプロプライエタリな検索・広告技術なのだ。
「競争は1クリックの差」といったまやかしに惑わされてはいけない。
5年分の電子メールやファイルをGoogleのGmailに置いているユーザーが、そんなことを信じるだろうか。確かに、Data Liberation Frontはユーザーがデータをエクスポートできるようにしているが、Googleがユーザーのデータを締め出しでもしない限り、誰がそんなことをするだろう。Googleの使い勝手の良さと無償のWebサービスは恐ろしいほど魅力的だ。ユーザーがこの検索とWebサービスのリーダーと縁を切るのは、たやすいことではない。
オープンでフリーな製品(AndroidとChrome OS)は、Googleに収益をもたらさない。AndroidとChrome OSは、Googleが検索と広告市場での影響力を拡大するためのプラットフォームにすぎないのだ。簡単に言えば、これがGoogleのビジネスモデルなのだ。
AndroidなどのオープンソースプロジェクトはGoogleに直接的に収益をもたらさないが、同社に収益をもたらす場所にユーザーを導くと言っても差し支えないだろう。このことはGoogleを理解する上での基本だ。
ローゼンバーグ氏の記事に対する米Gartnerのブライアン・プレンティス氏の指摘は興味深い。Techmemeサイトでは、このトピックに関する批判や意見が紹介されている。
さらにローゼンバーグ氏は、Googleが収集するユーザーに関するデータについてもオープンであることを目指す同社の取り組みを説明している。検索エンジンをはじめとするWebサービスを絶えず修正・改善するために、Googleはユーザーのデータを必要としていると同氏は強調する。
Googleは多くの情報の扱いをユーザーの裁量にゆだねており、個人的には、この面での同社の取り組みだけは高く評価できる。しかしプライバシー擁護論者たちは、検索エンジンがWebリクエスト、cookie、行動ターゲティング広告などを通じてユーザーのWeb利用傾向をどのように把握しているのかを、ユーザーがGoogle Dashboard(Googleアカウントに関連したアプリケーションデータを集約する)のようなサービスを利用して確認できることが望ましいと考えている。
Googleは来年、データ収集に関して情報開示の取り組みを強化する必要があるだろうか。あなたはどう考えるだろうか。
関連キーワード
Google | 検索 | オープンソース | Android | Google Chrome | Chrome OS | オープンソース化 | Data Liberation | 行動ターゲティング | ビジネスモデル | Google Wave | Google Gears | プロプライエタリ
関連記事
- Google「競争とオープン性の6原則」発表 反論の声も
Googleは「競争とオープン性」を推進していると主張し、「他社の競争力強化を支援する」などの6原則を掲げている。 - Google、Chrome OSを初披露――コードをオープンソースで公開
- Googleが買収したAppJet、EtherPadをオープンソース化へ
- Google、認証プロトコル強化に向け、OpenID理事のスマー氏を採用
- 「Android」のオープン性で対立するGoogleと開発者
- Google、ユーザーデータの完全開放を目指すサイト「Data Liberation」立ち上げ
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.