著作権延長法がなければ――パブリックドメイン研究センターが文化的損害を嘆く
「ミッキーマウス保護法」とも呼ばれる米著作権延長法がなければ、2010年1月1日にアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」など多数の有名作品がパブリックドメインになっていた。
米著作権延長法がなければ、2010年1月1日に、007シリーズの「カジノ・ロワイヤル」やレイ・ブラッドベリの「華氏451度」はパブリックドメインになっていたのに――米デューク大学のパブリックドメイン研究センターはこのように嘆いている。
米著作権延長法は1978年に施行され、それまで「発行後56年間(最初に28年、更新すればさらに28年)」だった著作権保護期間を「作家の死後70年間」に延長した(法人著作の場合は発行後95年間)。この法律は、ミッキーマウスの著作権切れを防ごうとするWalt Disneyのロビー活動によるものだったと言われており、「ミッキーマウス保護法」との俗称もある。
この法律がなかった場合、1953年に出版された作品は2010年1月1日に著作権保護が終了していた。同センターはブログで、同法がなければ、今年多数の有名な作品がパブリックドメインになっていたと述べている。
例えば、007が登場するイアン・フレミングのスパイ小説「カジノ・ロワイヤル」はそうした作品の1つだ。しかし現行法では、発行から95年後の2049年までパブリックドメイン入りを待たなければならない。アガサ・クリスティの「ポケットにライ麦を」、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」、C・S・ルイスのナルニア国ものがたり第4作「銀のいす」、アイザック・アシモフの「第二ファウンデーション」、アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」などもそうだ。
このほか、Natureに掲載されたジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックのDNA二重らせん構造に関する論文、マリリン・モンローが表紙を飾ったPlayboy創刊号、映画ではWalt Disneyの「ピーターパン」、H・G・ウェルズの「宇宙戦争」、マーロン・ブランド出演の「ジュリアス・シーザー」などが挙げられる。
パブリックドメイン研究センターは、85%の作者は発行から28年経過後に著作権を更新していないため、「米著作権延長法がなかったら、1981年の作品の最大85%が2010年1月1日にパブリックドメインになっていただろう」としている。「これがわれわれのアーカイブ、図書館、学校、文化にどんな意味を持つのか想像してほしい。これらの作品はあと数十年、もしかしたら次の世紀まで著作権で保護されるかもしれない。そのほとんどは孤児作品で、購入もできず、文化的研究もできない状態になり、著作権者に恩恵もないだろう。それによる文化的な損害を考えてみてほしい」
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