「ソニーにとって第4のエンターテインメント」──電子書籍端末「Reader」で国内再参入
電子書籍は音楽、映画、ゲームに続く第4のエンターテインメント──ソニーが「Reader」とともに国内の電子書籍事業に再参入。国内シェア50%以上を目指し、「ハードでもコンテンツでも利益を出す」考えだ。
「ソニーにとって音楽、映画、ゲームに続く第4のエンターテインメントとして、電子書籍を日本で展開する」──ソニーは11月25日に電子書籍専用端末「Reader」2機種の国内発売を発表し、発売から1年で30万台を販売する目標を掲げた。米法人でReader事業を担当する野口不二夫シニアバイスプレジデントは「電子書籍は文化と密接につながっている。作り手と読者のことを考えたビジネスをしていかなければならない」と述べた。
発売するのは、電子ペーパー部のサイズが6インチの「PRS-650」(Touch Edition)と、5インチの「PRS-350」(Pocket Edition)の2機種。価格はオープンで、実売予想価格はPRS-650が2万5000円前後、PRS-350が2万円前後。
米国では、内蔵3G通信機能により直接コンテンツを購入できる「PRS-950」(Daily Edition)も販売しているが、日本での販売は未定。野口氏は「日本でも早くスタートしたいと、2機種から発売することにした。3Gのビジネスモデルが日本でも成り立つのかどうか真剣に検討はしている」と話した。
「ハードでもコンテンツでも利益を出す」
ソニーの電子書籍への取り組みは1990年の「データディスクマン」にまでさかのぼる。2004年、大手出版社らと共同で電子書籍事業を本格化したが、軌道に乗らず、07年には専用端末「LIBRIe」(リブリエ)の生産を打ち切った。
同じ07年の11月、米Amazon.comが専用端末「Kindleを発売すると、米国で市場が急速に立ち上がった。ソニーも追随する形で「Reader」を発売し、09年には専用宇端末市場でシェア30%超を獲得。今年は低価格機の登場などでシェアを落としたもようだが、「端末の評判はいい」(野口氏)と成功しているとの認識だ。「LIBRIeがあったからこそReaderも、他社の端末も出たのだとお思っている」(野口氏)
Readerの展開は日本が14カ国目。満を持しての国内再参入となる今回、米国で発売した2機種を国内向けにローカライズして投入し、同時に電子書籍ストア「Reader Store」を開設。プラットフォーム構築や電子書籍の取次は、KDDI、凸版印刷、朝日新聞社と共同出資する「ブックリスタ」が行うが、ストアはソニーが直接運営。当初は「これからの「正義」の話をしよう」(マイケル・サンデル、早川書房)などベストセラーを含む2万冊をそろえ、さまざまな本との“出合い”を用意するリコメンド機能を充実させる。あくまで「ハードでもコンテンツでも利益を出す」考えだ。
野口氏は「紙がなくなるのではなく、紙の上に電子書籍が新しいバリューとして乗っかってくる」と話し、アナログからデジタルへの移行で新しいビジネスチャンスやユーザー体験が生まれたことをデジタルカメラを例に挙げて説明。その上で、「世界と未来への文化の橋渡しになる」「歴史ある地域文化を尊重していく」──と、出版社などの警戒心に配慮する。一方で「オープン」を強調し、「.book」形式とePub 3.0への対応予定を表明。権利者のチャンス拡大と読者の利便性の両方に配慮していく姿勢をアピールする。
3G/Wi-Fi経由で直接コンテンツを購入できるKindleと異なり、PCで購入して端末に転送する仕組みだが、「ユーザーが購入に使う時間は5〜3%。まずは本を読む時間にいかに使ってもらえるかだ」と、赤外線による光学式タッチパネルなど、ソニーならではの技術を搭載した端末には十分競争力があると自信を見せる。
月に3冊以上の本を読む人は約2000万人と推定し、当面はこうした読書愛好家に対し「1400冊が収納できる“本棚”をポケットに」と売り込んでいく作戦だ。販売は家電量販店ルート中心だが、今後は書店での展開にも意欲を見せる。ソニーマーケティングの栗田伸樹社長は、国内の専用端末市場が2012年に100万台超の規模になるとの見通しを示し、「50%は取っていきたい」としている。
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