世界1000万人に愛される「GitHub」 品質を支える仕事、サポートエンジニアの舞台裏
世界1000万人以上のユーザーを抱えるソースコード共有ツール「GitHub」。個人だけでなく、法人製品の導入が日本でも進んでいる。クライアントと二人三脚でよりよいものを目指して――GitHubの品質を支えるサポートエンジニアの裏側を聞いた。
国内外問わずエンジニアの定番ツールになっているソースコード共有ツール「GitHub」。オープンソース・コミュニティーや個人ベースでの利用だけでなく、法人導入するケースも増えている。6月に設立された米GitHubの日本支社「ギットハブ・ジャパン」は法人向け製品「GitHub Enterprise」の国内展開に注力。日本語のテクニカルサポート強化を進める。
「サービスを提供したら終わりではない。ユーザーの課題を解決し、製品の品質向上にフィードバックするサイクルを速めたい」――アジア太平洋エンタープライズ・サポート・マネージャーを務めるマイケル・ハリスさんに、GitHubを支える「サポートエンジニア」の裏側と魅力を聞いた。
日本語が品質向上の障壁に
GitHubは、2008年に発表されたソフトウェア開発者向けのソースコード共有ツール。使い勝手のよい豊富な機能が人気を呼び、ユーザー数は世界1000万人以上に成長している。デザイナーが画像やデザインファイルのバージョン管理に利用、企業や自治体の公式アカウントがオープンソースを公開――など、活用の幅も広がっている。
数ある製品のうち、日本法人は企業向けのオンプレミスツール「GitHub Enterprise」の国内展開、特に日本語テクニカルサポートの強化に注力する。
GitHub Enterpriseは、国内ではヤフーやクックパッド、LINE、日立システムズなどが導入しており、現状でも日本が米国に次ぐ市場規模だ。とはいえ、現在メニュー画面の表記やサポート対応は英語のみ。ユーザーが利用する際に言語的なハードルがあるだけでなく、問題が起きた時、通訳に時間がかかる分だけ問題解決が遅れてしまう。日本語に対応し、日本人のサポートエンジニアを現地に置くことでより広く市場に受け入れられるのでは――と見込む。
サポートエンジニアは“エンジョイアブルな仕事”
オンプレミスツールであるGitHub Enterpriseは、設定、構築・運用方法が企業ごとに異なるため、クライアントと密に連携し、共同でトラブルの原因を探る必要がある。――これだけ聞くと、サポートエンジニアは骨の折れる仕事に聞こえるが、ハリスさんは「エンジョイアブルな仕事だ」とうれしそうに語る。「クライアントと一緒に課題を解決することは困難を極めるが、フィードバックのサイクルを作り、品質向上に貢献できる」(ハリスさん)
現在、GitHub Enterpriseのサポートエンジニアは15人。緊急の案件に24時間対応するため、世界各地に分散している。アジア太平洋地域を束ねるハリスさんはオーストラリア・メルボルン、そのほかにアメリカ、イギリス、ドイツなど様々。年に3回、実際にサンフランシスコの本社などに集合し、戦略を話し合う場を設ける。
普段の連絡手段はチャットを活用する。ログが残るため、就寝中や食事中に起きた問題も確認できるという。深刻な問題が起きた場合は、GitHubのコミュニケーション機能「issue」を使用。サポートエンジニアだけでなく、製品開発のチームも参加し、バグの解決にあたる。リモートワークを活用するGitHubならではのワークスタイルだ。
こうした体制に日本在住のメンバーを加え、対応をさらに強化する。ハリスさんは「手始めに2人を募集し、将来的には5人ほどに拡大する方針。日本国内のクライアントとのやり取りを円滑化し、フィードバックのサイクルを速めたい」としている。
人の力になる仕事に就きたかった
ハリスさんは2013年にGitHubに入社し、同職に就いたのは今年1月のこと。採用に応募した決め手は「自分の時間を人の力になることに使いたい」だったという。これまでソフトウェア開発などにも携わったが、サポートエンジニアが断然面白いと言う。「ソフトウェア開発だけでは、自分とお客さんの体験に距離が生まれてしまう。親しい立場からお客さんをより良くサポートをするには……と考えることが面白い」(ハリスさん)
GitHubのサポートエンジニアは、マニュアル通りの対応が求められるのではなく、自ら解決策を考えるという意味で、他社と比べると「チャレンジング」だとも語る。「サポートエンジニアであっても『ソフトウェア開発も続けて欲しい』とも言われていて、GitHubの新しい機能を開発・公開することもよくある」(ハリスさん)
字面から「保守・管理」「クレーム対応」がメインと思われがちなサポートエンジニア。だが、GitHub内では、クライアントと二人三脚で課題を解決し、製品の品質を向上、さらには新機能の開発に至るまで“要”を担っている。ハリスさんは「サポートメンバーを軸に『カイゼン』のスピードを速めていきたい」と話す。
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