“日本が知らない”海外のIT
“心の健康”どう管理? 海外で流行する無人ジムや瞑想バス
近年、「マインドフルネス」が注目を集めているように、体だけでなく「心の健康」も気遣う人が増えている。しかし、現代人は忙しい。そんな彼らの悩みに応えるべく、都市部で受けられる「ウェルネスサービス」が進化している。
連載:“日本が知らない”海外のIT
日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。
中国、無人コンビニの次は無人ジム
北京のスタートアップ・Misspaoが2017年にローンチしたのは「無人ジム」。クルマ1台分ほどのスペースに建てられた “スタジオ” の中は、ランニングマシンとテレビ、エアコンのみという、極めてシンプルな設備。
中国では、アリババ子会社が提供する「Alipay」や「WeChat」に搭載されたモバイル決済機能を使った「無人コンビニ」が増えているが、無人ジムのMisspaoもほぼ同じ仕組み。
アプリで近くの無人ジムを予約し、AlipayかWeChatでQRコードを読み込むとドアが解錠。エクササイズ終了後、利用時間に応じて料金(1分あたり2元=3.5円ほど)を支払う。
通常のジムでは年会費などが発生し、会員のランクによって利用時間が制限されたり、毎回利用するごとに使用料を支払ったりするケースもあるが、Misspaoであれば気軽に利用できそうだ。ランニングマシンのみという設備から、毎日ウェイトトレーニングに励むようなコアな層よりも、運動不足を解消したい忙しいビジネスパーソンがターゲットであることが伺える。
ニューヨークでは街中を走りまわる瞑想バス
米ニューヨークのビジネス街で働く人たちに心のトレーニングを提供するのが、バス型のモバイル瞑想スタジオ「BE TIME」。週替りでさまざまなエリアを移動しながら、インストラクター付きの瞑想レッスンを行っている。
1回あたり30分のレッスンに掛かる費用は22ドル(約2400円)で、セッションごとに「Be Calm(落ち着き)」「Be Focuse(集中)」「Be Creative(クリエイティビティ)」などテーマを設定している。レッスンの合間の休憩時間には、レッスンの受講者以外も瞑想スタジオを利用でき、平日の昼休みを使ってBE TIMEのサービスを利用する人も多いようだ。
米Apple共同設立者の1人であるスティーブ・ジョブズ氏は、禅宗の影響から、集中力やクリエイティビティを高めるために瞑想を実践していたといわれるが、米国のエグゼクティブ層に瞑想ファンは多い。
瞑想初心者のためのアプリの数も増え続けており(グローバル調査会社IBISWorldの調査によれば、瞑想業界の市場規模は16年に10億ドル=約1100億円を突破)、今後BE TIMEのようにこれまでとは異なる形で瞑想を世に広めるサービスはまだまだ登場するだろう。
70年代以来、人気再燃「感覚を奪うタンク」
ヨガに続き、数年前から米国で人気なのが「アイソレーションタンク」だ。体がすっぽりと入る大きさのタンクに塩水がためられており、体を浮かべるだけでリラクセーション効果や疲労回復効果があるといわれる。
スピーカーや照明が取りつけられているタンクもあるが、基本的には光や音など外部からの刺激を全て遮断し脳を休めることがアイソレーションタンクの目的(それゆえ英語では「Sense Deprivation Tank(感覚を奪うタンク)」とも呼ばれている)。
そもそもアイソレーションタンク自体は1950年代に考案され、70年代にはクリエイティビティを追求するアーティストに人気を博していたが、衛生上の懸念もあり、以後あまり名前を聞かなくなった。
しかし瞑想やヨガなど、体だけでなく心の健康も気遣う人が増え、人気が再燃。その結果、2011~17年の間にアイソレーションタンクを導入している国内施設の数は85カ所から250カ所以上にまで増えたという。
アイソレーションタンクに関する包括的な調査はまだ行われていないこともあり、効果については賛否両論あるものの、利用者からは「背中の痛みがとれた」や「ストレスが減った」などといった声が聞かれる。
自由と引き換えに増す心の健康維持への責任
テクノロジーは私たちの生活を便利なものにしてくれる一方で、人間の体や心にネガティブな影響を及ぼすこともある。思い当たる節があるかもしれない。
それは統計的にも明らか。ミシガン大学の調査によれば、1日のスクリーンタイム(コンピュータや携帯電話のスクリーンを眺める時間)が5時間以上の子どもは、1時間以下の子どもと比較して2倍以上自分を不幸だと感じやすいとされている。
働き方が多様化する中、自宅で仕事をする人も増えている。すると、これまではオフィスに行き、同僚と顔を合わせることで解消していたストレスを、自分自身でコントロールしなければならない。
今後は、誰に管理されずとも自分で心の健康を保ち、パフォーマンスを維持・向上させられるかどうかが「ビジネススキル」の1つになるのでは。そんな時代の流れを感じさせるトレンドだ。
執筆:行武温
編集:岡徳之(Livit)
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