新型コロナ禍で増えた“悪質出品者”が、Amazonからいなくならない理由(1/2 ページ)
マスクや体温計など新型コロナウイルスの影響で需要が急増している商品に狙いを絞り、相場よりも高い値段で販売したり、商品を送らないといった悪質な販売業者が目立つようになった。中でもトラブルが多く報告されているのがAmazon.co.jp。きっかけは海外出品者の登録基準を緩和したことだった。
読者の中には、何気なく購入しているECサイトでの買い物が、誰が販売し、どこから送られてくるのかを意識していない人も多いだろう。特にAmazonの場合、販売ページのデザインがあまり変わらないため、Amazon自身が全ての商品を販売していると勘違いしている方もいる。しかし、そこには“軒を貸しているだけ“のAmazonマーケットプレイスの商品も並んでいる。
拡大するクロスボーター取引が生んだ隙間
Amazonはこれまで、自身の持つ集客力を他社に提供するAmazonマーケットプレイスを売り上げ拡大の基本戦略としてきた。
Amazonマーケットプレイスは、Amazonの販売の仕組みを他の出品者に提供するものだ。出品者は一定の条件を満たせば、「Fulfillment by Amazon」(FBA)という、商品の保管から注文処理、配送、返品などを提供するサービスが利用可能になり、テレビCMでおなじみの「Prime」マークも取得できる。
この仕組みが当たり、Amazonマーケットプレイスは、Amazonのドル箱ともいえるサービスに成長。今やAmazonの売り上げの半分以上はAmazon自身ではなく、Amazonマーケットプレイスの出品者が上げている。さらにそれを伸ばすため、Amazonは海外の出品者に間口を広げるクロスボーダー取引を拡大してきたが、そこにつけ込む隙ができた。
例えば、以前は日本国内に返品先がなければFBAへの登録は行えなかったが、現在は海外の住所でも登録が可能だ。さらに架空の住所での登録や、契約する会計事務所など実際にオフィスでは使っていない電話番号などでも登録できてしまう。中国では実績のある出品者IDが売買され、いつの間にか無責任な出品者に代わってしまう例も後を絶たない。そして新型コロナ禍の下で粗悪な商品が出回る温床となった。
例えばPSE(電気用品安全法)基準を満たしていないモバイルバッテリーにPSEマークを表示したり、ワイヤレスイヤフォンに記載した容量に満たないバッテリーを内蔵したりは日常茶飯事だ。こうした事例は日本だけではなく、各国で報告され、問題になっている。米国では安全性の低い粗悪玩具が原因で子どもの命が奪われたケースもあった。
出品者の身元確認も緩く、商品のトラブルが起きても連絡が取れないという事例もある。過去にはバッテリーの発火で火事が発生し、マンションの一室が全焼したことがあったが、被害者の代理人を務める弁護士がAmazon.co.jpを通じて売主に連絡を取ろうと試みたものの、結局コンタクトできなかったという。
もちろん、悪質な出品者は一部だ。しかし悪質業者は各国の市場動向に極めて敏感で、売れ筋商品があればすぐに品質を無視した低コストの商品を大量に作り、販売する。新型コロナウィルスの広がりでニーズが高まった商品群を見逃すはずもない。
例えば使い捨てマスクは、普段なら50枚で数百円程度だ。しかし新型コロナ禍の影響で一気に5000円程度にまで上昇。この価格変動に乗じて品質の悪いマスクが出回り、出荷したと通知しながら消費者の元にいつまでたっても届かないという事例が増えた。
問題になる前に別の商材に切り替え
無論、Amazonも手をこまねいているわけではない。出品者による不正は数年前から問題となり、対策を講じてきた。Amazon広報によると、日本法人だけではなく、各国で悪質業者や不正出品を取り締まり、毎週1000万件もの出品が、機械学習によるAIと人間による監視の両方で掲載前に削除されているという。
しかし問題のある出品は減少しても、撲滅できていない。悪質業者はあの手この手で監視の目を潜り抜け、多数の商品を出品している。こうした努力を怠らないのは、うまくいけば大きな利益を得られるからだ。
Amazonに出品されている商品は、毎月2回、1日と15日に売上が集計され、およそ10日後に入金される。短期間に多くの商品を売り、顧客からのクレームで出品が削除される前に入金のタイミングが来ればもうかる。そのために悪質業者は、出品している商品に悪い評価が増え始めると商品を切り替えて時間をかせぐ。
さらに中国からの荷物が新型コロナの影響で遅れ気味であることを逆手に取り(中国からの出品者のうちPrimeマークが付いていない商品は現地からの発送であることが多い)、実際は発送していなくてもシステム上は発送したことにするケースも。Amazonからの入金が行われるまで、クレームを受けるタイミングを引き伸ばしているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
2
「低評価でキャラが悲しげな目」 モスバーガーのアンケートがSNSで話題 運営会社に狙いを聞いた
-
3
「裏垢暴露」のつもりが警察沙汰 暴露系YouTuberが著名VTuberの“なりすまし”に騙されていた
-
4
無印良品、不正アクセスで最大2726万件の会員情報漏えいか 退会済みのユーザーも対象
-
5
松屋のアプリに不正アクセス、約238万件の個人情報が漏えい 停止中の補償も予定
-
6
グッスマ、顧客の2800人のカード番号全16桁+セキュリティコードなど流出か 下4桁は40万枚分
-
7
楽天カード、本人認証をワンタイムパスワードに統一 27年2月から順次
-
8
セガのスマホゲーム「チェンクロ」、セキュリティ問題で1~2カ月の長期メンテ 13年続く長寿タイトル
-
9
総務省、GMO攻撃者サイトの「ブロッキング」を通信各社に要請 報道
-
10
暗号資産取引所Binance、ハッキングで約1兆円の被害か 入出金を全面停止
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR