オリオンビールがオフィス移転で直面した「サーバ置けない問題」 それでも数カ月でクラウド化できたワケ(2/3 ページ)
オフィス移転によってサーバ室が使えなくなる危機に陥ったオリオンビール。社内システムの移行先にはAWSを選んだが、作業時間は残り数カ月。タイムリミットが迫る中、それでも同社がクラウド化できた理由とは。
オリオンビールはもともと、自社サーバで運用していたシステムを全てVMwareの仮想化環境上で稼働しており、移行の技術的なハードルは比較的低いと予想していたという。
しかし既存のシステムを1つ1つ、AWSで正常に稼働するかどうか検証していった結果、幾つかのシステムに関してはクラウド移行を見合わせざるを得なくなった。
「技術的にはほぼ全てのシステムがAWS上で正常に稼働することを確認できたが、一部のシステムは32bit OS上で稼働しており、AWS上で同じ環境を用意するとなるとコストがかさむことが分かった。これらのサーバについては今回のタイミングでの移行を見送り、これまでバックアップシステムを稼働させていた名護工場のサーバルームで引き続ぎ運用していくことにした」(新里さん)
データの移行作業に時間がかかるも、無事に移行完了
こういった事情もあり、オリオンビールはグループウェアや営業支援システム、人事給与システムなど、一部のシステムだけをクラウド移行することに決定。もともとサーバ室にあった7台の物理サーバのうちの3台、仮想サーバ30台のうちの18台を移行したという。
移行に際してはシステムに極力を手を加えず、AWSの移行用ツール「VM Import/Export」を使って、オンプレミスの仮想サーバ環境をAWSのインスタンスへと移した。作業自体はおおむねスムーズに進んだものの、データの移行作業のみ、かなりの工数を要したという。
「オンプレミス環境のデータをAWSの環境に全件コピーした後、休日の空き時間を使って差分データを複数回に分けて転送することでデータの同期を図った。しかしネットワークの帯域幅が狭く、転送スピードが遅かったことから、かなりの時間がかかってしまった」(新里さん)
とはいえ他に大きなトラブルはなく、20年11月には最初に移行したシステムの稼働に成功。21年1月には、AWS移行した全システムの運用を開始できた。
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