Microsoft、Activision Blizzard買収の承認獲得を狙った方針発表
Microsoftは、Windows上のMicrosoft Storeおよびゲーム用次世代マーケットプレイスに適用する“Open App Store Principles”を発表した。Activision Blizzard買収を世界中の規制当局に承認させる狙いだ。
米Microsoftの法務責任者、ブラッド・スミス氏は2月9日(現地時間)、「Adapting ahead of regulation: a principled approach to app stores」(やがて来る規制に対応する──アプリストアに関する新たな原則」と題する公式ブログを公開した。直接的には、米上院司法委員会が3日に可決したアプリストアに関する法案「Open App Markets Act」を含む、世界の規制当局によるアプリストア規制に関するものだが、主旨は1月に発表した米Activision Blizzardの687億ドルの買収に対する規制当局の懸念を和らげることにある。
同社はこの大規模買収を発表した際、「取引が完了すると、MicrosoftはTencentとソニーに次ぐ、売上高で世界第3位のゲーム企業になる」とし、Activision Blizzardのゲームの多くをXbox Game Passに追加することで、「Game Passをゲーム業界で最も魅力的で多様なゲームサービスの1つにする」と語った。Xbox Game Passの加入者数は現在、2500万人だ。
スミス氏は「Windows上のMicrosoft Storeおよびゲーム用次世代マーケットプレイスに適用する“Open App Store Principles”を発表する。この原則は、Activision Blizzard買収を世界中の規制当局に承認していただくためのプロセス開始に際し、Microsoftの業界における役割と責任に対処するために開発された」と語った。
スミス氏はブログで、規制当局が調査中の米Appleや米Googleのアプリストアポリシーの問題点を間接的に指摘しつつ、新たな原則を説明している。
原則の主な項目は、以下の通り。
- サードパーティーアプリのアプリ内決済に自社の支払いシステムを強要しない
- サードパーティーが他社の支払いシステムを使っても不利益を与えない
- サードパーティーによるアプリを介したユーザーとの直接交流を妨げない
- サードパーティーとの競争で優位に立つためにアプリストアの非公開情報を利用しない
- サードパーティーと競合する自社アプリにも同じ基準を適用し、優先しない
- 基準を満たしている限り、すべてのサードパーティーにアプリストアを開放する
いずれの項目も、世界の規制当局がAppleとGoogleのアプリストアで問題視していることだ。
MicrosoftはMicrosoft Storeだけでなく、将来的にはXboxのアプリストアにもこの原則のすべてを適用するとしている。
スミス氏はまた、Activision Blizzard買収について規制当局が検討する際に提示する可能性のある「2つの質問に公に答える」とし、買収が完了してもActivision BlizzardのゲームタイトルをXbox独占にはしないこと(関連記事)と、発表した原則をXboxのゲームストアに即日適用しないのは技術的な問題であり、最終的にはすべて適用することを約束した。
世界の規制当局による、いわゆるビッグテックへの規制が厳しくなっている。前日には米NVIDIAが英Armの買収を「規制上の課題」を鑑みて断念したと発表している。
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