“格安電気“で新規受付の休止相次ぐ ウクライナ侵攻による燃料不足で 「長期化」予想も
格安電気をうたう電力小売事業者で新規申込受付の停止が相次いだ。電力卸売取引価格の値上がりが原因で「長期化も予想される」という。
格安電気をうたう電力小売事業者で新規申込受付を停止するケースが相次いでいる。3月4日の楽天エナジー(楽天でんき)をはじめ、TRENDE(あしたでんき)、MCリテールエナジー(まちエネ)、ハチドリ電力、シン・エナジーなどが休止中だ。
例年なら3月は寒さが和らぎ、電力需要は下がるはずだった。しかし今年は折からの燃料不足に加えてロシアのウクライナ侵攻で欧州のLNG(液化天然ガス)市場が高騰。16日に発生した福島県沖地震では複数の発電所が停止するなど悪条件が重なった。
3月も日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格は上昇を続け、電力小売事業者の調達コストは膨らんでいる。電力調達の先行き不透明さや逆ざやへの警戒感、さらに「ウクライナ情勢による高騰の長期化が予想される」(ハチドリ電力)として新規契約を控える電力小売事業者が相次いだ。全国では20社近いという報道もある。
電力小売事業者を巡っては21年1月にJEPX取引価格が高騰し、不足インバランス(※1)による債務が膨らんだF-Power(東京都港区)が同年3月に会社更生手続きを申請するなど非常時に弱い構造が明らかに。F-Powerは4月1日付で日本GLP(東京都港区)の子会社「汐留エネルギー」に電力事業を譲渡する。
直近でもホープエナジー(福岡県福岡市)が3月28日に破産手続きを開始した他、エルピオ(千葉県市川市)が4月末でサービスを終了するなど、一部事業者の苦境が伝えられている。
※1)不足インバランス:電力小売事業者が一定時間以上必要な電力を供給できない場合に電力会社が融通し、後で料金を請求する仕組み。ペナルティの意味を含め通常より高額に設定されている
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