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中国政府がIT企業の規制を緩和、大手のIPOへ前進か!?:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(3/5 ページ)
2023年は、20年11月から2年以上続いた中国政府によるIT業界の締め付けが緩みそうだ。中国の新年に当たる春節を前に、政府の方針転換を示すシグナルが相次ぎ点灯。アント・グループや配車サービス最大手DiDiのIPO手続きも前進すると期待が高まっている。
ほとんどのIT大手に行政処分
当局の締め付けの対象はその後、IT企業全般に及んだ。より正確に説明すると、「優位な立場を利用して取引先や消費者を囲い込む行為」「データを当局の目の届かない場所に持ち出し、国益を損なうリスクがある行為」「子どもの健全な成長に有害な行為」を主な取り締まり対象とし、ほとんどのIT大手が行政処分を科された。
数が多すぎてここでは紹介しきれないが、日本でも大きく報じられた代表的なものを挙げると
- 21年4月、独占禁止法違反でアリババグループが182億2800万元(約3500億円)の罰金を命じられた。独禁法違反では生活サービス大手の美団、学術論文のデータベースを扱う「同方知網北京技術」なども高額な罰金を科されている。
- 配車サービス最大手のDiDi(滴滴出行)は21年6月末に米国上場した直後、中国当局からインターネット安全法(サイバーセキュリティー法)違反などの疑いで調査を受け、7月初旬から新規利用者の登録が禁じられた。DiDiは22年5月に上場廃止を決定。同年7月にはネット安全法違反などで80億元(約150億円)の罰金を科された。
- 21年8月末、中国政府が18歳未満のネットゲーム利用を週3時間に制限する規制を導入。また当局は21年7月から9カ月にわたって、オンラインゲームの発売に必要な審査を中断した。ゲーム最大手のテンセントは規制が打撃となり、業績が悪化している。
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