GPT-4とは大きな差、それでもバイドゥの「中国版ChatGPT」が有望な理由:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(4/6 ページ)
中国IT企業のバイドゥ16日、テキストや画像を生成するAI「文心一言」(ERNIE Bot)を発表した。米OpenAIが直前にリリースした「GPT-4」に比べて完成度が低いとされるが、既に650社が文心一言との協業を表明したという。この期待の高さはどこからくるのか。背景を紹介する。
AIを第二創業の軸に位置づけ
米国のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に対抗する存在として、中国には「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)という企業群がある。バイドゥは3社の中で最初に台頭し、00年代には時価総額で中国トップに立った。筆者が中国から帰国した16年時点で、同社は日本人の間で最も有名な中国IT企業という印象を受けた。
だが、実際にはその頃のバイドゥはスマホ時代への対応が遅れて「BATの落ちこぼれ」と見なされており、ポータルサイトもステマや虚偽広告のあふれる「使いたくないが、他の手段がないので使わざるを得ないポータル」という評価だった。同年には虚偽広告を巡る不祥事が発生し、行政処分を受けた。
バイドゥは不祥事をきっかけに、AIを第二創業的な事業と位置づけ、検索ポータルからの転換を加速した。その方向性を表明したのが17年のアポロプロジェクト発表会であり、文心一言はそれに続く大きなステップとなる。
一方で、22年時点でバイドゥの売上高に占める広告収入は60.4%と依然として高い。文心一言の開発は19年に始まり、今のプロダクトは第3世代だが、バイドゥはライバルのアリババ、テンセントが政府の規制によって伸び悩み、かつChatGPTで世界中が盛り上がっているこのタイミングを逃したくないと強く思っているようだ。
李CEOは22年12月以降、社内でChatGPTや生成AIについて活発に発言し、「中国版ChatGPT」の開発を巡る競争がクローズアップされると、2月7日に「3月中に文心一言をリリースする」と発表した。その裏でプロジェクトに関わるエンジニアたちは、「何としても3月に間に合わせろ」と強いプレッシャーを受けていたとされる。
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