連載

リソースを使い尽くせ!――QNAP「TS-639Pro」で変えるネットワークライフ“真・最強NAS”活用術 第1回(4/4 ページ)

1Tバイトを超えるHDDが手軽な価格で手に入るようになり、一般家庭における大容量NASキットの利用も高いハードルではなくなった。この連載では定番メーカーの1つ、QNAPの製品を使ってさまざまなNAS活用術を提案していく。

前のページへ |       

RAIDはバックアップでない――“万が一”に備えて

 RAIDはバックアップではない、とはよく言われる言葉だ。バックアップが「データが失われたときのために別のところに保存しておく」ことに対し、RAIDは「故障の危険性を軽減する」という目的に使用される。故障の原因となることがもっとも多い(不可避と言ってもよい)HDDのクラッシュに対する備えがあるからといって、データロストの危険性がゼロになるわけではない。NASそのものの故障に対しての対策ではないため、電源が入らなくなる、システムが起動しない、RAIDコントローラの不具合によってデータをめちゃめちゃに破壊してしまう、といったトラブルに対しては無力だ。

 そのため、その機器自体が動作しなくなってもデータを戻すことができるようにデータのバックアップをほかの媒体や機器などに取っておくことが推奨される。TSシリーズで可能なバックアップ方法は外部ストレージへのバックアップとrsyncを用いたレプリケーションだ。

外付けデバイスへのバックアップ。eSATAを2ポート搭載しているのは大きな強み

 外部ストレージへのバックアップでは、eSATAあるいはUSB 2.0で接続した外付けドライブにデータを保存する。高速なeSATAのサポートは日常的なバックアップ処理に大きなアドバンテージとなるはずだ。一方、rsyncを用いたレプリケーションでは同一ネットワークだけでなく、SSHを利用することによってインターネットを経由し、遠隔地にあるTSシリーズ、あるいはLinuxなどで構築したrsyncサーバと同期・バックアップを取ることもできる。

advertisement

 もちろん、TSシリーズはそれなりに“いい値段”のするNASサーバだ。バックアップのために同時に2台購入することができる個人ユーザーはそう多くはないだろう。だが、ここで考えてもらいたいのがTSシリーズの柔軟なRAID構成である。同じ容量のHDDで構成した場合、6台によるRAID 6は4台によるRAID 0、JBOD、単独ドライブの容量に相当する。また、このように構成が異なれば故障に対する耐性も異なるし、転送速度も違ってくる。基本的にはバックアップ側の故障耐性を高くすることが一般的だが、家庭内の利用であれば(自己責任のうえで)バックアップ側のコストを考慮した構成にしたり、逆に本番側の冗長性を捨てて高速性を追求するのもいいだろう。また、複数ボリュームを作成し、バックアップNASサーバに127.0.0.1を指定してボリューム間でバックアップを取ることもできる。

リモートレプリケーションの設定画面。サーバタイプにrsyncサーバを選択すればTSシリーズ以外にレプリケーションすることも可能だ(画面=左)。NASサーバのIPアドレスを127.0.0.1にすればローカルでのバックアップが可能。バックアップ先はバックアップソースと異なるボリュームにしなければ意味がないので注意しよう(画面=中央)。USBバックアップでは、フロントのCOPYボタン1つでUSBストレージから内蔵ディスクへ、あるいは内蔵ディスクからUSBストレージにバックアップできる(画面=右)

 ここまでTS-639Proの強化点と基本的な機能を紹介してきた。次回はNASとしての実力をベンチマークテストの結果から見ていくことにしよう。

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.