連載

いつしか合い言葉が「希望は7」になっていた日々2009年のアキバ事情(Windows 7以前)(2/2 ページ)

2009年のPC業界はやはりWindows 7の登場が最大のニュースだ。しかし、それ以前でも「Phenom II」や「ION」「P55マザー」といったキーアイテムが目立っていた。まずはWindows 7以前のアキバを振り返ってみよう。

前のページへ |       

7~9月:Windows 7の足音が聞こえてくるなか、Intel P55マザーとLGA 1156対応CPUがデビュー

9月8日0時、P55マザーと新型CPUの深夜発売が行われた

 年初には2009年内のリリースに懐疑的な意見も多かったWindows 7だが、夏ごろから徐々に登場時期が明らかになっていき、7~9月の期間には10月22日という具体的な発売日まで明確になった。このため、9月8日0時にインテルの新チップセット「Intel P55 Express」とLGA 1156に対応する新CPUの深夜販売が行われたときには、複数のショップから「Windows 7の前哨戦です」といったコメントが聞かれた。

 LGA 1156対応CPUは、「Core i7 870/860」と「Core i5 750」の3種類。3モデルともクアッドコアで、Core i5 750のみハイパースレッディング非対応となる。このタイミングで一斉に登場したP55マザーは2009年末現在でもマザーボードのボリュームゾーンとなっているが、発売当初のロケットスタートはなかった。

 当時、BLESS秋葉原本店は「ハイエンドならX58、一般的なマシンならP45やG45マザーがありますからね。急いで買い替えるという人はあまりいないようです。Windows 7が登場してから徐々に主流になっていくんだと思います」と話していた。

advertisement

 P55マザーより一足早く、8月にはAMD 780Gの後継となる「AMD 785G」チップセット搭載マザーが登場し、こちらも好調に売れていた。グラフィックス性能を向上させたチップセットで、日本AMDの土居氏(当時)は「新しい動画再生支援機能・UVD2などを盛り込んでおり、Windows 7で真価を発揮できる構成になっています」と、ユーザーイベントの場で大いにアピールしている。

 そのほか、7月初旬には新しい広域高速無線通信サービス「モバイルWiMAX」の提供がスタートし、ソフマップ各店やツクモ各店を含むヤマダ電機系列、ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaなどを中心にして、複数のプロバイダーや各社の端末を販売していた。

 ただし、「通信エリアがまだまだ狭いので、普及には1年程度の時間がかかると思います。いつブレイクするか変わらないので、今後もコツコツと売っていこうと思っています」(ソフマップ秋葉原本館)など、提供開始当初から爆発的なヒットを予想する声は少なかった。年末現在もブレイクには至っていないが、売り場スペースは各ショップで確保されており、ゆっくりと普及している印象だ。

インテル「Core i7 870/860」と同「Core i5 750」(写真=左)。「一足早いカウントダウン Get ready with AMD」でAMD 785Gチップセットについて熱弁を振るう日本AMDの旧広報、土居氏(写真=中央)。ソフマップ秋葉原本館に設けられたWiMAXの体験コーナー。その場で実際の通信速度をチェックできる(写真=右)

Windows 7前の街の動き:ツクモ各店がヤマダ電機グループとして再生、密集エリアに多数のショップが集うが……

ツクモ各店は、3月20日から新生ツクモとして復活した

 2008年10月30日に民事再生法の適用を申請した九十九電機は、途中で商品の差し押さえによる営業中断を経て、2009年3月20日にヤマダ電機グループに入ることで本格的に営業を再開させた。再開当初はPCパーツ系の品ぞろえがやや弱まっていたものの、夏ごろには以前の水準に戻り、年末現在も安定した営業を続けている。

 大型店舗の動向を見守っていた周辺のショップからは「何とか復活できたみたいでよかったです。ツクモ各店がなくなると、アキバのなかでPCパーツショップのカラーがすごく薄まります。明日は我が身ですが、ひとまずは安心しました」(某ショップ)という肯定的な声から、「復活してからは、HDDの特価を連発して値崩れを誘発するような過激なキャンペーンが目立ちますね。確かに盛り上がるんですが、身を削って戦うような戦略はちょっと勘弁してほしいですよ……」(某ショップ)といった意見まで聞かれた。

 自作PC市場の衰退が不安視されるなか、新しいPCパーツ系ショップも誕生していた。2月には、アキバのメインストリートである中央通りに「イオシス アキバ中央通店」がオープン。SIMカードのない中古ケータイ「白ロム」を中心に、アウトレット品のPCパーツや周辺機器、中古PCなどを並べた。イオシスは大阪・日本橋を拠点に展開しているが、2005年に「イオシスあきはばら店」を開店。以降は独自の販売ルートなどを活用して活発な営業を続けており、「以前から中央通りの空きテナントを狙っていたんです」(同店)という念願がようやくかなったというわけだ。年末もオープン時の勢いそのままに営業を続けている。

 また、ドスパラ秋葉原本店のあるロック2ビルの3階で、5月には「GENO工房」がオープン。中古PCで有名なGENOグループながら、新品パーツと新品BTOマシンを扱うショップとして展開した。続けて7月には、中央通りと神田明神通りの交差点付近で営業を続けていたBLESS秋葉原本店が、PCパーツショップ密集エリアに移転している。

 店舗の移転やオープンが続いたころ、某ショップは「Windows 7特需を見込んで新しい展開を狙っているところもあるでしょうね。ただ、それだけだと相当リスクの高いギャンブルになるので、コストを下げて体力を温存できるようにするなどの策も同時にとっているところが多いんじゃないでしょうか。BLESS秋葉原本店の移転はその典型だと思いますね」と話していた。

 しかしその後、GENO工房BLESS秋葉原本店は別々の事情で店を閉めることになる。詳細は「7以後編」でお伝えしたい。

2月11日にオープンしたイオシス アキバ中央通り店(写真=左)。ロック2ビルの3階で営業していたGENO工房(写真=中央)。1階にGENOアウトレットがあるロックビル2階にBLESS秋葉原本店は移転した(写真=右)
前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.