中国の中古PCショップでThinkPadを買って「痛く」する:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)
中国ではThinkPadが人気。怪しげな中古ショップで購入しても黒々としたボディは富と賢者の象徴。おい、せっかく買ったThinkPadに何をする!やめてくれえ!
個人的トラウマを克服するためにThinkPadを痛くする
中古のThinkPad X60というベストに近い戦果を挙げて意気揚々と帰還、と思ったら、「ThinkPadにはいやな思い出があるんだ」と友人がつぶやく。公務員であるその友人によると「無能なのに虚栄心だけは人並み以上の上司が公費でThinkPadを購入したんだ。だから、ThinkPadの黒いボディを見ると上司を思い出して気分が悪い」そうな。
そんな友人が「そういうわけで、黒いThinkPadをデコレーションしたい」と、ThinkPadを愛するユーザーには暴挙としか思えないことをいい始めた。さすがに、購入したThinkPad専門中古ショップの店長にも「黒だからこそいいのに……」と反対されたが、その店長に「デコレーションショップはどこにある!」と聞きだすやいなや、店を飛び出して走り始めた。ほとんどのショップがシャッターを下ろして暗くなった電脳街だが、目指すデコレーションショップは営業中で、さびれた店内を薄暗い明かりが照らしていた。
店舗というより屋台といいたくなるそのデコレーションショップは夫婦が営んでいて、双子の子どもが走り回る店内には、海賊版ソフトやらマウスやらWEBカメラやらUSBメモリやらが山のように置かれていた。
その中にノートPC用の液晶保護フィルムや天面に張るデコレーションシールを埋まっている。その多くは据え置きタイプのA4ノートPC向けらしく、ThinkPad X60より一回り大きなものばかりだった。友人は「勘弁してください」と叫びたくなるような絶妙なデザインの中から、“なぜか”フコク生命のロゴとURLが記載されたハローキティの天面シールと液晶保護フィルムを選んだ。
天面シールと液晶保護フィルムはそれぞれ15元(約200円)で、それに店員に作業をお願いすると「技術料」がそれぞれに15元かかる。あわせて60元(約800円)だが、例によって“粘り強い”値引き交渉で50元(約675円)に値引きする。
商談が成立し「こっちにこい」とシールとフィルムを携えた母さん店員についていくと、そこは、アパート1階の共同階段の裏に設けられた作業場だった。1畳半程度の倉庫を兼ねた空間で、母さん店員は「遊んで遊んで」とせがむ双子の相手にしながら、「このThinkPadはずいぶんと汚いねえ。どれだけ使っているのよ」という文句とともに天面にシールを張り、余った部分をはさみで切っていく。その作業を友人はみかん箱の上に座り、30分ほど見守った。
友人は「ThinkPad X60がこんなにお得に買えてラッキーだったよ」と喜んで帰っていく(が、後日「バッテリーが5分も保たない!」と文句をいうことになる)。購入したThinkPad X60の中古品は、本体と電源アダプタだけで、箱も説明書も、そして、リストア用のCDも付属していない。しかし、リストア用のCDがないことについて友人から相談はなかった。
「彼は、どうやってThinkPad X60を初期化したのだろう」(棒読み)
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