ハイエンドモバイルの破壊と創造、そして――新型「VAIO Z」を徹底攻略する(後編):最先端“Z”を集中テスト(5/5 ページ)
伝統を打ち破り、ソニーのハイエンドモバイルはどこへ向かうのか。レビュー後編は、ドックの有無による性能の違いを中心として、真の実力を明らかにしていく。
ユーザーを魅了し続けるオンリーワンのフラッグシップ・モバイル
これだけの意欲作だが、価格は手の届く範囲内に収まっている。標準仕様モデルの予想実売価格は25万円前後だ。安くはないが、128GバイトのデュアルSSDを搭載するほか、Radeon HD 6650MとDVDスーパーマルチドライブを内蔵したPower Media Dockも標準で付属することを考えれば、高すぎることはない。
スペックをカスタマイズできるソニーストア直販のVAIOオーナーメードモデルでは最小構成で14万4800円から用意されており、不要な機能や付属品を省けば、グッと価格を抑えた構成も可能だ。例えば、ドックを付けず、Core i5-2410M(2.3GHz/最大2.9GHz、3次キャッシュ3Mバイト)、8Gバイトメモリ、1600×900ドット表示の液晶、128GバイトのデュアルSSD、WiMAX+IEEE802.11a/b/g/n無線LAN、64ビット版Windows 7 Home Premium(SP1)、内蔵+拡張バッテリーといった構成では18万2800円(キャンペーン適用価格)と、かなり買い得感の高い構成になる。モバイルでの利用に徹するならば、十分に満足度の高い仕様だ。ドックが必要になったら、後から単体で購入してもよいだろう。
新しいVAIO Zは、本体とドックのセパレート型スタイルにしたことで、状況に応じて最適なスタイルを選べるようになり、パフォーマンスとモビリティ、いずれも飛躍的な向上を果たした。ベンチマークテストの結果からも、ソニーが目指した「非連続な進化」は間違いなく達成されているといえる。
特にモビリティの進化は顕著だ。本体だけで見ても、これだけの高性能なCPUを搭載し、この軽さと薄さを実現しているPCはほかにない。高解像度で広色域の液晶ディスプレイ、高速なデュアルSSDの搭載といったことも、ほかのモバイルPCにはないオンリーワンの要素だ。ここまで軽く、薄くなったことで、これまでVAIO Zは検討対象に入れていなかったモバイル志向の強いユーザーからも大いに注目されるだろう。
その一方で、このあまりに急激な進化は、これまでのVAIO Zを愛用してきたユーザーからすれば、戸惑いもあるのではないか。特にドックがなければ外部GPUが使えない点にマイナス面を感じるユーザーはいるだろう。ドック自体はスリムで軽いが、120ワットのACアダプタが必要なため、携帯してどこでも使うというわけにはいかない。「ハイパフォーマンスをそのままどこでも持ち運べること」を重視していたユーザーには、VAIO S(SA)のほうがフィットしそうだ。
とはいえ、外部GPUのニーズだけであればVAIO S(SA)でもフォローできるが、やはりそれ以外にもオンリーワンの要素を多数抱えているVAIO Zだけに、代用が難しい面もある。この辺りはフラッグシップモデルの魅力にとりつかれてしまったユーザーの宿命ともいうべきだろうか。今回のVAIO Zを否定する声が出てくるとすれば、それだけほかの製品では代え難い魅力があるからこそだ。これだけユーザーをアツくさせる製品というのもなかなかない。
ともあれ、今回のVAIO Zもフラッグシップ・モバイルの称号にふさわしい、唯一無二の魅力にあふれた製品であることは疑いがない。手にしてみれば、最新のテクノロジーがもたらした新たな可能性を、そしてZがフラッグシップたる所以(ゆえん)を実感できるだろう。
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