本日公開、Windows 8.1の“0.1”アップデートが意味すること:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)
日本時間の2013年10月17日20時、Windows 8.1の無償アップデートが行われる。Windows 8から約1年後に行われる“0.1”アップデートは、どのような価値をユーザーにもたらすのだろうか。
Windows 8が目指した理想と現実
では、Windows 8.1とはどのような意図をもって改良されたOSなのだろうか。SkyDriveとの統合度を上げるなど、よりクラウドとの連動を意識したOSになっていることは間違いないが、今回のリリースに関しては「環境適応」のためのアップデートというよりもWindows 8での積み残しを、ここで一気に処理しようとしたアップデートと考えたほうがよいと個人的には感じている。
Windows 8が目指した理想は、マイクロソフトの得意領域である「PC」から「スマートデバイス」の領域へと攻め入ることだ。スマートフォンの領域で覇権を争えない状況であることは明らかな中、スマートフォンの適応分野を拡大したタブレットがPC市場を浸食している。
そこで機能やパフォーマンス、キーボードを使ったより高い作業性などを生かし、PCのパワフルさをそのままに、タブレット領域にまで応用分野を広げようと考えたのがWindows 8である。このOSの開発を指揮したスティーブン・シノフスキー氏は、世界中で稼働する10億台のWindows PCが将来、“クラウド+Apps”を自在にタッチパネルで扱えるプラットフォームになることを期待し、タッチパネルとキーボード操作の両立を狙った新ユーザーインタフェースとシステムAPIの開発に取り組んだ。
とはいえ、目指した理想へ簡単に到達できるわけではない。加えて、PCをPCとしてのみ使いたいユーザーからは、タッチパネル対応の面が強調されすぎてしまい、実は細かな改良が無数に行われているにもかかわらず、不要なOSバージョンとして敬遠される理由にもなってしまった。
ドラスティックな変化に対する拒絶反応は、今もなお続いている。従前からのPCユーザーと、これから目指したい新しいコンピューティングの形。この2つをうまくつなげられないものか。Windows 8.1でマイクロソフトが取り組んだのは、マイクロソフトが目指す理想とユーザーの肌感覚に存在するギャップを埋めることだ。
マイクロソフトはWindows 8が抱えていた不完全な点(タッチパネル対応でありながら、タッチ操作が可能な設定・機能が限られていること。タッチパネル対応アプリを開発するためのAPIが不足していたことなど)を、ここで一気に修正しようともくろんだ。
Windows 8は必要なメモリ容量が少なく、高速に動作するなど、基本ソフトとしての性能には優れていたが、主に2つの点で問題を抱えていた。それらはいずれもタッチパネルの機能をPCに統合するために盛り込まれた部分にある。
1つは既存ユーザーへの配慮に欠けていたこと。キー操作の手順が同じとはいえ、ビジュアル面での違いやちょっとした「振る舞い」、「作法」の差が従来からのファンをいらつかせた。Windowsへのタッチ操作の導入(スタートメニューからスタート画面への移行)は、やや強引だったと言わざるを得ない。
もう1つはタッチパネル対応のアプリを書くために必要な機能が、圧倒的に不足していたことだ。このため、優秀なタッチパネル対応アプリがなかなか増えず、現在もって不足状態が続いている。「PCなのだからWebブラウザでも十分対応できる」とサービス提供者に考えられていることも原因の1つだろう。
“8.1”は、こうした未完成とも言える部分にしっかりと手が入り、タッチ操作をほとんど使わないユーザーにも配慮している。そのうえで、従来は機能的に不足していた部分(WinRTと呼ばれる部分)を大幅に強化している。そのために新たに増やしたAPIは実に“5000”という。
今後の成長領域とみられるタブレットの世界に、10億台が稼働するWindows PCをテコとして使うためにマイクロソフトも必死なのだ。
では、iPadはもちろん、Androidタブレットの領域にもほど遠かったWindows 8のタッチ機能とアプリの洗練度は、Windows 8.1で向上するのだろうか。次回はWindows 8.1での具体的な改良点について掘り下げていきたい。
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