シマンテックが2013年のセキュリティ脅威を総括:「日本も例外ではなくなった」
シマンテック セキュリティレスポンスのケビン・ホーガン氏と濱田譲治氏が2013年のセキュリティ脅威動向を振り返った。
シマンテックは12月19日、インターネット脅威の動向を解説する報道関係者向け説明会を開催。米Symantecのケビン・ホーガン氏と、シマンテックの濱田譲治氏が2013年を振り返り、注視すべき5つの脅威を挙げた。
まず1つ目は、未知のぜい弱性を利用するゼロデイ攻撃の増加だ。同社が把握しているゼロデイ攻撃の発生件数は、2011年の8件、2012年の14件に対して、2013年は22件と「例年よりもやや多い」(濱田氏)。また、一太郎など日本国内でのみ使われているアプリケーションのぜい弱性を突くゼロデイ攻撃も発生しており、日本を限定的に狙う流れがあるという。
ケビン氏は「近年増えている標的型攻撃は、諜報活動や産業スパイなど、政府や大企業が対象だと思われているが、攻撃の4割は従業員が500人未満の中小企業を狙っている。標的型攻撃は大手企業だけの問題ではない。そのサプライチェーンに組み込まれている小さな企業も狙われているという認識を持つべきだ」と警告する。
2つ目は“身代金”を要求するランサムウェア。特に2012年ごろから増加傾向にあり、年間被害額は日本円で約5億円と試算されている。単に画面をロックする昔ながらの攻撃に加えて、PC内のデータファイルを暗号化して復号鍵を取引材料に金銭を要求するものもある。
感染経路の1つはポルノサイトで、警告画面に警察機関のロゴを表示してユーザーの心理的なぜい弱性(後ろめたさ)を突くタイプが多い。「ブラウザタブを全画面で拡大するだけ(ブラウザを閉じれば何の問題もない)でも、アダルトサイトを閲覧していたユーザーは動揺して金銭を支払ってしまうケースがある。このようなソーシャルエンジニアリングを使った手法は、日本のワンクリック詐欺に似ている」とホーガン氏は語る。ちなみに、C&Cサーバを通じてファイルを暗号化するトロイの木馬系ランサムウェアの場合、いったん攻撃を受けると「データの復旧(復号化)は非常に困難」(濱田氏)とし、定期的なバックアップの重要性を訴えた。
3つ目はオンライン銀行を狙うZeus(Zbot)の拡大について。濱田氏はその理由として、特別な技術がなくても容易にトロイの木馬を作成できるツールキットが大量にブラックマーケットに出回っている点を挙げる。
日本でも不正送金事件が取りざたされているが、「現在は主要なオンラインバンキングだけでなく、地方銀行も狙われている。オンライン銀行を狙うマルウェアの感染数は、米国に次いで日本が2番目になっていることにも驚かされる。こうした攻撃が日本でも一般的になってきたということ」と濱田氏は指摘。その一方で、ホーガン氏は「誰でも入手できるツールキットを使った攻撃だけでなく、開発者が自分で、もしくはツールの使用者を絞り、限定的に使われているプライベートなコードもみられる。これらはもともと日本を標的にしており、ヨーロッパと同じ状況だ」と述べ、「日本はもはや“例外”ではなくなった」と強調した。
4つ目に取り上げられたのは、モバイル端末向けの脅威として新しいカテゴリに位置づけられる「マッドウェア」(Madware=攻撃的な広告ライブラリを使うアプリ)だ。同社のリポートによると、なんらかの攻撃的なアドライブラリが使用されているアプリは、Google Playで20%を越え、端末をカスタマイズするPersonalization系アプリで特に顕著だという。
ホーガン氏は「低価格(または無料)なアプリの収益源として、アドライブラリを利用すること自体は悪いことではない」としながらも、突然全画面で広告を表示したり、通知バーに広告を表示するもの、場合によってはアカウント情報を送信してしまうものがあると述べ、「よく言われることだが無料なアプリは無料ではないこと(代わりに個人情報を要求する)を改めて考えるべき」と警告した。なお、日本国内で見られるマッドウェアは、主にワンクリック詐欺サイトへ誘導する仕組みとして使われているという。
5つ目は不正アクセスの増加。2013年9月に警察庁が発表した「不正アクセス禁止法違反検挙件数」をみると、2013年上半期の件数は574件で、2012年同期比の増加率は236%にのぼる。その要因の1つがパスワードリスト攻撃(アカウントリスト攻撃)の流行だ。
これは、不正に取得したID/パスワードのリストを別のサービスの不正ログインに利用する手法で、従来の総当たり攻撃に比べると非常に効率がよい(仮にIDがメールアドレスになっている複数のサービスで同じパスワードを使い回している場合、どこか1つでリストが漏れれば、すべてのサービスが危険にさらされることになる)。また、運営者側が攻撃に気付きにくく、ユーザーが複数のサービスで同じパスワードを使い回していても、それをサイト運営者側は確認できないという問題もある。濱田氏はアカウントリスト攻撃の増加で今後はパスワード管理に慎重を期すべきとの見解を示した。
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