「HWD14」で現在のWiMAX 2+の挙動を知る──旧WiMAXルータと比べた実通信速度の違いを検証:改めておさらい「WiMAX 2+」(2/2 ページ)
前回はWiMAX 2+の挙動について細かいチェックを行ったが、後編では旧WiMAXルータと比べた実通信速度の違いを検証しよう。
続いて現時点WiMAX 2+エリア外となる筆者自宅でWiMAXの速度のみを比較してみよう。一応、2.4GHz帯チャンネルを個別に確保すべく、自宅にて40MHz幅で運用している2つの802.11n無線LANアクセスポイントは一時的に停止して測定した。
ここもHWD14は優秀で、下り約14Mbpsに迫る速度が出た。下り最速値のみURoad-SS10に譲ったものの、URoad-SS10比で下りで約120%、上りで約170%ほど高速という感じだ。1点補足しておくと、2013年12月19日のソフトウェアアップデート(Ver.11.031.09.30.824)適用前までは(記録は残していないのだが)ほぼ同環境にて下り7M~8Mbpsほどにとどまっており、WiMAX端末としての性能はいまひとつと評価していた。Ver.11.031.09.30.824の適用で、それなりに改善が進んだのではないかと思われる。
最後にWiMAXでさえ入りにくい、HWD14/Uroad-SS10ともにWiMAXアンテナバー表示でが0~1本となる場所で比較しよう。ここではHWD14ならではのメリットであるLTE接続での速度も併記する。
WiMAX電波が入りにくいこの場所では、WiMAXハイパワー対応の有無で差が付いたと思われる結果になった。実はHWD14は5回計測したうち、2回はふとリンクが切れて計測エラーになり計り直したほどなので、本当にギリギリでつながっている状態のようだ。
速度としてはURoad-SS10の圧勝。URoad-SS10は下り3Mbps台/上りも1Mbps前後をキープしたのに対し、HWD14は1.3Mbpsほど/上りは0.1Mbps(約100kbps)ほどまで落ち込んだ。ここまで遅いとWebサービスの利用や、Twitter/SNSへの画像投稿などもつらくなるほどで、特に上り送信側は完全にデータの流れが途絶している時もある。100kbpsほどとなると速度の値としてはLTEでの低価格SIMサービス程度? と思いがちだが、実はそうではない。速度をあえて抑えてある低価格SIMサービスは、通信自体が安定していればデータの流れが途絶することは基本ないので案外普通に使えるもの。値としては同じ速度であっても通信自体が不安定な場合とは意味が異なるわけだ。
一方、HWD14使用するLTE接続はこれと比べるとさすがに速い。下りは平均約16Mbps、上りは約5Mbpsと至って高速で、安定した通信速度を記録した。当然LTEも電波状態が悪いシーンはあるかもしれないが、関東近県の都市部で活動する筆者の行動圏内において、特に屋内で使用するシーンではWiMAXよりau 4G LTEの方が電波状態は安定している。LTE接続への切り替えは使用月のみプラス1055円/月(税込み/ただし、2014年1月より5カ月間、LTE オプションを無料にするキャンペーンが行われているのでこの期間は例外)の料金が必要となるが、モバイラーにとってau 4G LTEのネットワークも使えるのは強力な安心感につながるのは事実だ。
本当はWiMAX 2+弱電界での速度計測も加えたかったが、そういう場所では前編で検証したとおりWiMAX接続へすぐ切り替わってしまうので現時点ではスルーすることにした。WiMAX 2+エリアの端に近いあたりを徒歩で移動しながら、WiMAX 2+へ切り替わった段階ですぐ速度チェックしても下り30Mbpsほどと良好な速度を普通に記録してしまうので、一定の電波強度が得られる場所で“のみ"WiMAX 2+で接続されると判断せざるを得なかったからだ。
もう1つ気になった点にも触れておこう。2度のアップデートを経ても完全には改善されていないと感じるiOS端末(iOS6)とWi-Fiの相性問題についてだ。2013年12月19日のソフトウェアアップデート(Ver.11.031.09.30.824)適用前まで、ノートPCやAndroidスマートフォンからの測定速度と比べて筆者のiPhone 5(iOS 6のまま)は下り速度が10分の1ほど出なかったが、Ver.11.031.09.30.824適用後はその50~70%ほどの値は出るよう改善された。ただ、時に10分の1ほどに戻ることもいまだにある。しかも下り速度だけ。ちなみにiOS 7のiPhone 5cでは発生しないので、iOS 6との相性問題と考えて差し支えないだろう。
HWD14は、UQコミュニケーションズかKDDIのどちらが主導でHuawei Technologiesに端末供給を依頼し、検証を行ったかは存じないが、iPhone、iPadを販売するKDDIからもHWD14を販売する以上、この状態で販売に踏み切ったのは少々お粗末だ。現時点、WiMAX 2+端末がHWD14しかないのは仕方ないが、iOS端末との相性問題を分かっていないはずがないだろうし、それならそれで最低限情報を提供してほしいと思う。
条件付きだが、1台で「速い/ノーリミット/そこそこ安い/そこそこ広い」を実現できる
結果として、WiMAX 2+は接続さえできればとても快適な高速通信が可能という実感は得られた。HWD14についても筆者はかなり魅力的だと思う。
WiMAXは順調にエリアを広げ都市部では地下鉄駅構内や地下路線部のカバーが進んでおり、人口カバー率ですでに94%に達している。もっともこの94%という数値はあくまで人口分布におけるカバー率なので、人が少ない地方部ではまだまだではあるのだが。そこをカバーするのがもう1つの接続手段であるLTEの存在だ。プラス料金は必要だが月額のオプションではなく、使用した月のみで済ませられる。例えば地方に旅行へ行った際、あるいは帰省する時だけLTE接続でカバーするを使うことが可能だ。WiMAXエリア補完を目的に月額1000円程度の低価格SIMサービスを使う手段でもよいが、使わない月もランニングコストとして発生するうえ、1000円前後のサービスとなると使用可能なデータ通信量は乏しかったりする。この点、同じく1000円程度で7Gバイトまで速度制限なしに使えるとすればコストパフォーマンスは悪くない。加えてこれを1台で済ませられるのはとてもスマートだ。
WiMAX接続に関しては、当面通信量制限を設けない“ノーリミット"が継続され、WiMAX 2+に関しても契約から25カ月間は同様に制限は課されない(2014年1月現在)。場所や時間帯にもよるが、WiMAX接続でも10Mbpsから、強電界では20Mbpsの速度が出ることも少なくない。日常の行動範囲内で多くの場所でWiMAX接続で利用できる人であれば、LTE切り替え時の上限7Gバイトはほとんど気にしなくてよい。ライバルサービスとして、EMOBILE LTE(EMOBILE 4Gは7Gバイト/月の規制あり)が現時点は366Mバイトまで/日の制限のみで月間データ通信量に規制がないが、これも2014年4月には終わる予定で以降は10Gバイト/月の上限が設定される。やはり“ノーリミット"を望むモバイラーにはWiMAXが向いていると改めて思う。
契約体系に関しては従来のWiMAXにあった魅力はかなり薄れた。契約期間は原則2年となり、1年目は1万9950円、2年目は1万4700円、更新月を除く3年目以降は9975円の契約解除料金が発生する。現時点の端末代金は実質0円に近いので契約解除料金は端末代金と思えば納得できないことはないが、従来のWiMAXもおおむね端末代金は実質0円であり、かつ1年契約で済んだことを思うと、“導入のしやすさ"はほかのLTEサービスと同じ程度になってしまった。また、契約をSIMカードで管理するように変更されたため、1契約で複数端末での利用ができる機器追加オプションや、プラス2480円/月で2つの登録端末での同時接続できるファミ特パックなども利用できなくなったのも残念。同様の理由で(あまり多くはないようだが)“内蔵"に意味があるとあえてこだわって使用してる現WiMAX内蔵PCユーザーも2+には乗り換えられない。
とはいえWiMAX 2+がこれからの新世代サービスであることまで考慮すれば、今なら2年契約でも使い続けられるだろうと思えるし、予備回線として使用した月のみ追加できるau 4G LTEも利用できるのはとても安心できる。2014年1月現在、唯一の対応端末であるHWD14も短期間で2度のアップデートを経て問題の改善はそこそこ進んでいる。現時点でWiMAXがギリギリエリアで自宅でも使用したい人は少し注意がいるが、そうでなければWiMAX 2+とHWD14の組み合わせは、2014年1月現在、モバイラーにもうれしい有力なモバイルインターネット接続手段である。2014年1月20日に1週間お試しサービス「Try WiMAX」がWiMAX 2+端末である本機も対象になったので、WiMAX 2+は実際使えるか──をチェックしたい人はこのサービスを利用してまずは試してみるのもよいだろう。
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