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ビットコインの仕組みとMt.Goxの事件――仮想通貨に未来はあるか信用できる? できない?(3/5 ページ)

一連のビットコイン事件は何が問題なのか。分かりやすくまとめてみた。

でも世の中そううまく行くことばかりじゃない

 以上がビットコインの基本的な仕組みだが、すべてがうまくいく場合ばかりではない。例えば、2人以上がほぼ同時にナンスを見つけた場合はどうだろうか。

 ナンスを見つけた場合、そのことを全員に送る、と言っても当然ながらネットワークによる遅延は発生する。東京のグレン氏とブラジルのギース氏が同時にナンスを見つけた場合、東京の周辺にいるマイナーはグレンの勝ちだ、と思うだろうが、ブラジルの周辺ではギースが勝者と目されるだろう。そして少し遅れてから東京、ブラジルにもお互いの情報が伝わり、同着であることが分かる。

 だが、ビットコインの取引情報は一子相伝。そこに双子が生まれたようなものだから、両方を後継者とするわけにはいかない。かといって中央機関のないビットコインの世界ではそれを決定する権利を持つ人はいない。そこでマイナーたちは各々、どちらか一方を勝手に正当な後継者として扱う。つまり、次の10分間の取引をまとめたブロックを自分が支持すると決めたほうにつなげて承認作業を行う(図8)。

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 その結果、1列に並ぶはずの取引情報は分岐してしまうのだが、そうやって分岐したチェーンは短いほうが「なかったことになる」。つまり、承認競争に負けた側に記録されていた取引はすべて取り消される。とはいっても、同じ取引の記録は勝ち残った側にもあるので取引自体が消えてしまうということはない。取り消されてしまうのは「負けたマイナーが手に入れた手数料と新しいビットコイン」だけだ。

図8

 では、ネットワークが分断され、一方は他方で行われている取引を知らないまま時間が経過した場合はどうだろうか。分断している間はその中で秩序が保たれる。しかし、その分断されたネットワークが再び相互につながったときは分断される直前までさかのぼって短い方が破棄――つまり取引がキャンセルされる。

 このように相反する主張が発生した場合、多数決で解決するのがビットコインの仕組みだが、興味深い点はその1票が単純にノードにひもづくわけではないというところだ。簡単に言えば、計算力の劣るノードには投票権がない。これは多数決をひっくり返そうとするには単に数をそろえるのではなく、十分な計算力を携えていないとならないということを意味する。

ビットコインの取引はBlockchain.info(https://blockchain.info/ja/)で見ることができる。画面は分岐後破棄されてしまった孤立ブロック

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