Windows 10はPCとスマホで同じアプリがなぜ動く?――「UWP」の理想と現実:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/4 ページ)
PCとスマホで同一アプリを利用、スマホに外部ディスプレイ+キーボード+マウスをつないでデスクトップPC的に作業、外部ストレージにアプリ導入など、ユーザーの利便性を高めるWindows 10世代のアプリ基盤「UWP」は、どのような仕組みなのだろうか?
スマートフォン向け「Continuum」では2アプリの同時利用が可能
UWPの採用により、Windows 10では面白いことが可能になった。Windows 10 Mobileの動作するスマートフォンを大画面ディスプレイへと接続することで、動画などのメディアファイルを拡大表示させるだけでなく、スマートフォン上のアプリを大画面に“最適化”させたUIで表示させて利用可能になる。ここでマウスとキーボードを接続すれば、あたかもデスクトップPCと同等のアプリ利用環境をインスタントに構築できるのだ。
Windows 10の発表当初、Microsoftは2in1タブレットにおける「デスクトップモード」と「タブレットモード」のスムーズな切り替えをContinuumと呼んでいたが、スマートフォンにおける外部ディスプレイ接続によるアプリ利用環境の変化についてもContinuumと呼ばれている。この辺りのデモの様子は『Build 2015基調講演で示した「Windows 10でなくなるスマートフォンとデスクトップPCの境界」』や『「Windows 10」は永遠に未完のOSか?』といった過去記事も参照してみてほしい。
Microsoftによれば、このスマートフォン向けContinuumの定義は以下の画像のようになっている。
最も注目なのは、1番上の「2つのスクリーン上で2つのアプリが同時に動作する」という点だ。つまりこれは、スマートフォンを本体として、外付けディスプレイ+キーボード+マウスでExcelの編集作業を行うのもいいが、スマートフォンの機能は依然生きており、例えばExcelの編集中に通話やSMSのメッセージ返信も可能ということを意味する。
これをさらに応用すれば、手元のスマートフォンではPowerPointを起動してノート(注釈)を参照しつつ、別途接続されたプロジェクターや大画面ディスプレイにはスライドを表示させて、画面を手元のスマートフォンで切り替える……といった、「クリッカー(PowerPointのスライド切り替え装置)」+「原稿読み用の別スクリーン」の2つの機能をスマートフォンへと集約できる。
スマートフォンのContinuumにおける外部ディスプレイとの接続は、Windows 10 Mobileが標準で備える「外部ディスプレイ出力」の機能が利用できるほか、アプリ内部から操作する方法の2種類が用意されている。
アプリから操作する場合は目的に応じて3種類のAPIが提供されており、単純なメディアファイルの出力であれば「Media Element Casting API」を、DIAL対応の外部機器との連携は「DIAL API」を、2つめのスクリーンの表示内容を細かく制御したい場合には「ProjectionManager API」を利用する。前述のPowerPointの活用例ではProjectionManager APIが利用されている。
スマートフォンとディスプレイ、その他のキーボードやマウスといった周辺機器との“物理的”な接続方法は、有線のほか、Wi-FiやBluetoothによる無線接続が可能だ。もしディスプレイと無線接続する場合は、Miracastを使うことになる。スマートフォンの場合、大抵は外部出力用のUSBポートを1つしか備えておらず、複数の周辺機器を有線接続したいときはUSBハブが必須になるため、無線と有線の組み合わせも悪くないだろう。
ただし注意するのは、このようにUSB経由で外部の周辺機器をスマートフォンに接続した場合、充電は行われないため“一方的”にバッテリーを消費してしまうという点だ。
以前にも『新しいMacBookで話題の「USB 3.1 Type-C」はWindows PCをどう変えるか?』の記事で解説したように、USB Type-A/Bの周辺機器接続では本体から周辺機器に向かって一方向に電気が流れる仕様になっており、Continuumを利用しつつ充電することができない(特殊なドックやワイヤレス充電を利用した場合は除く)。
そのため、筆者個人的にもデータの流れる方向と充電の方向を適時調整できるUSB Type-Cの早期でのスマートフォンやタブレットへの普及を望んでいる。
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