ヨドバシカメラが「Windows 10アップグレード代行」を無料で行う理由：店頭で買って、持ち帰って、すぐ“10”を使える（2/2 ページ）

アップグレード代行サービスを実際に利用する人はどれくらいいるのか？

　7月29日に始まったWindows 10のアップグレード代行サービスは、どれくらいの購入者が選択しているのだろうか。

　ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaのパソコン専門チーム プロダクトスペシャリスト マネージャーの下条泉稔氏によれば、7月31日時点で2桁以上の台数で利用され、Windows搭載PCの1日総売上台数のうち20～30％の客が利用しているという。

　Windows 10アップグレード代行サービスは、通常のWindows初期セットアップサービスとセットになっていることもあり、利用者は年配の客が多いようだ。逆に比較的若いユーザーは、自身の手で作業を行いたいと、サービスを利用する人は少ない。

モバイルルータが普及した今だから感じる、代行サービスのメリット

　実際に店頭でアップグレード代行サービスを依頼すると、PC購入後にヨドバシカメラの係員がプリインストールOSからWindows 10へのアップグレード作業を行った後、店頭で製品を受け取って持ち帰れる。時間は5時間ほどだが、帰宅後すぐに最新OSを利用できるのは便利だ。

　下条氏は「お客様によっては『そんなにかかるの？』という声も正直ある。しかし、我々はこれをチャンスだと思っている。例えば、自宅のインターネット回線がモバイルルータというお客様も非常に多く、安定した通信速度が確保できなかったり、通信量制限の問題も出てくる。お客様がご自宅でアップグレードを行うと、5時間以上かかる場合もあるので」と語る。

　確かに単身者など自宅にインターネット回線を引いておらず、モバイルルータで済ませているケースも多々見受けられる。Windows 10のアップグレードを行うには、数Gバイトの大容量ファイルをダウンロードする必要があり、いろいろと制限のあるモバイルルータでは少々心もとない。

　ちなみに、同社公式通販サイトの「ヨドバシ・ドット・コム」でPCを購入し、Windows 10アップグレード代行を依頼した場合でも、通常の翌日発送に変わりはない。ただし一部地域への即日発送と、一部店舗で24時間商品を受け取れるサービスは利用できない。

ヨドバシがWindows 10アップグレード代行を「無料」で行う理由

　そこでもう1つの疑問をぶつけてみた。どうして無料でそこまで行うのかというものだ。今回のWindows 10アップグレードとPC初期セットアップの代行サービスは、通常だと税込で1万5000円程度の料金が発生する。

　これについて下条氏は「ヨドバシカメラは、お客様へ新しい商品、情報を提供していく『発信基地』という意味合いでサービスを行っている。『Windows 10がリリースされましたよ』と言っても一般のお客様に浸透しなければ意味がない。我々から発信していくことで、より多くの方に興味を持っていただきたい」という。

本当に使いやすいものをより多くのユーザーに

　家電量販店という、ユーザーにある意味一番近い立場のヨドバシカメラが行っている取り組みは、最新の製品やサービスをよりユーザーの身近に感じさせるものだ。ITの世界では日々ソフトとハード両面ともにより使いやすく進化しているが、それらの恩恵を受けられるのが一部のパワーユーザーだけでは意味がない。

　個人的に今回の取材では、自宅に光ブロードバンド回線があることが当たり前ではないという事実にハッとさせられた。PCを使うことが生活の中心になっているような詳しいユーザーはともかく、一般ユーザーにとっては、Windows 10にアップグレードすること自体がハードルの高いものになっているということだ。

　Windows 10は、以前のWindowsに比べて使い勝手が大幅に向上していると評価する声も多い。本来、その使い勝手を求めているのはPCにあまり詳しくない一般ユーザーのはずだ。そうした人たちに対し、モノを販売するだけでなく、商品としての価値を提案できることが、実店舗を持つ家電量販店の強みになっていくのかもしれない。

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