「Surface Book」はペン付き大画面タブレットの本命か――USモデル先行レビュー:iPad Proとの比較も(5/5 ページ)
Microsoftが“究極のノートPC”を標ぼうする「Surface Book」は、Core i7搭載PCで最薄最軽量のタブレットでもあります。今回は独特な2つのタブレットモードと筆圧ペンをチェックしてみました。
何でもできるWindows 10タブレットの長所と短所
Surface Bookは2in1ノートPCですが、タブレットモードで活用したいと考えた場合、Windowsタブレットの現状について知っておく必要があります。Surface Book個別の特徴とは少し離れてしまいますが、最後に触れておきます。
Windowsタブレット最大の特徴は、タブレットでありながらWindows PC用のアプリケーションが全て動くということです。ここは、モバイルOSのiOSを採用したiPadでMac用のアプリが動かないのとは大きく異なります。
また、Windows 10でデスクトップモードとタブレットモードの切り替え(Continuum)や使い勝手も大幅に強化されたので、iOSやAndroidのように制約の多いタブレットと比較すると、自由度の高さは最大の魅力です。
例えば、タブレットモードでも、デスクトップモードと同じ通常のPCで動作しているWebブラウザが全く同じ性能で動きます。また、Officeソフトウェアはもちろんのこと、Adobe PhotoshopやIllustratorなどのプロ用ソフトウェアも全く問題なく動作するのです。特にSurface Bookの場合はパフォーマンスもハイエンドノートPC級なので、プロ用ソフトウェアがサクサク動くというのは大きな魅力だと思います。
その一方で、フルスペックのWindows PCであるというデメリットもあります。AppleはiPhone/iPadを作るとき、意図的にOS XをベースにiOSというモバイルOSを新規開発しました。OSを分けることでアプリの互換性は低くなりますが、それぞれの環境に最適化したユーザーインタフェースを提供し、より使いやすい環境を実現しています。
Microsoftの1つのOSであらゆる環境をサポートする戦略と、Appleのそれぞれの環境に最適化したOSを個別に提供するという戦略、どちらが正解という判断するのは非常に難しく、どちらの場合もメリットとデメリットが存在しています。
理屈上は1つのOSで全ての環境をサポートするという、Microsoftの戦略が理想的にも思えますが、iOSのような圧倒的なシェアを持つプラットフォームであれば、デベロッパーもそれぞれの環境に最適化したアプリを開発することが可能なので、よりデバイス環境に最適化されたアプリが生まれるという状況が成立します。
逆説的ですが、全てのPCアプリが動くWindows 10タブレットの弱点は、タブレットに最適化したアプリが充実していないということです。デスクトップアプリが問題なく動いてしまうということが、逆にタブレットに最適化したアプリの充実を阻害してしまっている部分があります。
具体例を挙げると、アマゾンジャパンが国内展開する電子書籍サービス「Kindle」では、Windows用にデスクトップ版のKindleアプリが提供されていますが、タブレット環境には最適化されていません。デスクトップ版はマウスとキーボードの操作に最適化されていて、タッチ操作ではiPadなどに比べて快適度が低いです。
使い勝手だけならそれでも何とかなるのですが、NTTドコモが運営する「dマガジン」のようなサービスはそもそもデスクトップ版アプリが存在しません。特に著作権が絡むようなサービスの場合、モバイルに特化した方がセキュリティ対策がしやすいので、モバイルファーストでアプリが提供される傾向があります。
Windows 10に最適化されたアプリは、Microsoftも最も充実させようと注力している部分で、PCでもタブレットでもスマートフォンでも、それぞれに最適化したユーザーインタフェースに切り替わって同一アプリパッケージが動作する「Universal Windows Platform(UWP)アプリ」の開発を推奨しています。
また、MicrosoftはAdobeと連携してPhotoshopなどのアプリをタブレットに最適化するなど対応を進めていますが、現時点ではまだ発展途上段階です。自分が使いたいサービスやアプリがWindows 10タブレットに対応しているかどうかは、購入を検討するときにチェックしておくとよいと思います。
日本上陸が待ち遠しい完成度の高い2in1ノートPC
以上、3回に渡ってUSで先行発売されたSurface Bookをレビューしてきました。できるだけ細かく感じたことを伝えられればと、毎回長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
全回を通して、Surface Bookの完成度の高さを感じていただけたのではないでしょうか。現状で第6世代Core搭載のWindowsノートPCを他のメーカーも含めて見渡してみても、非常に高い完成度を誇っていると思います。むしろ1番のライバルになるのは、同じMicrosoftのSurface Pro 4でしょう。用途や優先度に応じて、どちらを買うべきか悩ましい点が多々あります。
個人的には、パフォーマンス重視でハイエンドモデルの購入を悩んでいるのであれば、Surface Bookがおすすめです。逆にそこまでパフォーマンスは必要なく、完成度の高い万能なモバイルマシンが欲しいのであれば、Surface Pro 4がコストパフォーマンス的にもおすすめとなります。
Microsoftがここまで本気でWindowsノートPCを作ってくるとなると、従来のハードウェアメーカーも求められる基準が1段も2段も上がって、これからますますWindows PCが面白い状況になりそうで個人的にはワクワクしています。やっぱり競争が進化を加速させますからね。年明けに日本でも販売が開始されたときの反応が今から楽しみです。
なお、Surface Bookや最新のガジェット情報などは、僕の主催するポッドキャスト番組「backspace.fm」でも毎週語っているので、興味がある方は是非こちらもお聞きください。
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