スマホで覇権を握れなかったIntelの生きる道:第7世代Coreは出たものの……(3/3 ページ)
1万2000人もの人員削減、次期Atomプロセッサの中止、ARMとの提携など、戦略の岐路に立つIntel。同社は今後どこへ向かおうとしているのか。
IntelがARMプロセッサを製造する背景
しかし、現在のIntelにはより差し迫った問題がある。それは生産ラインの稼働率に関する問題だ。他のどの半導体メーカーよりも最新の製造プロセスを採用し、高品質な製品を安定供給することでIntelは現在の地位を築いている。これがPC世界において同社の寡占に近い状況を生み出しているのだが、一方でPC市場の需要がそのまま同社の供給能力に影響を及ぼすことにもつながっている。
PC市場が成長している間は製造設備を増強してもそれがそのまま売上につながるため問題はあまりなかったが、需要が減少するとなれば話は別だ。半導体製造工場のラインは稼働率が落ち、製造プロセスの微細化が進むごとに急上昇している設備投資や開発コストが回収できなくなってしまう。
ここ数年は最新プロセスの製造ラインをAtomプロセッサに割り振ることが可能だったが、もしBroxton以降の製品をキャンセルするとなると、減少していくPC向けプロセッサの穴埋めが難しくなる。前述のように、サーバ向けはそもそも個数が少ないため、IoT以外の用途でもラインを埋めることが求められる。
最後の3つ目は「当面の減少分をなんとかフォローする」だが、ここで出てきたのが「Intelの工場でARMプロセッサを生産する」という話になる。
具体的には、ARMのIP(知的財産)、つまり「ARM Cortex-A」といったARMが提供するプロセッサコアの設計図を組み込んだSoCをIntelが製造し、顧客であるファブレスの半導体メーカーに提供する。Intelは台湾TSMCなどの「ファウンダリ」となるわけだ。
ARM IPは「ソフトマクロ」などと呼ばれる論理設計図の状態で提供されるが、これをIntelの製造プロセスに最適化されるように同社自らが開発を行う。「Intelの最新製造プロセスでARMコアのSoCが製造できますよ」ということをセールスポイントに、同社はファウンダリビジネスを展開することになる。
ARM IPが基本となるが、契約次第ではAppleの「A」プロセッサやQualcommの「Snapdragon」のように、アーキテクチャライセンスで開発されたARM IP以外の製造も将来的にIntelが受け持つ可能性もある。
PCコンポーネントの主要ベンダーとして大成したIntelは、PC市場の変化や縮小とともにその在り方が問われ、自らを変革する必要に迫られている。今後しばらくはアップダウンを繰り返して市場は緩やかに推移するものの、5~10年先にIntelがどのようなポジションを得て、どのような姿になっているかは分からない。2016年はIntelにとって、そんな大きな変化の分岐点にある。
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