PC最盛期の重要イベント「IDF」がついに終了 20年の歴史を振り返る(3/3 ページ)
テクノロジートレンドの中心にPCがいた時代。Intelの開発者会議「IDF」は業界動向を占ううえで極めて重要なイベントだった。しかし時代は変わり、IDFはその役目を終え、Intel自身も変わろうとしている。
Win-tel時代の本当の終わり
実際のところ、こうした流れの中でIDFの立ち位置が微妙になってきたのが、今回のイベント開催終了へとつながったのではないだろうか。PCプロセッサをはじめとした新製品のリリース時期とは必ずしもイベント開催タイミングが一致しておらず、これ以外の新しい分野への投資や取り組みは、本来のIDF参加者の指向と完全にマッチしているとは言い難い。
必要な情報は適時提供され、パートナー各社とは個別のミーティング機会が度々設けられており、IDFのような場所で一堂に会するメリットも薄い。さらにEMSやODMが主に中国などの中国語圏に位置している以上、情報発信先やミーティングすべき相手の所在は偏っている。PCやモバイルデバイスを取り巻く情勢の20年間での変化が、IDFの意義を失わせたのだというのが筆者の考えだ。
「PCが斜陽になった」のがIDF終了の原因だという人もいる。成長余地が少なくなったものを斜陽だと言えばそうだが、スマートフォンやタブレットの市場が伸びてなお、PCは一定の販売シェアを維持している。恐らく今後数年先もこの情勢に変化はない。PCを取り巻く環境や開発スタイルの変化から、「IDFのようなイベント形式での情報発信や情報交換」を行う意味がなくなったというのが正しいだろう。
現在、さまざまな最新デバイスが日々世界の市場へと投入され続けているが、その多くは深センなどの開発者らが集まる市場で設計と製造が行われ、各社のブランドで提供されている。
パートナーとの関係強化を主眼に、世界規模で年2回以上開催されてきたIDF。それが終了となったのは、かつて「Win-tel」と呼ばれた業界強者であるMicrosoftとIntelの2社によって構築された支配的なPCエコシステムが、本当に終焉(しゅうえん)を迎えたことを意味しているのだろう。
先日、米ニューヨークで開催された小売業界向け展示会でIntelの関係者数名との話で、「IoT(組み込み)のような世界では、Intelは地域ごとに閉じた組織運営を行っているのではなく、むしろ地域をまたいで顧客同士を結び付けることでビジネスを拡大する方向を模索している」というコメントを聞いた。
Win-tel体制が権勢を振るった時代は過ぎ去り、Intelはビジネスモデルそのものを変化させようとしているのかもしれない。
IDF16の開催3日目には、IDFとは別に「ISDF16」というFPGAのAlteraパートナー向けのイベントが開催されており、クルザニッチ氏が講演を行っている。実質的に、このステージが最後のIDFとなった
関連キーワード
Intel Developer Forum | Intel | PC
関連記事
Intel Developer Forum(IDF)、20年の歴史に幕
Intelが1997年から開催してきた開発者会議「IDF」を終了する。8月に予定していたサンフランシスコでの「IDF 2017」もキャンセルした。スマホで覇権を握れなかったIntelの生きる道
1万2000人もの人員削減、次期Atomプロセッサの中止、ARMとの提携など、戦略の岐路に立つIntel。同社は今後どこへ向かおうとしているのか。「Windows Holographic」の複合現実が2017年に一般PCへやって来る
2017年はWindows 10のアップデートにより、一般的なPCでも「Windows Holographic」が楽しめるようになるという。独自HMDからドローンまで――Intelの「IDF 2016」基調講演まとめ
Intelの年次開発者会議「IDF 2016」で発表されたことを簡単にまとめる。RealSense搭載のMR HMDやドローン、Ubuntu搭載のキャンディバーサイズのガジェットなどが披露された。詳細はリンク先の関連記事(あるいはプレスリリース)へのリンクを参照されたい。Intelが考える“PCの先にある世界”
COMPUTEXにあわせて新CPU「Broadwell-E」(開発コード名)を発表した米Intel。同社が目指す“PCの先にある世界”を同社の基調講演から読み解く。Intelがいま最も訴求したいのはSkylakeじゃない
開発者会議の原点に立ち戻った今回のIDFにおける基調講演では、IoTに対する取り組み訴求がメインの内容となった。「Skylake」が動いた! IntelがIDF14で次期アーキテクチャの動作デモを初公開
登場時期は2015年後半になるという。14ナノ世代SoC「Broadwell」の実働デモをIntelが公開
米国で開催されているIDF 2013の目玉は、14ナノメートルプロセスルールの「Broadwell」アーキテクチャや、Atomの次世代プラットフォームである「Bay Trail-T」の詳細だ。現地からリポート。Intel、第4世代Coreの統合グラフィックス上位版を「Iris」と命名
“Haswell”の統合グラフィックスについて、IDF Beijing 2013で公開されたeDRAM搭載版などの上位モデルに「Iris」(アイリス)の名称が使用されることが分かった。スマホのUSB給電でノートPCが動作可能に――拡張規格「USB PD」の技術デモ
IDF Beijing 2013では、USBで100ワットまで給電できる「USB PD」の技術デモが披露されたほか、現行2倍のデータ転送を実現するUSB 3.0拡張規格に対応した製品の投入時期についても見通しが語られた。Intel次世代プロセッサでUltrabookやタブレットはどう変わる?
Intelのモバイル戦略が加速する。中国・北京市で開催された開発者向け会議「Intel Developer Forum Beijing 2013」では、急成長を遂げたスマートフォンやタブレット市場に対するIntelの取り組みと、今後の戦略が示された。第4世代CoreはスマホからPCをオーバークロック可能
北京で開催中の「Intel Developer Forum」で、“Haswell”ことIntelの次期主力CPU「第4世代Coreプロセッサー」に関する情報が大幅にアップデートされた。OC機能拡張を中心に紹介。ちょいと未来のUltrabookを妄想する
IDF 2012でIntelは、HaswellなどIntelプラットフォームのアップデートを多数紹介している。その資料から浮かび上がる2013年以降のUltrabookの姿とは。Haswellのココが大事です──「SOixステート」「選べるグラフィックスコア」
IDF 2012では、2013年後半に登場するだろう「Haswell」に関する情報を公開した。依然として断片的だが、ポイントとなる事項をまとめておこう。「Haswellが動いた!」──“次世代”Ultrabookも集結したIDF基調講演
「Intel Developer Forum 2012」がスタートした。Windows 8発売直前、そして、2013年の「Haswell」投入に向けて、彼らが発信するメッセージとは?GoogleはIntel Architectureで最適化を進めていく
“ARMでWindows 8が動くかも”と盛り上がる米国西海岸。その近くのIDF基調講演で、Googleの幹部が、Intel ArchitectureでAndroidが“よく動くようにする”と宣言した。インテル、“Oak Trail”と“その先”を訴求
インテルは、4月27日に2011年の1~4月における主な活動に関する報告と、IDF 2011 北京で発表した“Oak Trail”世代のAtomプラットフォームの説明を行った。インテルが期待する「Sandy Bridge」と「女子力」
インテルは、Intel Developer Forum 2010(IDF 2010)で紹介された次期主力CPU「Sandy Bridge」の詳細説明を日本の関係者を対象に行った。動画で体感するSandy Bridgeの“相対”性能
大事なところだから何度もいうが、IDF 2010の主役はSanday Bridgeだ。Intelの次世代主力CPUを担う新しいコアを搭載するPCの性能をその目で確かめよう。McAfeeの買収に見るIntelの「全方位外交」
自作PCユーザー的な主役は「Sandy Bridge」だが、ITビジネスに興味があるなら、IDF直前の「McAfee買収」も気になる。その狙いを基調講演で探る。「Sandy Bridge」のCPUコアが“整然と”並ぶ理由とは
米国で“秋の”IDF 2010が始まった。主役は次期主力CPU“Sandy Bridge”だ。IDFで明らかになった情報を、基調講演と技術セッションから紹介しよう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.