Microsoftが75億ドルで買収したGitHubとはどんな企業? 米国オフィスを訪ねて:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/3 ページ)
Microsoftが膨大な資金を使って買収するGitHubとはどんな企業なのか。その歴史を振り返りつつ、米国オフィスを訪問したレポートをお届けする。
サンフランシスコの新オフィスにGitHubの文化をみる
GitHubは創業当時から米カリフォルニア州サンフランシスコを拠点にしており、現在の本社もサンフランシスコ市内の「SoMA(ソーマ)」と呼ばれる一角にある。
筆者はこれまで、Adobe Systemsに買収される前のMacromediaや、Twitter、Square、Stirpeなど、さまざまなサンフランシスコを拠点としたスタートアップ企業のオフィスを訪問してきたが、GitHubもまた「典型的なサンフランシスコ企業のオフィス」といった趣だ。
これら企業のオフィスに共通しているのが、現地の古い建物や倉庫をそのまま生かしてオフィス空間に仕立てている点にある。木製の柱やれんがの壁などがそのままむき出しになっており、天井の空間も梁(はり)やパイプの構造物が露出した状態で、ライトなどがぶら下がっている。
パーティションのようなものもなく、非常に開放感あふれたデザインになっているのも特徴だ。ミーティングできる場所があちこちに用意されており、気分転換や仕事に集中するための本来のデスクとは異なる作業スペースもある。休憩のためのレクリエーション施設や自転車を保管する場所もあり(サンフランシスコは治安がよくないので自転車を建物内に持ち込むのが普通)、さらにはヨガ教室やジムもある。
Googleなどのイメージから「シリコンバレーの企業には遊戯施設や食べ放題の食堂がある」といった印象を抱いている人がいるかもしれない。しかし、サンフランシスコのスタートアップといえば「古い建物を使ったちょっとおしゃれでのびのびとしたコワーキングスペース」といった雰囲気だ。
米国のIT企業買収では、現地の人材を生かすために拠点は動かさない、あるいは最低限の集約にとどめて転勤はさせないというケースが多くみられる。実際、買収を機に主要な人材が一気に流出するケースがあり、その理由の1つに拠点集約による転勤の強要が挙げられるからだ。故に人材確保を優先するIT企業ほど、主要都市や著名大学の周辺にオフィスを構え、現地のタレントをなるべく多く確保しようとする。
その意味で、ワシントン州シアトルを拠点にして企業文化も異なるMicrosoftが、カリフォルニア州サンフランシスコのシリコンバレー圏にあるGitHubを吸収して一体化することは難しいだろう。
GitHubの従業員の多くは企業文化とともに、サンフランシスコのあるベイエリア周辺の風土を気に入って住んでいるわけで、さじ加減1つで企業は一瞬で崩壊する。色気を出して手を付けないのがベターな選択肢だと考える。
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