第2世代Ryzenの省電力モデルと「StoreMI」を試してみる(4/4 ページ)
「StoreMI」は意外と速くて導入も簡単だった。
マニア向けだが思っていたよりも速いぞ!
さて、それぞれの転送速度を調べてみよう。HDD単体、SSD単体、StoreMI構築当初の速度をそれぞれ比較した。
CrystalDiskMark 6.0.0の結果の通り、HDDはSSD(今回はNVMe SSDを使用)と比べてかなり遅いわけだが、StoreMIと組み合わせるとシーケンシャル速度の一部ではSSDに匹敵するスピードへと向上している。
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークのローディングタイムや、PCMark 8のStorage Testも同様の傾向だ。
ただしこれは作成直後のクリーンな状態での計測。ではSSD側の容量を使い切ってHDD側にもデータを書き込む状況となった時にどのようになるかが気になるだろう。そこで、StoreMIドライブ作成後に約300GBのデータを書き込み、その後の転送速度を見てみよう。
グラフは構築直後を指標に、300GBのデータを書き込んだ後の1回目、2回目のものである。CrystalDiskMark 6.0.0は非常に特徴的な結果だった。300GBデータ書き込み直後の最初のテストであるシーケンシャルリードはガクッと落ち込んだ。これはHDD単体より多少速い程度である。しかし、以降のテストはStoreMI時構築直後とほぼ同じに戻り、2回目は全てのテストが構築直後と同じ程度の速さになっている。
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークとPCMark 8 Storage Testはともに、多少の差異はあれど構築直後が最も速く、300GBデータ書き込み後の1回目はものによってかなり遅くなるが、2回目で持ち直す、といった傾向が確認できた。また、300GBデータ書き込み直後の速度も、HDD単体ほど遅くはなかった。もちろん、さらにデータ量が増え、SSDもHDDも一杯に近づいた時にどうなるのかはまた異なった結果になるだろう。
このように、データ量的にSSDが一杯になってもおかしくない状況でも、データの多くがSSDに格納されればSSD並みの速さが出る。Fastドライブには256GBという上限があるので、どのような条件でも速くなるというわけではないが、毎日何度も使うアプリケーションなら、SSD並みの速度になるはずだ。それでは、ここまでの結果を踏まえて、StoreMIの上手な使い方を考察してみたい。
まず、起動ドライブとして利用するかどうかは、ユーザーがStoreMIをどれだけ信用できるかにもよる。もちろん検証中にトラブルはなかった。ただし特殊な手法のストレージであることは間違いない。万が一StroreMIの構成にトラブルが生じたら、データの復旧は不可能と思った方がいいだろう。StoreMIドライブを起動ドライブとして利用するなら、日々のバックアップを心掛けたい。
一方、セカンダリードライブとしてのStoreMIは、よい運用方法だ。バックアップは必要としても、起動ドライブほどクリティカルではない。特にオススメしたいのがゲームデータの保存先だ。ダウンロードゲームを楽しむ方は、テラバイトクラスのゲームデータをお持ちの方も多いだろう。そのダウンロードデータをStoreMIドライブに保存すれば、速度とコストのバランスが解決する。しかも、ダウンロードゲームだけに、クラッシュしても再ダウンロードすればデータが復旧できる。
最後に、写真や映像、事務データなどのたまに開く程度のデータは、StoreMIを使っても、期待するほど高速化の恩恵は得られないと思われる。これらについては素直に単体HDDやNASといった保存先を用意した方がよい。
いずれにせよ、AMD 470Xプラットフォームを選び、さらにStoreMIを導入しようという方は、予算もある程度あり、さらにPCスキルの高い方が中心になるはずだ。StoreMIは、OS上から簡単に導入できることに間違いないが、ユーザー視点からすればRAIDを組むことと大して変わらないのかもしれない。たとえそれが無料だったとしてもだ。
「X」ナシの第2世代Ryzenはコスパ向き。StoreMIはPCスキルとやる気次第
Ryzen 7 2700およびRyzen 5 2600は、そのグレードの最上位モデルではないだけに、パフォーマンスの視点からすれば「ほどほど」である。ただし、そこは8コア、6コアのモデルだけに、十分なパフォーマンスを持っている。つまり、普段使いのコスパのよいPCをお求めの方に検討してほしいCPUだろう。
コスパという点では、第1世代Ryzenもあるが、よほど魅力的な価格でなければ選ぶ理由はない。そこは消費電力とパフォーマンスのバランスだ。第2世代Ryzenの製造プロセスは12nmに微細化され、同じ消費電力でのパフォーマンスが向上している。それに、TDPが65Wなので、同じCPUクーラーでも95W超のCPUと比べればより静かに運用できる。ゲームや映像編集、3DCGなどの用途でなければ、性能よりもこうした普段使いの勝手の方が重要ではないだろうか。
StoreMIは、検証した通り非常に面白い技術であり、検証前に予想していたよりも高速な印象だ。個人的には、多くの人にチャレンジしてもらいたい。何しろAMD 470Xマザーをお持ちならタダで試せるのだ。
一方で、どれだけ簡単に導入できても、PC上級者向けでなければ試せる環境にはないだろうことも確か。ライバルも「Optane Memory」というストレージ技術を投入したが、この種のストレージ技術は、今後性能が向上し、コスパがよいとしても、実際に普及するのはなかなか難しいかもしれない。まずは、バックアップを含めて十分なストレージ環境をお持ちの方が、余ったSSDを「モノの試しに」活用してみるのがよいのではないだろうか。チャレンジャーを求む。
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