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「Surface Go」日本版は本当に高いのか Office付属は妥当なのか鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)

ウワサの低価格Surfaceこと、「Surface Go」がついに登場した。しかし、日本モデルは米国モデルと一部仕様が異なり、それもあって最小構成価格が高めなことで、批判の声も少なくないようだ。今回はSurface Go日本モデルのこうした点について考察する。

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日本市場ではOffice付属のPCが売れるという現状

 もっとも、こうした説明をしても「実は安かったんだ」という感想より、むしろ「納得がいかない」という感想の方が多いのではないだろうか。

 言うまでもなく、「Officeなし」のモデルも用意すれば、ライセンス分の差額で最小構成価格がもっと下がることが期待できるわけで、「日本の一般ユーザー向けにはOffice付きモデルしか用意していません。Office付きと考えると6万4800円はお得です」というのは、前提が異なるからだ。

 だが日本マイクロソフトによれば、今のところSurface Goの販売店からの引き合いは非常に好調であり、「一般向け」「法人向け」「教育機関向け」のどれも伸びが期待できるという。

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Surface Goが狙う3つの注力分野

一般向けには、10型とコンパクトで軽量なボディーを特徴として、アウトドアでの利用をアピールしていくという

 もともと日本市場ではPC本体とOfficeのセット販売が人気であり、むしろ一般的には「Officeを付属しないPCが売れない」という状況にある。Surface Goの国内発表後、SNSを中心に米国モデルより高い価格や、Officeなしの構成が選べないことに批判の声がみられたが、その声に隠れた多くの潜在顧客はOfficeの付属を歓迎しているようだ。

 もし本当に割高であると多くのユーザーが判断を下したならば、Office付属の一般向けモデルは売れないだろう。そして、早いタイミングでの値下げや、Officeなしモデルの需要に応えると考えられる。

 Surface Goは正式発表前から「iPad」対抗の低価格Windowsタブレットとして注目されていたが、Appleのハードウェア製品とは異なり、WindowsはOEM各社にライセンスされているので製品選択の幅は広く、Surface Go以外の選択肢もある。気に入ったユーザーが製品を購入すればいいだけの話だ。

 日本がMicrosoftにとって非常に「おいしい市場」になっているのは確かだが、事実それで製品が売れているわけで、人気商品をあえて値下げしてまで売る理由もないというビジネス的な判断も理解はできる。

Surface Go日本モデルに対する2つの疑問

 筆者としては、今回の件で2つほど疑問を呈したい。

 1つは、やはり、Officeのライセンスは不要というユーザーにまでライセンスを強制購入させる製品ラインアップへの疑問だ。Surface Go本来の魅力とは関係ない部分でマイナス評価を与えてしまっているのは非常に残念に思う。

 既にOffice 365のライセンスを抱えているユーザーも少なからずいるわけで、「(Officeライセンスが付属しない)法人モデルを買えばいい」というのは理由にならない(そもそも日本マイクロソフトは法人モデルを一般の個人ユーザーに直販していない)。

 日本の特殊事情として、5台のPCにOffice製品を導入可能な「Office 365 Home」が販売されておらず、代わりに最大2台のPCにビジネス用途を含むOfficeライセンスを付与可能な「Office 365 Solo」という製品が用意されているように、一般家庭向けのOffice 365の充実度が弱いという問題がある。

 これは「店頭購入したPCをそのままオフィス業務に利用する」という文化を引きずっている面もあると思われるが、PCにOfficeを付属して販売する戦略がかえってこうしたトレンドを助長しているのではないかと考える。

 2つ目はMicrosoft自身の戦略との乖離(かいり)だ。2017年5月のレポートでも触れたように、Microsoftはポリシーを変更して「Office Perpetual」(パッケージやバンドル販売で提供される、特定PCへの永続ライセンス付与型のOffice)の利用範囲を制限する方向を目指している。

 例えば、2020年10月13日以降はOffice 365関連サービスを利用するためにOffice 365のサブスクリプション契約が必須となり、Office Perpetualからのアクセスを禁止する方策を打ち出しているのだ。

 この2020年10月13日というのはOffice 2016のメインストリームサポートが終了するタイミングであり、これを境にOffice 2016を含む旧Office製品群からOutlookやOneDrive for Business、Skype for Business(Lync)といったクラウド型サービスが利用できなくなる。

 いくらOffice Perpetualの人気が日本で高いとはいえ、そのライセンスを大量にばらまく戦略は本国の思惑とどんどん乖離しているようにも思える。同時に、これは日本では諸外国ほど中小企業でのOffice 365導入が進んでいないことの証左にもみられ、このアンバランスさに対する見解をあらためて確認したいところだ。地域によって戦略が異なるというのは当然ある話だが、今回は違うと考えている。


余談だが、実はSurface GoはNFCを搭載している。筆者が最も注目しているポイントだが、Microsoftによれば「対応アプリやパートナーもないため、特にアピール材料にしていない」とのことで、宝の持ち腐れ状態なのが残念だ
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