レビュー

VEGAの血を受け継ぐスペックモンスター「Radeon VII」を試す(4/4 ページ)

最先端の7nmプロセスに4チップのHBM2による16GB容量&1TB/sなグラフィックスメモリと、スペックはRadeonシリーズのフラグシップ。その実力は?

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 さて、Shadow of the Tomb Raider(DirectX 12)では、向上率が3DMarkやTom Clancy's Ghost Recon Wildlandsと同じ傾向に戻る。そしてやや重めのタイトルということもあり、Radeon VIIの4K時で見ると、最高画質は45fpsで60fpsを大きく割り込む。高あるいは中画質でなんとか……といったところで、60fpsを満たしたければ低画質まで引き下げる必要があるという結果だ。ただ、WQHDになると大きくフレームレートが向上し、最高画質でも余裕で60fpsを超えてきた。


Shadow of the Tomb Raider(3840×2160ピクセル)の結果

Shadow of the Tomb Raider(2560×1440ピクセル)の結果

Shadow of the Tomb Raider(1920×1080ピクセル)の結果

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONベンチマークは、4K高品質で普通の評価にはなった。Radeon RX Vega 64ではやや重い評価だったので、ここは向上といえるだろう。ただ、普通評価なので力不足感はある。4Kで快適評価が得られたのは軽量品質でようやくだ。WQHDでも快適評価は標準画質から、フルHDでは高品質でも快適評価が得られたが、どのあたりを狙っていけばよいか難しいところである。


FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION(3840×2160ピクセル)の結果

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION(2560×1440ピクセル)の結果

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION(1920×1080ピクセル)の結果

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONベンチマークは、GeForceに最適化されたタイトルでもあり、Radeonとしてはかなり不利。思うようにフレームレートが上がらない印象がある。実ゲームではこのようにゲーム開発会社がRadeonかGeForceか、どちらかに大きく最適化が偏ることがある。最適化されたタイトルを増やすには、今後、AMDがゲーム開発会社にどれだけコミットメントしていけるかによるだろう。

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 VR性能をVRMarkで見てみる。それぞれのテストでRadeon RX Vega 64を上回っているが、ここまでのテストと比べると向上率がそこまで大きくない。おそらく、クロックやメモリ帯域よりも、ストリームプロセッサ数がモノを言うのだろう。そしてスコアもそこまで高いものではない。ハイエンドとはいえるスコアであることは確かで、VRを楽しめることは間違いないが、ライバルのスコアを見ると、何か根本的なアーキテクチャ側の最適化が必要なのかもしれない。


VRMarkの結果

 最後に消費電力。アイドル時については50W弱で3製品が並び、省電力機能に関しては十分に評価できる。高負荷時については、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク時、3DMark時ともに、Radeon RX Vega 64と比べて大幅に低い値だった。実運用ではRadeon RX Vega 64より電力負荷が低く済むという点は好感触。8ピン×2基のGPUとしては良好といえるのではないだろうか。7nmプロセスへの微細化や、ストリームプロセッサ数を減らしたことで改善されたのだろう。


消費電力

 熱に関しては、正直なところAMD製品のセンサー温度はどれを見るのが正しいのか判断が難しいところもあり、コレだということは言いづらい。しかし、Radeon RX Vega 64カードの場合、ベンチマーク直後はカード(バックプレートなど金属露出面)に触れることをためらうくらい熱かったのに対し、Radeon VIIはそうしたことがなかった。3連ファン化の効果もあるだろうが、実際、消費電力が下がっているので、発熱量も小さいだろうというのが検証しての予想だ。ただ、動作音に関してはいわゆるオリジナルクーラーの3連モノと比べると大きめ。Radeon RX Vega 64の後方排気クーラーよりも静かになったが、過度に期待するのではなく、ケース側で消音を考えるのがよいだろう。

Vega系の最終進化形態。しかしもう1つ決め手が欲しいところ

 Radeon VIIカードを触っての印象は、先の消費電力でのコメントの通り、じゃじゃ馬だったVEGAシリーズの中では非常に扱いやすいものとなったというのが大きい。Radeon新製品のテスト時にありがちな不安定さもなかった(Radeon RX Vega 64は連続負荷をかけると冷却不足とみられる強制リセットがかかることもあった)。

 テクスチャがおかしくなるなどの現象も見られたが、そうした部分はドライバの最適化が進めば解消されていくだろう。パフォーマンスについても同様だ。このあたり、ライバルと比べるとソフトウェア開発に対する姿勢が異なるので、AMDファンは温かい目と長いスパンで見守るのがよい。

 パフォーマンスは、Radeonの最上位である点に間違いはない。HBM2で4チップ、1TB/sのスピードで16GBの容量と、スペック部分では非常に興味がわく。マニアなら一度体感しておく価値はある。

 しかし、ライバルと比較してどうだ、というところが難しい。写真の通り、Radeon VIIのダイにはもう拡大するスペースがない。まさか今後メモリを半減してストリームプロセッサを増強するという選択もないだろう。なのにライバルにはGeForce RTX 2080 Tiというより上位のGPUがある。7nmという最先端プロセスを導入したのに、アーキテクチャ的には行き詰まりを感じる。

 価格は、AMDがライバルと話すGeForce RTX 2080と同じ価格帯の10万円前後だ。3DMarkのGraphicsテストでのパフォーマンスは確かにそのあたりにはなるようだ。しかし、Far Cry 5やFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONベンチマークのように、実ゲームでのフレームレートは、最適化によって左右されることがある。大差ではないので、数fpsなら好みのものを選べばよいのではないかと思うが、ユーザー心理として同じ額を出すならよりフレームレートの高いものを選ぶのも理解できる。オリジナルクーラーモデルやオーバークロックモデルなど、Radeon VIIを選ぶ後押しがあるとよいのだが、果たしてAMDはどのような判断を下すのだろうか。

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