Amazonプライムデー2019の裏側で加速するロボット化:ITはみ出しコラム
Amazonが2019年の「プライムデー」を過去最長の48時間にわたって開催。48時間のセール期間中、1億7500万点以上の商品が売れました。その裏側でAmazonは、購入された大量の商品をより効率よく送り届けるため、配送業務の自動化をガシガシと進めています。
今年もAmazonの「プライムデー」が華々しく開催されました。年に1回の有料会員(プライム会員)向けセールです。昨年は38時間だったのが、今年は7月15~16日の2日間で48時間に伸びたこともあり、少なくとも販売点数では記録を更新しました。
日本でのベストセラーは日用品にシフト
プライム会員も、だいぶプライムデーに慣れてきたようで、ベストセラーが年々日用品にシフトしているようです。日本でのベストセラーはペットボトルの水、紙おむつ、モバイルバッテリー。いずれも値引き率が高く、(モバイルバッテリーは別ですが)自分で持ち帰るには重かったりかさばったりする日用品です。
Amazonのハードウェアももちろん値下げされ、かなり売れたそうです(Amazonはいつも、「すごく売れた」と言うだけで具体的な数字は出しません)。
私も6月に発売されたディスプレイ付きスマートスピーカー「Echo Show 5」をすぐには買わずに「ほしいものリスト」に入れておいて、プライムデーのタイムセールで4000円引きになったところでポチり。
ポチったときには「7月31日にお届け」になっていましたが、19日にもう届きました。Amazonが予想したよりは売れなかったのかも。早速、ダイニングテーブルに置いている小さなディスプレイ付きスマートスピーカーの「Echo Spot」と交代させるためにセットアップしました。Echo Spotはこれからはデジタル時計としてオーディオラックにのいてもらいます。
後は、好きな作家のエッセイが半額以下になっていたのでKindle本を数冊(Kindle本の値下げ分は作家の印税には反映されません)と、ささやかなお買い物でした。
プライムデーの裏側で
米Amazon.comのジェフ・ベゾスCEOはプライムデーの成果を発表するプレスリリースで「プライムデーをお客様のために実現してくれた世界中のアマゾニアン(Amazonの従業員のこと)に深く感謝する」と語りました(昨年はこういうのはなかった)。
実はプライムデーにぶつけて、米国や欧州の配送センターの従業員が労働環境改善を求めるストライキを敢行しました。ベゾスさんのコメントからみると、大きな遅配にはつながらなかったようですが、注目を集めることにはある程度成功したと思います。
Amazonのだだっぴろい配送センターで限られた時間内に注文品をピックアップし、梱包(こんぽう)するのは人間にとってかなり過酷な仕事です。メディアからの報道などもあり、最低賃金はアップしましたが、それでもまだまだ不満は解消されません。
同社は2012年にロボット企業のKivaを買収したころから、配送業務の自動化をガシガシと進めています。
つらい仕事をロボットに任せられれば、従業員は少し楽になるんじゃないかと思いきや、今度はロボットが人間の従業員を監視し、例えば梱包作業のスピードが遅い従業員をクビ候補としてロボットが報告していると報じられました(米The Vergeの記事より)。これはきつそうです。
Amazonは多分、将来的には配送センターを完全自動化したいんでしょう。人間の5倍の速さで梱包するロボットも導入しているそうです。
そうなれば、「ロボットに酷使されている感」を持つ従業員は減りそう。というか、そうなったら人間の従業員が不要になりそうです。でも、不要になる従業員を解雇したら社会問題になってしまうので、Amazonは最近、自動化の影響を受ける従業員の再教育にどどーんと7億ドルを投じると発表しました。
注文品のピックアップなど、ロボットの方が素早くできる仕事をやっている従業員に、人間にしかできない仕事にシフトしてもらうために勉強させる、というのです。
この発表の前から徐々にシフトは始まっていて、例えばロボット工学の知識のないパートタイマーに勉強させて多数のロボットの動きを管理する「フロー制御スペシャリスト」として正社員に昇格させたエピソードなどをアピールしています。
Amazonの世界での従業員数は約65万人(2018年第4四半期の業績発表より)。再教育でこの大所帯を保つことができるでしょうか。ひとごとではないので、気になります。
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