「Amazonプライム」がついに値上げ それでも元は十分取れる?:ITはみ出しコラム
ついに値上げとなった「Amazonプライム」。米国ほどの値上げではありませんが、日本で初めての価格改定ということもあり、注目を集めています。
Amazon.co.jpの有料会員向けサービス「Amazonプライム」がついに値上げです。年会費は3900円(税込、以下同)から1000円値上がりして4900円に、月会費は400円から100円値上がりして500円になりました。
2014年に米Amazon.comがAmazon Primeの年会費を79ドルから99ドルに値上げしたときも、2018年に月会費を2ドル値上げして12.99ドルにしたときも、「日本はいつかな」とビクビクしていましたが、それがついにやってきたのです。
日本では、2007年にAmazonプライムのサービスが始まってから12年で初の値上げとなります。でも、米国では最初の会費から30%以上値上げしているのに対して、日本では今のところ約20%の値上げにとどまっています。年会費の場合は月額約83円高くなったということで、安売りのペットボトル飲料1本分くらいです。
米Bloombergは、ヤマト運輸によるAmazonを含む取引先との値上げ交渉に触れ、また、物流コストと人件費が高くなったことが小売り業界を圧迫しているので、アイスクリームやカップラーメンも値上げしている、と解説しています。
そういえばこの「ITはみ出しコラム」でも「ヤマト運輸とともにAmazonプライムも値上がりする?」という話をしていました。
その際に、「仮に日本のAmazonプライム会費を値上げするとしても、現会員が退会しなくてもいっかと思うような、絶妙な価格にするんでしょう」と書いたんですが、年会費4900円は絶妙な価格ではないでしょうか。
Amazonプライムのさまざまな特典
Amazonプライムには、「当日配送」(600円)や「お急ぎ便(最短翌日配送)」(500円)、「日時指定便」(500円〜)の利用料金が無料になる配送特典があります。また、「プライム・ビデオ」「Prime Music」「Prime Reading」といったコンテンツの見放題、聴き放題、読み放題サービス、写真データを無制限で保存できるクラウドストレージ「Amazon Photos」など、さまざまな特典が付いてきます。
これが高いか安いかは人によるでしょうけれど、引きこもりがちな私は、配送料が無料なだけでも十分に元が取れています。
Amazonプライムから退会しようとすると、登録、更新してから現在までに節約できた配送料が表示されます。私はAmazonで頻繁に買い物をしているので、今年1月の更新(会員になったのは2015年1月)からでも1万9000円分の配送料が節約できているのが分かりました。
入院している叔母にパジャマや雑誌を購入して病院に直接送ったり(病院の了解を得ています)、この2月に老人ホームに入所した母の小型冷蔵庫やら加湿器やらチェストやらハンガーやらを購入して直接送ったりと、自宅以外にモノを送るのにもフル活用しています。
値上げしなくちゃいけないの?
少し視点を変えましょう。世界でサービスを展開しているAmazonは、各国の事情に合わせて価格や提供するサービスを変えています。やり方が日本の事情に合っていなくて失敗した出品者負担のポイント還元(Amazonが直接販売する分はもちろんAmazonが負担します)は、米国ではやっていません。
このポイント還元は、Amazonが取引条件を一方的に変更しようとしたと受け取られ、こじれてしまいました。Amazonとしては、出品者がAmazon上で販売しやすいように便利なツールをいろいろ使わせてあげてるし、何といっても膨大な顧客データに基づくレコメンド機能で助けてあげているんだから、このくらい当然、という気持ちだったんじゃないでしょうか。
Amazonは2018年の10〜12月期に日本で「フルフィルメント by Amazon」(出品者の商品をAmazonの倉庫に置かせてもらって発送をAmazonに代行させるサービス)の料金を値下げするなど、出品者へのサービスを改善していないこともないのです。
Amazon.comのジェフ・ベゾスCEOが毎年4月に公開している株主向け公開書簡の2019年版の出だしは、Amazon上で販売された商品の総売上に占める出品者からの商品の割合推移でした。1999年に3%だったのが、2018年には58%になっています。
「出品者の売上高の年平均成長率は52%だ。同じ期間のeBay(出品者だけで成り立っているeコマースサイト)の成長率は20%だった」とベゾスさん。
これだけの成長率をたたきだせた主な理由は最高の販売ツールを提供しているからだとベゾスさんは主張します。特に、フルフィルメント by Amazonとプライムサービスのコンビが顧客満足度を高めていると。
これは私も実感しています。例えば、複数の出品者が同じ商品を売っている場合、価格よりも発送元がAmazon.co.jpかどうかで選ぶことが多いからです。
出品者からの直送だとAmazonプライム対応でないこともあり、梱包(こんぽう)が手作り感満載だったりもします(でも詰め物が普段読まないスポーツ新聞だったりするのは、それはそれで味があって好きでした)。Amazonの倉庫からの直送なら梱包のレベルもある程度安心です。
Amazonはここ数四半期こそ絶好調の黒字ですが、倉庫を建てたりAIツールを開発したりで湯水のようにお金を使ってここまできました。
ベゾスさんは今後も人材育成や新技術にがんがん投資していくと意気込んでいます。これからもAmazonが便利になっていくことに期待して、私はプライム会員のままでいます。
関連記事
- 次は「AirPods」対抗の無線イヤフォン? 気付けば身の回りはAmazonハードウェアだらけに
Amazonが「Alexa」搭載の完全無線イヤフォンを開発中とのうわさが話題ですが、気付けば、身の回りにAmazonのハードウェアがあふれつつあります。 - AmazonのメッシュWi-Fiルーター「eero」買収が意味すること
AmazonがメッシュWi-Fiルーターのメーカーであるeeroを買収しました。この買収でAmazon Echoとスマート製品の連携がよりスムーズになることが期待できる一方、データの扱いについては気になるところもあります。 - AmazonがようやくChromecastを販売再開 Googleとの終戦に向けた大きな一歩?
ユーザー不在の締め出し合戦を繰り広げてきたAmazonとGoogle。Amazonが「Chromecast」の販売を再開したことで、ようやく状況が変わるかもしれません。 - Amazonが「音声アシスタント対応の電子レンジ」で生活家電に参入するワケ
米Amazon.comが大量の新製品を発表しました。日本でもスマートスピーカー「Amazon Echo」の新モデルが売られますが、印象深いのは初のオリジナル家電として、Alexa対応の電子レンジ「AmazonBasics Microwave」を発表したことです。 - 「Amazon Echo Spot」がやってきた 家に4台のスマートスピーカーを置いて分かったこと
ディスプレイ付きということで買い足した「Amazon Echo Spot」。これでうちのスマートスピーカーは4台になりました。その使い分けについて紹介します。 - Amazon史上最大の「プライムデー2018」振り返り トラブル発生も1億点を販売
Amazonが年に1度のプライム会員向けセール「プライムデー2018」を開催。初日のトラブルも何のその、36時間で1億点以上のセール商品を受注し、過去最高の売り上げを達成しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.