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Windows 10Xと「Surface Neo」「Suface Duo」の疑問を整理するWindowsフロントライン(3/3 ページ)

Microsoftがニューヨークで発表会を開催し、Surfaceシリーズのラインアップを一新。新たなモデルも投入するなど、アグレッシブな姿勢を示した。そこに浮かび上がる疑問を整理してみた。

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Androidと携帯市場再参入の理由

 Surface NeoとWindows 10Xの話題だけでもお腹いっぱいなのだが、今回多くの人が驚いたサプライズ発表が「Surface Duo」だろう。Microsoftから投入される“Androidスマートフォン”であると同時に、Windows 10 Mobileで同事業から手を引いたMicrosoftの「市場再参入」製品だからだ。以前、「2020年に製品投入される予定のMicrosoftの2画面デバイスではAndroidアプリが動作する」といううわさがあったが、これは奇しくも「Windows上でAndroidアプリを動作させる」のではなく「MicrosoftがAndroidスマートフォンを出す」という形で実現してしまった。

OSにAndroidを採用した「Surface Duo」

 「なぜAndroidなのか」という点だが、複数の理由がからみ合っている。まず「Windows 10がスマートフォンを動作させるようなソフトウェアスタックになっていない」ことが原因で、現状の選択肢として「Androidしかなかった」というのが分かりやすい理由だ。

 後付け的な理由では、「現状のWindows 10XはIntelプラットフォーム専用」という理由があり、Surface Neoが採用するSoC「Lakefield」が適したフォームファクターの制限から、より小型で“スマートフォン的”な製品を目指すにはSnapdragonを採用せざるを得ず、結果としてAndroidに選択肢が絞られたともいえる。

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 過去の一連の取材から、現在のSurface開発チームは「こういうコンセプトの製品を使いたいから、それを実現するためのハードウェアを開発する」という手順で製品が出てきていることが分かっている。

 すなわち「2画面利用の可能なスマートフォンがほしい」というのがSurface開発チームの要望であり、それを実現する選択肢としてAndroidを選ぶしかなかったというのが実情だと筆者は想像する。2画面コンセプトを真に生かすにはOSとハードウェアレベルで手を加える必要があり、SamsungのGalaxy Foldのようなデバイスでは開発チームのコンセプト実現には不十分だ。OEM自らがカスタマイズ可能なAndroidはうってつけのOSであり、「コンセプト実現のための実験場」という位置付けのデバイス「Surface Duo」が誕生したというのが筆者の予想だ。


Samsungの折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold」

 MicrosoftといえばOSの会社、しかもWindowsでPC世界を牛耳っているというのが世間の認識かもしれない。だが現状のMicrosoftはOSそのものにはそれほどこだわっておらず、むしろその上でいかにシームレスに自社のサービスがスムーズに利用できるかの方を重視している。後日本連載でもフォローしていくが、近年の同社のLinuxへの入れ込みはかなりのもので、むしろWindowsのライセンス収入を削ろうが構わないとさえ思えるほどだ。

 一方で、デバイス間でのサービスやファイルの受け渡しをスムーズに実現するための仕組みをあらゆるプラットフォームに仕込もうとしたり、その入り口となるEdgeブラウザの利用拡大のためにChromium Edgeの開発を2020年リリースに向けて進めたりと、OSとアプリケーションの中間にあたるレイヤーの拡充を重視している。Chromium Edgeについては2画面デバイス対応の仕組み実装が進んでいるという話もあり、Surface DuoとSurface Neoの登場に向けた下準備は既に整いつつあったというのが現状だ。

 なお補足になるが、前出の「WCOS」というのは、あくまでWindows 10のコアコンポーネントのみを切り出したソフトウェアスタックであり、基本的にはWindows 10そのものであることに注意したい。もし20H1や20H2でWCOSのコンセプトがWindows 10に本格導入された場合、WCOSに通常のデスクトップ画面など「クラシックシェル」の機能を付与したのが「Windows 10」、2画面デバイス用の処理機構を付与したのが「Windows 10X」という風に考えていいのかもしれない。

 また、Windows 10Xはシングルディスプレイのデバイスでも動作するため、使い方次第ではChrome OSの代替にもなる。理屈上、Windows 10XでもWin32アプリケーションは動作するため(おそらくUWPであることが条件)、役割的にオーバーラップするのは「Windows 10 S mode」だが、このあたりは今後より技術情報が出てMicrosoftの戦略が明らかになることで、統合整理されていくだろう。

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