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ついにハイエンドで“ガチンコ”勝負 AMDの新型GPU「Radeon RX 6800/6800 XT」の実力をチェック(1/5 ページ)

間もなく発売するAMDの新型GPU「Radeon RX 6800」「Radeon RX 6800 XT」。同社初のハードウェアリアルタイムレイトレーシング(RT)に対応したことを始めとして、注目点は多い。RT対応の“先輩”であるGeForce RTX 30シリーズと比較しつつ、その実力をチェックしていく。

 間もなく発売を迎えるAMDの新型GPU「Radeon RX 6800」「Radeon RX 6800 XT」。先日、筆者はこれらのリファレンスカード(メーカー自らが設計したグラフィックスカード)のパッケージとカードの外観レビューを行った。

 今回は、いよいよリファレンスカードの“実力”をベンチマークテストを通してチェックしていく。


Radeon RX 6000シリーズの実力はいかに……?(写真は「Radeon RX 6800 XT」)

「RDNA 2」アーキテクチャを採用 プロセスは据え置きで性能向上

 Radeon RX 6000シリーズ(開発コード名:Big Navi)は、新しいGPUアーキテクチャ「RDNA 2」を採用している。

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 先代の「RDNA」アーキテクチャと比べると、製造プロセスこそ7nmと変わらないが、内部設計を最適化することで動作クロック(周波数)を前世代から約30%ほど引き上げている。加えて、新たなキャッシュシステム「Infinity Cache(インフィニティキャッシュ)」を搭載していることも特徴だ。

 Infinity Cacheは、AMDのサーバ向けCPU「EPYC(エピック)」で使われたL3キャッシュ用メモリをベースに設計されたキャッシュメモリで、RDNA 2エンジンとは「Infinity Fabric」で連結される。バス幅は256bitのまま据え置かれているが、256bitのGDDR6メモリ比で約3.25倍、384bitのGDDR6メモリ比でも約2.17倍の伝送帯域を確保している。

 結果的に、RDNAアーキテクチャのGPUと比べると最大50%以上のパフォーマンス向上を図れたという。


RDNA 2アーキテクチャは、RDNAアーキテクチャ比で約1.3倍の動作クロックを実現。同一クロックで稼働した場合の消費電力は半減している

7nmの製造プロセスはを維持したまま、前世代比で50%前後の性能アップを達成。大きなジャンプアップを果たしている

Infinity CacheはEPYCで使われたL3キャッシュ用メモリをベースに設計された。これをRDNA 2エンジンとInfinity Fabricで連結している

キャッシュにヒットすることが前提となるが、バス幅384bitのGDDR6メモリを上回る帯域を実現できるという

 加えて、Radeon RX 6000シリーズでは、同社の最新CPU「Ryzen 5000」シリーズ(デスクトップ向け第4世代Ryzenプロセッサ)と組み合わせた場合に「Smart Access Memory(SAM)」という機能を利用できる。

 SAMはPCI Express 4.0バスを介してCPUからグラフィックスメモリに無制限にアクセスできるという機能で、「AMD X570」「AMD B550」チップセットを搭載するマザーボードと組み合わせることで利用できる。ただし、マザーボードの出荷時期によってはUEFI(BIOS)のアップデートが必要な場合もある。

 GPUの自動オーバークロック機能「Rage Mode」とSAMを組み合わせと、さらなるパフォーマンス向上を期待できるという。Rage Modeを利用したオーバークロックはグラフィックスカードの保証範囲内で使えることが大きなメリットだ。

 ただし、Radeon RX 6800ではRage Modeを利用できないの注意しよう。


Ryzen 5000シリーズと組み合わせると、PCI Express 4.0バスを介してCPUが直接グラフィックスメモリにアクセスできるSmart Access Memoryに対応する

Smart Access Memoryを利用すると、フレームレートが平均で6%改善したという

Radeon RX 6800 XT/6900 XTで利用できるRage Modeを使うと、メーカー保証を無効にせず自動でオーバークロックできる

 Radeon RX 6000シリーズは、AMDのGPUとしては初めてハードウェアを使ったリアルタイムレイトレーシング(RT)に対応している。

 次世代ゲーム向けグラフィックスAPI「DirectX 12 Ultimate」が用意している各種機能にも完全対応している。RTを利用するために必要な「DirectX Raytracing(DXR)」はもちろん、可変レートシェーディング(VRS)、メッシュシェーダー、サンプラーフィードバックもサポートする。NVMe SSD上に格納されているデータをGPUが直接読み出す「DirectStorage for Windows」も利用可能だ。


DirectX 12 Ultimate(とVulkan)に完全対応している

前世代を軽く上回るスペック ようやく「4Kゲーミング」の土俵に

 現時点において、Radeon RX 6000シリーズは3製品が発表されている。そのスペックを見てみると、いずれもブースト(オーバークロック)時の動作クロックが2GHzを超えている。グラフィックスメモリは全モデルで16GBと非常に余裕がある。これら2つのポイントは、NVIDIAの「GeForce RTX 30」シリーズに対する明確な優位性となっている。Infinity Cacheの容量も全モデルで128MBだ。

 消費電力は上位製品である「Radeon RX 6900 XT」と「Radeon RX 6800 XT」が300W、「Radeon RX 6800」が225Wとなっている。接続バスは、前世代と同じPCI Express 4.0 x16となる。


Radeon RX 6000シリーズ(とRadeon RX 5700 XT)の主なスペック

 理論上の性能は、現時点でのエントリーとなるRadeon RX 6800であっても、先代の最上位である「Radeon RX 5700 XT」を軽く上回る。Radeon RX 5000シリーズでは4Kゲーミングを余裕でこなせるレベルのハイエンドGPUをリリースできなかったAMDが、満を持して競合(NVIDIA)に比肩するレベルの高性能GPUを投入してきたということになる。

 米国における想定販売価格は、Radeon RX 6800 XTが649ドル(約6万7600円)、「Radeon RX 6800」が579ドル(約6万円)で、12月8日発売予定の「Radeon RX 6900 XT」が999ドル(約10万4000円)となっている。今回レビューするRadeon RX 6800 XTとRadeon RX 6800の価格設定は、「GeForce RTX 3080」の699ドル(約7万2600円)、GeForce RTX 3070の499ドル(約5万1800円)の“間隙(かんげき)”を突くような設定となっている。


AMDは「GeForce GTX 1080 Ti」や「GeForce RTX 2080 Ti」からの置き換えを勧めている
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