デジタルの絵が持つ、完全に地上から消えてしまうというイメージも嫌いじゃない――寺田流「デジタル絵画の変遷」:寺田克也さんに聞く(1/4 ページ)
イラストレーター/漫画家の寺田克也さんが『寺田克也SKETCH』を出版した。そこに至るまでの道のりや、デジタル作画~データの保存についてお話を伺った。
寺田克也さんは、言わずと知れた日本を代表するイラストレーター/漫画家の1人である。
2021年5月に発売された最新の画集『寺田克也SKETCH』(パイ インターナショナル)は、500ページみっちりと寺田さんのSKETCHが収録された大ボリュームの作品集になっている。
いつか個人でデジタル機材が持てる時代が来る
“SKETCH”とは、寺田さんが個展で展示して販売している、ノートなどに描いた比較的小さい絵画のことだ。
筆者も個展会場を訪れたことがあるが、壁にズラリとSKETCHが飾られていた。会場を訪れているファンはその1枚1枚に熱い視線を向けており、ほとんどの作品は売約済みになっていた。この本に載っている絵は、商品として既に売れてしまっている作品だ。
この画集に収録されているほとんどの作品は、アナログな手法で描かれている。
だが逆に、寺田さんと言えばかなり昔から、デジタルで作品を作っていたことでも知られている。今回は、寺田さんに寺田流の「デジタル絵画の変遷」を伺った。
「デジタルで絵が描けるって認識したのは、阿佐美(阿佐ヶ谷美術専門学校)の3年生のときかな。映像研究室っていうのがあって、そこに『いづみや画材専門店』(現在のToo)が開発したルミナートっていう機材が導入されたんだよね」
ルミナートは、ビデオにテロップをつけるのに使われるテロッパーと呼ばれる商品だった。
「テロッパーなんだけど画面で線が引ける。線が引けるってことは絵が描けるってことだなと。みんな最初は触っていたけど、すぐに放置されてしまったので、その頃、映像研究室に入り浸っていたオレはずっとそれで落書きをしてた」
ドットは四角が見えるほど荒く、200色以上使えたが画面上に同時に表示できるのは16色だ。でも、拡大/縮小にボカシ機能も使えた。荒いPhotoshopのような使い心地だったという。
「まだマウスすらなくて、描くのはジョイスティック。それでデビルマンの顔とかを描いてた。デジタルでリアルな絵は描けるようになるというのはこのときに気づいた。保存もビデオテープにしかできなくて、結局描いたら消すだけなんだけど、とにかく当時のオレにとっては、デジタルで画面に絵を描くこと自体が『SFで最高!! 未来が来た!!』って思えて楽しかった」
ただ当時のデジタル機材は個人で買えるような値段ではなく、性能もまだまだで
「いつか、個人でデジタル機材が持てる時代が来るといいなあ」
と思うにとどまった。
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