35億ドルの新規ビジネスを獲得できた――HPが“サステナビリティー”に注力する理由:HP INNOVATION SUMMIT 2022(3/3 ページ)
日本HPがリアル/オンラインのハイブリッドイベント「HP INNOVATION SUMMIT 2022」を開催。米HPのエンリケ・ロレスCEOがリモート登壇し、HPグループのサステナビリティー(持続可能性)に関する取り組みを重視する理由を対話形式で語った。
ハイブリッドワークがもたらした変化
コロナ禍を通した経験として、ロレスCEOはオフィスワーカーの働き方の変化を挙げる。オフィスワークと在宅勤務を含めたテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」はHP社内で実践が進んだのみならず、新たなビジネス機会の創出につながっているという。
この変化は定着し、「将来的には、オフィスワーカーの多くは1週間のうち数日を家庭で働き、数日をオフィスで過ごすように」なり、その結果「働く場所に関わらず、“常に”つながっていたいという強いニーズが生まれる」というのがロレスCEOの見立てだ。
この変化を見越した動きは、既に表れている。例えばPCでは「テレワークにおけるWeb会議で、美しい映像とクリアな音声を安定した通信で届ける」というニーズが強まっている。また、オフィスでは「オフィスで働く人と在宅勤務の人が効果的にコラボレーションする」ニーズの高まりを受けて、会議室用の通話システムの需要も高まっている。
そこでHPは、働き方の変化に合わせた新製品を発表している。このイベントと併催された「ハイブリッドワークソリューション発表会」では、持ち運びやすさを重視したノートPC「HP Elite Dragonfly G3」や、会議室用のソリューション(デバイス群)「HP Presence Meeting Room Solution」を発表している。
- →日本HP、ハイブリッドワークを支援する会議室向けソリューションを発表
- →ついに3:2の画面になった「Dragonfly G3」やハイスペックなChromebookが続々登場! 日本HPのビジネス向けPC新製品
将来の展望とHPの新事業への取り組み
ロレスCEOは、より長期的かつ広い視野で“今後10年のトレンド”を予想すると「製品からサービスへのニーズの変化」が重要だと指摘する。
企業がハードウェアやソフトウェアを購入して管理する形態から、リース(賃貸)、サブスクリプション(月額または年額契約による利用)、SaaS(外部サーバ上での稼働)など、ハードウェアやソフトウェアの“機能”をサービスとして活用する方式が主流となってくると見ているようだ。この「サービス化」は、HPグループの事業ポートフォリオの変革の中でも重要なテーマとなっているという。
加えて、インターネットに接続するモノ(IoTデバイス)や用途が増えつつある中で、製品やデータ、コンテンツを保護するセキュリティ機能の重要性も増しつつある。
このような変化に対応し、継続した事業成長を実現するために、HPは「コアビジネスの進化」「隣接市場への展開」「新分野の創造」の3つを重要な事業戦略として掲げている。
先述の通り、現在のHPはパーソナルシステムズ事業とプリンティング事業の2つをコア事業として位置付けている。両事業で扱うPCやプリンタは何十年前も前に発明されたものだが、製品の機能向上によってユーザーが抱えるより多くの課題を解決できるようになってきた。サービス化の流れに対応するのも、新たなニーズに応える上で重要なのだ。
隣接市場への展開という観点では、パーソナルシステムズ事業であれば「周辺機器」や「ゲーミング製品」、プリンティング事業なら「産業向けデジタル印刷」といった大きな成長が見込める隣接市場が存在する。これらの隣接事業をグループ内に取り込むことで、業容の拡大を目指している。
2022年上半期は、HPが取り組む成長領域(ゲーミング、周辺機器、ワークフォース・ソリューション、個人向けデジタル印刷サービス、3Dグラフィックス)の全てで2桁成長を達成し、売上の合計は本年度末までに100億ドルを超える見込みだという。
新分野の創造という観点では、3Dプリンティングに加えて、ライフサイエンス分野での活用が見込まれる「マイクロフルイディスク」など、新たな技術の研究開発へ意欲的に取り組んでいる。
新しい分はの取り組みについて、ロレスCEOは「どのような場合でも重要なのは、顧客の要望を深く理解すること」だと語る。ただ、「何を必要としているのか、時には顧客自身が説明できない場合もある」こともある。「テクノロジーを深く理解し、どのように進化していくかを理解すること」が、何よりもユーザーのためになるということだ。
ロレスCEOは「競合他社の状況分析も、顧客のニーズを理解する上で一助となる」とも語った。
※記事初出時、記事の一部で誤りがありました。おわびして訂正します(2022年7月29日18時30分)。
関連記事
ついに3:2の画面になった「Dragonfly G3」やハイスペックなChromebookが続々登場! 日本HPのビジネス向けPC新製品
日本HPが2022年秋以降に発売するビジネス向けの新製品を一挙に発表した。1kg切りのモバイルノートPC、ハイエンドChromebookなど、たくさんある見どころをかいつまんで紹介する。日本HP、ハイブリッドワークを支援する会議室向けソリューションを発表
日本HPは、ハイブリッドワークのセキュアな環境と実現を支援する会議室向けソリューションの発表を行った。「OMEN 45L」の強力な“独立”冷却機構、効果はいかに? 最新ゲーミングタワーPCを試す
日本HPが2月24日に発売したゲーミングタワーPC「OMEN 45L」は、水冷用のラジエーターをボディーの“外”に出す斬新な設計で注目を集めた。ただ、斬新な見た目に気を取られがちだが、実際のスペックもモンスター級である。同時に発表された27型4Kディスプレイ「OMEN 27u」と組み合わせて実力をチェックしてみよう。HPがKingstonのゲーミング部門「HyperX」を買収 4.25億ドルで
米HPが、米Kingstonのゲーミング部門「HyperX」を4.25億ドルで買収することを発表した。買収後も、Kingstonはゲーミング向けメモリ/ストレージ製品の販売を継続するという。最軽量構成は999g――13.3型2in1「HP Elite Dragonfly」登場 日本では11月下旬発売
HPが新しい13.3型2in1ノートPCを日本で世界初披露。本体重量を抑えつつ、丈夫さや処理能力の高さにも配慮した「働き方改革」を支援するモデルとなっている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.