スマホ選びに悩んだら「iPhone 14 Pro」がベストか? iPhone 14シリーズを使い比べて分かったこと:本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/4 ページ)
間もなく、「iPhone 14」「iPhone 14 Pro」「iPhone 14 Pro Max」が発売される。例年の新型iPhoneと比べると、「非Pro」と「Pro」の差が大きめである印象だが、実際の所はどうなのだろうか。実際に使い比べて検証してみよう。
意外なほど性能の変化が少ない「A16 Bionic」
iPhone 14 Proは、新型SoC「A16 Bionicチップ」を搭載している……のだが、発表では新しいディスプレイエンジンなど機能面での強化が強調された反面、パフォーマンスに関する言及はそれほどでもなかった。「過去最高の性能」「業界最高水準」と改善を示唆する言い回しはあるものの、GPU(グラフィックス)についてはスルーに等しいほどの扱いだった。
そこで「Geekbench 5」を使ってCPUやGPUの演算能力をテストしてみると、「A15 Bionicチップ」を搭載するiPhone 13シリーズやiPhone 14よりもスコアは良いのだが、スコア差はそれほど大きくはなかった。
バッテリーの容量が限られるスマートフォン用のSoCでは、絶対的なパフォーマンスよりも消費電力当たりのパフォーマンス(ワットパフォーマンス)が重要だ。そうした意味では、プロセスルールの異なるA16 BionicとA15 Bionicの性能が「近い」と断言することは難しいが、少なくともピーク時の動作クロックは全体的に向上しているため(CPUコアの場合は200MHzほど)、その分性能は向上している。
Geekbench 5でiPhone 14 ProのCPU(左)とMetal(GPU、右)のスコアを計測した結果。過去のスコア履歴を参照してみると、A15 Bionicから劇的に変わるかというとそうでもない
A16 BionicではCPUコア(高効率コア/パフォーマンスコア )、GPUコア、ISP(イメージ処理プロセッサ)、Neural Engineなど各要素を改良しているはずである。しかし、総トランジスタ数は150億個から160億個とそれほど増えていないので、ドラスティックな変化は考えにくい。増えた10億個は、Dynamic Islandや常時点灯ディスプレイの実現に寄与したディスプレイエンジンや、4800万画素カメラをハンドリングするためのISPの改良によるものだと思われる。
「ML Bench」で計測したNeural Engineの性能を計測してみると、やはりA16 BionicとA15 Bionicに大きな違いは感じない。CPUやGPUと同様に、プロセスルールが微細化されたこと以外に大きな変化は加えていないのかもしれない。
しかし、これがAppleらしいところなのだが、スペック面に大きな変化はなくても、商品性は確実に高まっている。例えばポートレートモードで撮影すると、従来よりも前ボケがキレイに出るようになったり、切り抜きの精度がしたりしている。先述のDynamic Islandや常時点灯ディスプレイ、iOS 16の新しいロック画面などを含めて、SoC、ディスプレイ、カメラセンサーといった新しいパーツやスペックに極度に依存することなく製品を作り上げている。
恐らく、発売当初は「今回はほとんどスペックが変わってない」「変わり映えがしない」と言われるだろうが、実際に製品を使った人たちの感想が出始めると、状況は変わるだろう。
例年より違いの多い「非Pro」と「Pro」
ここ数年、iPhoneの新モデルはProが付かない「非Pro」と付く「Pro」でSoCは共通だった。そのこともあり、新モデルのレビューでは「通常モデル(非Pro)でも十分に高性能で満足度も高いです」という旨を説明してきた。
今回の新モデルも、基本的にその点に変わりはない。むしろ、iPhone 14(非Pro)は望遠カメラがないことを除けば機能面でiPhone 13 Pro/Pro Maxと同等かより優れた部分も多い。カラーバリエーションが豊富であることやバッテリーの持続時間が良くなっていることも含めると、総合的に“もっと良い”スマホといえる仕上がりとなっている(フレーム素材の違いは議論の余地がありそうだが)。間違いなく、費用対効果(コスパ)は高い。
しかし、今年のiPhone 14 Proは新しいディスプレイ、新しいカメラセンサーを生かすためのSoC/OSレベルのチューニング、対応アプリの開発環境整備など、長い時間と手間をかけた他メーカーには真似ができない(しにくい)総合的なアプローチで作り込まれたスマホである。
よく見てみると、GPSが2波対応になっていることを始めとして、非ProとProの細かい差分は少なくない(例年よりもむしろ多いという見方もできる)。iPhone 14 Proは直近で入手できる、最も完成度の高い高級スマホだ。
iPhoneに限らず、スマホの買い換えサイクルは延びる傾向にある。毎年、あるいは2年に1度買い換えるというものではなく、3~4年使い続けることも珍しくなくなった。地味な変更だが、今年のiPhoneはバックパネルを簡単に開けられるよう設計変更されている。バッテリーの交換も簡単になったといい、Apple自身も長く1つの端末を使うユーザーを意識して、iOSのアップデートを長期間提供している。
これらを総合的に勘案するならば「そこまで(スマホには)こだわらない」「そんなに買い替えない」という人にこそ、iPhone 14 Proをお勧めしたい。
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