新「MacBook Air」や「M2チップ」だけじゃない Appleが3年ぶりに世界中の開発者を集めて語った未来:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)
抽選制ながらも約3年ぶり本社に開発者を招待して行われたAppleの「Worldwide Developer Conference 2022(WWDC22)」。今回は「Apple M2チップ」と、同チップを搭載する新しい「MacBook Air」「MacBook Pro(13インチ)」といったハードウェアの新製品も発表された。発表内容を見てみると、おぼろげながらもAppleが描く未来図が浮かんでくる。
Appleは6月6日(米国太平洋夏時間)から、開発者向けイベント「Worldwide Developers Conference 2022(WWDC22)」を開催している。各種カンファレンスは全てオンラインで提供されているが、2022年は3年ぶりに米国本社「Apple Park」に約1000人の開発者を抽選で招き、交流できる場が設けられた。
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本来は撮影不可となっている本社内、カフェテリアと敷地内公園、屋外ステージなどを活用した会場は、素晴らしく開放的な空間に仕上げられていたが、もちろん重要なのはAppleの提供するプラットフォームの未来である。
開発者たちに未来を見てもらえるかどうかが、Appleの未来を決めると言っても過言ではない。Appleプラットフォームでアプリケーションを作り上げていくことが、自分達の将来にとってプラスであると捉えてもらわなければ、将来の発展も見込めないからだ。
Appleのティム・クックCEOは「3年ぶりに集まることができた。皆さんが交流し、意見を出し合い、アイディアを交換できる場を作った。Appleのシャツを着ているエンジニアもたくさん参加している。何か疑問があれば、彼らに質問してほしい」と呼びかけた。
そもそもApple Parkは、「さまざまな役割の社員が交わる場になってほしい」という故スティーブ・ジョブズ氏が抱いていた思いをもとに設計された場所だ。そういう意味では、Appleプラットフォームに集う開発者がApple Parkパークに集まったことは、新型コロナウィルスの“エンデミック”を迎えるにふさわしい節目といえるかもしれない。
個人ユーザーはオールニューの「MacBook Air」に注目
WWDCというイベントは、Appleが提供する各種プラットフォーム(Mac、iPhone、iPadなど)向けの次世代OSについて、実装される新機能や改善事項の一部を開発者と共有し、アプリケーションへの対応を促す意味合いが強い。そのため、発表内容を詳細に分析すると、おぼろげではあるがその年の“新しいiPhone”が目指す方向が見えてくる。
そんな中、AppleはWWDC22に合わせて目玉となるハードウェアの新製品を用意していた。Mac向けのオリジナルSoCの第2世代「Apple M2チップ」と、同チップを搭載する新型の「MacBook Air」と「MacBook Pro(13インチ)」である。
特にMacBook Airは、Macの全製品の中で最も多く売れているシリーズである。従来型(2021年モデル)は、Apple M1チップを搭載しながらもボディーはIntelモデルから継承していた。そのこともあり、本体デザインの刷新を伴うアップデートはある意味で予想通りだった。
新しいMacBook Airは、Apple Watchのカラーを踏襲する「シルバー」「スターライト」「スペースグレイ」「ミッドナイト」の4色を用意しており、カラーごとにMagSafe充電ケーブルのカラーリングが変更されるなど、より“個人向け”を意識したモデルとして仕上がっている。
装備しているポート類は従来型とほぼ同様だが、復活したMagSafe端子から電源を取れるため、2ポートのThunderbolt端子を周辺機器の接続にフル活用しやすくなった。一方で、厚さが約1.13cmしかない薄型設計もあって、SDメモリーカードスロットが装備されていないのは、筆者個人としては残念な部分だろうか。
独立した電源入力端子としてMagSafe端子が復活したので、Thunderbolt端子を周辺機器の接続にフル活用しやすくなった。付属の電源ケーブルは本体カラーに合わせたカラーのものが付属する。写真のACアダプターは、日本では店頭販売の上位モデルに付属する新型の「デュアルポートUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ」である
ディスプレイの最大輝度は500ニトに高められ、画面サイズは13.6型、最大解像度は2560×1664ピクセルとなる。上部のFaceTime HDカメラの部分にノッチ(切り欠き)があるが、この部分を除くと従来モデルと表示領域はほぼ同じとなる。すなわち、メニュー部分を除くエリアがまるまるデスクトップで使える。
内蔵カメラの強化、アレイマイクの搭載、4基構成のスピーカーの搭載といったグレードアップは、昨今の最新Macのトレンドを踏襲したもので、とりわけスピーカーの音質には期待ができそうだ。しかし、やはり注目はその中身、Apple M2チップだろう。
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