シェアリングサービス企業がオンラインペット霊園「メモリアール」を運営する理由:古田雄介のデステック探訪(2/2 ページ)
亡くなったペットのメモリアルページを作れるSNS型サービス「メモリアール」のβ版を公開されてから、2年が経とうとしている。コミュニティーとして順調に育つ背景には何があるのだろうか。
ブロックチェーンによる永続を志向 その先にある人間版
人間向きのものを含めて、オンライン墓地のサービスは実のところ1990年代から世界中で構想されてきたが、成功例はあまり多くない。利用者が広がらないまま開店休業状態になったり、軌道に乗るまで待てずに閉鎖となったりしたケースは枚挙にいとまがない。
例えば、2000年代に自動搬送式納骨堂が最初の建設ブームが起きた際はオプションでオンライン墓地を設けるのが流行した。しかし、需要がなくて数年でほぼ消滅している。
メモリアールは、そうした典型的な失敗パターンと一線を画しているように思う。しかし、今後はどうなのか。墓地が商業的な都合で簡単に消滅してしまうのは、オンラインであってもやはりいただけない。
そのことは、橋本さんも念頭に置いていた。
「弊社が消滅したとしても、永続的に残せるお墓の準備を進めています。ブロックチェーンを使って分散管理できる仕組みを持つお墓ですね。これを有償版で提供できるようにいろいろ試しているところです」という。
永続バージョンが提供できるようになった先には、「人間版メモリアール」の提供も視野に入れているそうだ。
「メモリアールの会員の方を含めて、さまざまな方からご要望をいただいています。ただ、人間のお墓となると、倫理面や宗教面などの課題が新たに加わります。そこをしっかりと解決できるようになったときに踏み出そうと思っています」と語る。
現在のペット版メモリアールについても、お墓が作れるペットの種類を増やすなどの検討を重ねているという。現状では犬と猫を中心に哺乳類や鳥類のお墓が並んでいる。要望によっては、霊園のトップに「爬虫類」や「両生類」などの上位カテゴリーを設けて、多様なペットがお参りできる場に育てていく構想もあるそうだ。
本来、追悼には記憶や思慕だけあればいい。しかし、思い出したくなる場や手を合わせたくなる場があった方が追悼する気持ちになりやすいのも確かだ。その最たるものが、現実のお墓や遺影だと思う。そこに、新たな選択肢としてオンラインのお墓が加わっても困らないだろう。問題は新たな選択肢として定着するか否か。メモリアールのこれからに期待したい。
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