全ユーザーにAI PCを届ける――IntelのゲルシンガーCEOの新たな野望 今後10年で15倍に成長する「シリコノミー」とは?:Intel Innovation 2023(2/2 ページ)
Intelの開発者/技術者向けイベント「Intel Innovation」が、米国で開催された。その基調講演では、パット・ゲルシンガーCEOが登壇し、今後のIntelが目指す姿を語った。中でも注目すべきキーワードは「Siliconomy(シリコノミー)」である。
自分の「ライフログ」を聞いたら返してくるAI PC
これまでPCで「AIを活用する」といえば、高性能なPCか、ネットワーク越しにつながっているクラウド(サーバ)上のAIプログラムを利活用することを一般的には指していた。それに対して、ゲルシンガーCEOは「AI PCなら、ネットワーク接続に頼らず、スタンドアロンなPC環境でもユーザーにAI体験を届けられる」とアピールしている。
そもそも、AI PCで“何が”できるのだろうか……?
そこでゲルシンガー氏は、Rewind.aiが開発したアプリ「Rewind」を紹介した。このアプリは現在、Apple Silicon(M1/M2チップシリーズ)を搭載するMacと、iOS 16以降をインストールしているiPhone向けにリリースされており、Windows版は開発中というステータスだ。
このアプリは、自分が使っているPCの画面表示やWebカメラ(ビデオカメラ)の映像を常時音声付きで記録しており、それをもとに自分が過去にPCで何をしていたのか(PCを使って何を考えていた)のか、自然言語(普通の文章)で質問できる。
例えば、「Zoom」でビデオ会議をしている様子が記録(録画)されていたとすると、「会議が開始された後、10分経過したあたりでA氏はXについてどんな意見を話していたっけ?」と聞くことができるのだ。
映像だけでなく音声も合わせて記録しているため、映像と音声の内容を絡めた質問もできる。例えば「今日の昼食後に会った人は、何て名乗っていたっけ?」とか、「昨日の自分は、夕食の時にどんなことしゃべってたっけ?」なんていう質問も可能というわけだ。
基調講演でのRewindのデモンストレーション。これは「Intel Innovation 2023のセッションスケジュールをWebブラウザ(Microsoft Edge)で確認している」というシチュエーションだが、Rewindはこれを記録していて、後からセッションの情報を同アプリに質問すると、場所や概要を教えてくれるようになる
このように、アプリとしてはユーザー自身のパーソナルライフログに対して、ChatGPTで質問できる――そう考えればいい。機能としてはシンプルだし、AIの活用形態も想像しやすいが、これらの処理は全てオンプレミス、つまりNPUを備える自分のノートPC“単体”で行える。非常に衝撃的な光景といえる。
今回のデモでは、オンプレミス処理であることを示すために、ネット接続を“切断”する様子も盛り込まれていた。「単体で使えるんですよ!」とわざわざ強調したのだ。
スタンドアローンで使えるAIは、プライバシーやセキュリティの面からも歓迎すべきものだろう。各ユーザーは、自分の個人的なライフログを、自身のPCの“外”に明け渡す必要がなくなるからだ。
ゲルシンガーCEOの左に立っているのは、Rewind.aiのダン・シロカー代表。自分のライフログをAIに質問できるようになるというのは、確かにAIの使い道として分かりやすく、かつ誰もが使いたくなるものだと思う
サーバ/ワークステーション向けCPU「Xeon」のロードマップも公開
ゲルシンガーCEOは、サーバ/ワークステーション向けCPU「Xeon」のロードマップについても言及した。
まず、Emerald Rapidsという開発コード名で開発された「第5世代Xeonスケーラブルプロセッサ」は、Core Ultraプロセッサと同じ12月14日に正式発表される。既報の通り、第5世代は現行の第4世代(開発コード名:Sapphire Rapids)の改良版という位置付けで、CPUソケットは同じものを利用する。
そして、正式発表前からうわさになっていた、高効率コア(Eコア)のみで構成される「Sierra Forest」(開発コード名)は、最大288コアという構成で2024年内にリリースすると予告された。
ちなみにSierra ForestのEコアは、他のIntel製CPUのEコアと同様にマルチスレッド(ハイパースレッディング)に対応していないので、288コア構成の場合は「288コア288スレッド」のCPUということになる。性能的にはAMDの「EPYC 97X4プロセッサ」(最大128コア256スレッド)との性能勝負に注目が集まる。
Sierra Forestのパッケージを手にするパット・ゲルシンガーCEO。Sierra ForestのCPUダイは1基当たり最大144コアであり、それを2基連結して288コアのCPUとしてパッケージングされる
関連記事
Intelの次世代CPUは「Core Ultraプロセッサ」として12月14日(米国太平洋時間)に正式発表
Intelが「Meteor Lake」として開発を進めてきた次世代CPUを「Core Ultraプロセッサ」として販売することを正式に発表した。詳細なスペック、ラインアップなどは12月14日(米国太平洋時間)に明らかとなる。Intelが「第5世代Xeonスケーラブルプロセッサ(Emerald Rapids)」を12月14日に発表 先の新製品のスケジュールも順調
Intelが2023年後半に発売するしていた「第5世代Xeonスケーラブルプロセッサ」を12月14日(米国太平洋時間)に正式発表することを明らかにした。現行の第4世代製品を改良してより処理効率を高めたもので、CPUソケットの互換性もある。Intel“逆襲”の鍵はやはり「AIプロセッサ」か 次世代CPU「Core Ultra(Meteor Lake)」を解説(後編)
Intelが「Meteor Lake」というコード名で開発してきたCPUを「Core Ultraプロセッサ」としてリリースすることを発表した。この記事では、SoC Tileに搭載されているNPUやディスプレイ/メディアエンジン、Graphics Tile(内蔵GPU)やI/O Tile(入出力インタフェース)について解説する。【訂正】「Meteor Lake」はCPUコアが3種類!? Intelが次世代CPUの詳細を発表(前編)
Intelが、次世代CPUとして2023年末に正式発表する予定の「Meteor Lake」のアーキテクチャ面での詳細を発表した。この記事では、CPUコアを備える「Compute Tile」と、高度な機能を複数搭載する「SoC Tile」にある“謎の新要素”について詳説する。最大128コア! AMDが第4世代EPYCに「多コア全振りモデル」と「L3キャッシュ爆増しモデル」を追加
AMDのデータセンター/サーバ向けCPU「第4世代EPYCプロセッサ」に追加ラインアップが登場した。クラウドネイティブサービス向けに多コア全振りしたモデルと、テクニカルコンピューティング向けにL3キャッシュ容量に全振りしたモデルを選べるようになった。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.