「AI PC」がベールを脱ぐ! 次世代のモバイル向け「Core Ultraプロセッサ」正式発表 搭載ノートPCは順次発売(1/2 ページ)
Intelが発表を予告していた「Core Ultraプロセッサ」が、ついに正式発表された。全てのモデルにAIプロセッサ(NPU)を搭載しており、NPUを利用できるアプリのパフォーマンスが大きく向上することが特徴だ。
Intelは12月14日(米国太平洋時間)、モバイル向けの新型CPU「Core Ultraプロセッサ」(開発コード名:Meteor Lake)を発表した。一部モデルを除いてPCメーカーへの出荷は始まっており、搭載製品は同日から順次発売される。
Core Ultraプロセッサの概要
Core Ultraプロセッサは、同社初となる「タイルアーキテクチャ(チップレット技術)」を採用するCPUで、主要なアーキテクチャは既に公表済みだ。
- →Intelの次世代CPUは「Core Ultraプロセッサ」として12月14日(米国太平洋時間)に正式発表
- →「Meteor Lake」はCPUコアが3種類!? Intelが次世代CPUの詳細を発表(前編)
- →Intel“逆襲”の鍵はやはり「AIプロセッサ」か 次世代CPU「Core Ultra(Meteor Lake)」を解説(後編)
CPUコア
Compute Tile(演算タイル)のCPUコアは「Intel 4」(7nm)プロセスで作られており、処理性能重視のパフォーマンスコア(Pコア)は最大6基12スレッド、消費電力重視の高効率コア(Eコア)は全モデル8基8スレッド構成で、SoC Tileにも2基のEコア(LP Eコア)を備えている。
特にEコア/LP Eコア(開発コード名:Crestmont)は、AVX-VNNI命令セットの入出力ポートを従来比で2倍に増やすことで、ニューラルネットワークベースのAI(人工知能)プログラムの処理パフォーマンスを向上している。
Pコア(開発コード名:Redwood Cove)は、第12/第13世代CoreプロセッサのPコア(開発コード名:Golen Cove)のプロセスを微細化した上で、効率を改善した「改良版」といったイメージだ
薄型ノートPC向けCPUにおけるマルチスレッド性能の比較。12月14日時点で出荷開始済みの製品で最上位の「Core Ultra 7 165H」は、自社の「Core i7-1370P」はもちろん、競合のCPUを上回るパフォーマンスを実現している。ただし、消費電力もその分高くなる(数値はCore i7-1370Pを100%とした値)
「全部Pコア」をうたうRyzen 7040シリーズ(Ryzen 7 7840U)と比べた場合、シングルスレッド性能は上だとアピールしている。ただし、Ryzen 7040シリーズにはRyzen 8040シリーズという改良版が登場している(グラフはRyzen 7 7840Uを100とした場合の比較)
メディア処理については、「Core 7 Ultra 155H」でもRyzen 7 7840Uに勝てるという(ただし「H」と「U」の位置付けの違いを考えると、この比較が適切かどうかというと意見が分かれそうだ
GPUコア/メディアエンジン
GPU Tile(GPUコア)は、モバイル向け第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)以降から使われている「Xe-LPアーキテクチャ」から、「Xe-LPGアーキテクチャ」に変更された。本アーキテクチャのパフォーマンスは、Xe-LPアーキテクチャのGPU比で最大2倍だという。MicrosoftのAPI「DirectX 12 Ultimate」をフルサポートした上で、AIベースの超解像技術「Xe Super Sampling(XeSS)」にも対応している。
本CPUでは最大8基のXeコアを搭載しているが、実際の製品ではモデルによって4基または7基となる場合もある。GPUの“名称”は、Xeコアの基数とメモリ容量によって以下の通り変わる。
- 4コア:Intel Graphics
- 7コア/8コア
- メモリが16GB未満の構成:Intel Graphics
- メモリが16GB以上かつデュアルチャネル以上の構成:Intel Arc GPU
Soc Tile(SoCとして機能するために必要な機能を集めた部位)に収納された「Xe Media Engine」には、H.264/H.265に加えてAV1コーデックのデコード/エンコードに対応するメディアエンジンが統合されている。
18タイトルにおける1080p(フルHD/1920×1080ピクセル)ゲーミングの平均性能を求めたグラフ。恐らく「Core Ultraプロセッサの内蔵GPUはRDNA 3アーキテクチャに負けていません」と言いたいのだと思うが、「U」と「H」で比べていいものなのか、やはり疑問に思ってしまう
AIプロセッサ(NPU)
Core Ultraプロセッサは、独立したAIプロセッサ(NPU)「Intel AI Boost」を2基搭載している。CPU(VNNI)とGPU(DP4aエンジン)を含めると3種類のAIアクセラレーターを備えているため、Intelは「単に全モデルNPU搭載とするだけでなく、高速化できる演算方法にバリエーションを持たせられた」としている。
また同社によると、Core i7-1360PとCore Ultra 165Hを比べた場合、生成AIのパフォーマンスは最大1.7倍となり、ビデオ会議(Zoom)中の消費電力は最大38%削減され、INT8(8バイト整数演算)の効率は最大2.5倍向上するという。
その他機能
Core Ultraプロセッサは、DDR5-5600/LPDDR5(X)-7467規格のメモリをサポートする(※1)。搭載可能な容量は、DDR5規格で96GB、LPDDR5(X)規格で64GBだ。
PCI Expressバス/Serial ATAバスの対応リビジョンと最大レーン数は以下の通りだ。
- PCI Express 5.0(Hシリーズ):8レーン
- 独立GPUの搭載に利用することを想定
- PCI Express 4.0:合計20レーン
- 4レーン×3(計12レーン)はSSDでの利用を想定
- 8レーンはその他の機器の接続を想定
- Serial ATA 3.0:2レーン
無線通信は、IEEE 802.11ax規格の無線LAN(Wi-Fi 6E)とBluetooth 5.3/5.4をサポートする。Bluetoothについては「Bluetooth LE Audio」もサポートしている。外部モジュール「Intel Wi-Fi 7(5 Gig)」を搭載すれば、IEEE 802.11be規格の無線LAN(Wi-Fi 7、※2)もサポート可能だ。
搭載できる外部ポートは以下の通りで、追加チップを搭載することで「Thunderbolt 5」にも対応可能だ。
- Thunderbolt 4(USB4):最大4ポート
- USB 3.2 Gen 2:最大2ポート
- USB 2.0:最大10ポート
映像出力は、Embedded Display Port 1.4B(内蔵ディスプレイ用:HBR3対応)と、DisplayPort 2.1/HDMI 2.1(外部出力用)に対応する。
(※1)BGA Type4 HDIパッケージを採用するモデルはDDR5規格のメモリに対応しない
(※2)Wi-Fi 7はまだ規格として確定していない(確定は2024年後半の見込み)
次のページでは「Intel Evo Editionプラットフォーム」の説明と、Core Ultraプロセッサのラインアップを紹介する。
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